2013年11月10日日曜日

オバマケアのウェブサイトのローンチは散々だった。その失敗に関して、唖然とするような話が次々と明らかになっている。


オバマケアのウェブサイトの問題について先日触れたが、その後もショッキングなことが判明している。内部資料によると、ウェブサイトをデザインする段階からその見積もりの甘さとずれが桁外れだったことがわかった。

まずはローンチ直前のテストの結果、サイトがハンドルできると報告されていたトラフィック量。ローンチの前日の時点で、1,100ユーザーまでは裁けると確認されていた。これは、同時にアクセスしてもレスポンスタイムに影響を与えないのは1100人が限界だということだ。全国民に対して公開し、大統領が鳴り物入りで宣伝するウェブサイトとしては、これはあまりに低すぎるだろうという直感に、異議を唱える人は多くないだろう。

実際に設計した本人たちも、それが十分だとは思っていなかった。それを裏付けるように、想定ユーザー数は55,000人となっている。つまり自分たちで想定していた予想トラフィック値を大幅に下回るキャパシティしかないのがわかった状態で、ローンチせざるを得なかったのだ。

そして実際にローンチしたところ、アクセスしたのは250,000ユーザー。読みが大幅に外れていたのだ。

つまりあらゆるフェーズで、お粗末な分析、プランニングと実践力が証明された。

ビジネスの世界の常識で考えれば、首をかしげたくなることばかりだ。実際のトラフィックとはほど遠いとわかっていても、予算不足だったり戦力不足だったりして、どうにもこうにも現場の力だけでは解決できないレベルだったという憶測もある。

まだまだ苦しい状況が続くこのウェブサイト。ウェブサイトの失敗にばかり注目が集まって、医療保険改革の本質やそれに対する議論が軽視されているのが、一番残念な話だ。

2013年11月7日木曜日

スタートアップがサンフランシスコに移る流れが止まらない一方で、大企業はサウスベイで次々とキャンパスを拡大。


先月末、アップル社が本社を構えるクパチーノ市が、アップルが提案する新しいキャンパスの設立を承認した。最終的な承認は今月の会議をもって「公式」となる予定だが、実質的なゴーサインは出たも同然だ。

このキャンパスは24,000人の社員を収容し、グリーンなキャンパスとなることを目指している。環境へのインパクトがイーブンアウトする(プラスマイナスの影響がゼロとなる)ようにデザインされていて、一企業のレベルでは世界で最大の一つとなるソーラーシステムを持つことになる。ナチュラル・ヒーティングとクーリングによって、一年の70パーセントは冷房が不要となるというのも売りらしい。

一方、ライバルであるサムソンは、クバチーノに隣接するサンノゼ市に巨大キャンパスを設立する計画を着々と進めている。300ミリオンドルをかけ、こちらも負けずとオープンでグリーンなキャンパスを目指している。

ちなみに新設とか移転とか言うと、サンフランシスコに拠点を持つアメリカン・フットボールチームのサンフランシスコ・フォーティーナイナーズもホームスタジアムをサンフランシスコから、南のサンタクララに移転することが決まっている。来年2014年のシーズンに間に合うように、新しいスタジアムの建設が着々と進んでいる。

主に会社が拠点として選ぶ場所として、サンフランシスコがアツいという話をずっとしてきたけど、これらの例からもわかるように、サウスベイの活性化を示唆する計画も次々と発表されている。スタートアップがサンフランシスコに戻ってきている一方で、大手企業のサウスベイでの拡大は留まることを知らない。

前回のブログの、IPOが不動産に与える影響と多少関連した話になるが、これだけの規模のキャンパス建築や拡大も、その社員や家族を超えて、周辺経済にさまざまな影響をもたらす。

49ersの移転先となるサンタクララでも、すでに周辺経済への影響の計算が始まっている。周辺の小売業、レストラン、スタジアムでの雇用を含めて、大きな経済効果が見込まれるのは容易に想像できるだろう。

期待される経済効果とは逆に、周辺住民の不安の種となっているのがトラフィックだ。残念ながらシリコンバレーでは公共機関が発達する兆しがまったく見られないので、電車を増やすとか公共機関を見直すと言っても、結局は車への高い依存度は当分変わらないだろう。通勤社員が増える上に試合がある日なんかには、周辺道路の渋滞がますますひどくなることが予想される。不況時にはハイウェイの混雑が解消され、景気が良くなると悩まされるから、トラフィックは皮肉なものだ。

一方、現在の49ersのスタジアムがあるサウス・サンフランシスコは複雑な心境だ。スタジアム移転を悲しむ地元ファンと周辺ビジネスがある一方で、トラフィック問題が解消するとして喜ぶ周辺住民もいる。

2013年11月1日金曜日

サンフランシスコで、ツイッターのIPOを歓迎する不動産オーナーとますます住みづらくなるとうんざりする一般人。


ツイッターのIPOに向けたさまざまな憶測が飛び交っているが、その一つは不動産に対する影響だ。

企業のIPOと不動産?というとピンとくるようなピンとこないような話だが、これにはいくつかのインプリケーションがある。

まずは過去の例を見てみる。

例えばグーグル。グーグルが拠点に選んだマウンテンビューはもちろんのことだが、以下のグラフに見られるように、グーグルがIPOをした2004年を境にサンフランシスコの特定のエリアの価値が平均以上にあがったことが報告されている。その地域とは、マウンテンビューを含むサウスベイへのアクセスが比較的良い、Noe valley, Potrero Hill, Soma, South beach などに代表されるエリアだ。





フェースブックが上場した2012年には、フェースブックのキャンパス周辺のメンロパークの不動産価格が上昇した。がグーグルと同様、その影響は30マイル以上北に位置するサンフランシスコにも及んだ。市内でも特に、若者に人気がありメンロパークを含むサウスベイへのアクセスが良い、Noe Valley, the Mission, and Liberty Hillといったのエリアの不動産価格があがったと言われている。

IPOによってリッチになった社員が、マイホームの購入や投資のための不動産購入に踏み切った結果だ。

となると、ツイッターのIPOの影響に対する憶測が飛び交うのも自然だろう。

グーグルやフェースブックと異なるのは、ツイッターがサンフランシスコに拠点を構えているとこと。つまり、その影響はサンフランシスコ市内の不動産に「さらに」集中するだろう。

売り手となる不動産オーナーにとってはうれしい話だが、他の買い手にとっては迷惑な話だ。サンフランシスコの不動産は圧倒的に中古物件が多いので、購買プロセスは交渉の連続だ。複数のオファーが入ればオークション状態になり、いわゆる「bidding war」に突入する。

グーグルやフェースブックのときには、一夜にして億万長者となった株主が、全額キャッシュでリスティング(売り手の希望価格)を上回る価格をオファーし、「bidding war」に終止符を打つというケースも少なくなかったようだ。

関連したようなしていないような話ではあるが、フェースブックがキャンパスの近くに社宅を建てることを発表した。社員のために120ミリオンドルをかけて、394戸のコンプレックスを設立するという。

自社の成功が故に、釣り上がった周辺の不動産価格。そしてその解決策として社宅を建てる。フェースブックがメンロパーク市を乗っ取る日も遠くないだろう(ていうか、すでに乗っ取り済みという話もあるけど)。

2013年10月25日金曜日

追加投資を発表したピンタレスト。投資を集めすぎ?このバリュエーションをどう読むか。


Pinterest(ピンタレスト)が225ミリオンドルの追加投資を受けたと発表した。昨年楽天が多額を出資したことはまだ記憶に新しいが、今回のさらなる投資によってバリュエーションは3.8ビリオンドル(!)にまでのぼった。

ちなみに今回の投資には、楽天は参加していない。が、Andreessen Horowitz、FirstMark Capital、Bessemer Venture Partners、Valiant Capital Managementなど、すでにピンタレスとの投資家として名前を連ねている常連が再度参加している。

それにしても、3.8ビリオンドルのバリュエーションとは、このステージの若い会社にとっては、とてつもなく大きな数字だ。

これがプレッシャーとなるのか、それともこの投資を有効に使って飛躍的に伸ばす戦略が裏にあるのか。CEOによると使い道として、以前の投資発表のときとあまり変わらない答えが返ってきている。

まずはインターナショナル化。すでにイギリス、フランスとイタリアでローカルなサービスをローンチ済みだが、今年の終わりまでにさらに10カ国でサービスを立ち上げるという。また日本についても、楽天とのパートナーシップでさらに力を入れていくとのこと。だが、具体的な内容については何もコメントされていない。

次は、伸びが著しいモバイルへの投資。今年のはじめと比較すると、モバイル経由のトラフィックは50パーセントの勢いで伸びているという。

そして最後に、マネタイズとインフラの強化。

このリストを見ると、前回とさして変わらないなという感想を受ける。前回の投資以降も対して目立った活動がなかったことを考えると、近々ものすごい一手が披露されるのを期待したい。せっかく面白いプロダクトがあるのだから、投資を集め過ぎて舵取りがうまくできなくなってしまうスタートアップの落とし穴には落ちないでほしいなと思うのだ。

投資を集めすぎることの落とし穴とは?直感的にはお金が集まれば集まるほど良いような気もするが、そう簡単にもいかない。

投資を集めすぎてオペレーションや組織をいっきに拡大しすぎると、柔軟な舵取りや修正がしづらくなる。また、投資家の数やそのオーナーシップが増えるにつれて、経営に対する彼らの力も大きくなるのだ。それに加え、投資家との良好な関係維持やボードミーティングと、何かと投資家に時間を費やされることが多くなり、経営陣が肝心のビジネスに集中しづらくなる。

数ヶ月前から試験的にマネタイズを始めたピンタレスト。今年も残りわずかだが、ホリデーシーズンに向けて何か面白いものを見せてくれることを期待したい。

2013年10月22日火曜日

オバマケアの目玉である、医療保険の比較ウェブサイト。鳴り物入りでローンチしたが、実態はボロボロだった。


今月1日から続いていた政府のシャットダウンも17日に無事に終了、表面上は通常運用に戻った感のあるアメリカだが、まだまだ問題は山積みだ。シリコンバレーへのシャットダウンの影響の話は先日のブログで触れたが、シリコンバレーだからこそ(?)人々の関心を呼んでいるトピックスがある。

「オバマケア」は今回シャットダウンを引き起こした大きな焦点の一つだが、話題になっているというのはその政策そのものだけではない。そのために政府がローンチしたウェブサイトの運用と質についてだ。

そもそも「オバマケア」とは何か。現状15%にあたる4800万人が医療保険をもっていないというアメリカだが、これによって、医療保険がほとんどの国民にとって義務づけられる。医療保険に入っていないのは大きな経済的負担が原因な場合がほとんどなので、義務づけるからには、その点を解決する必要がある。それに加えて、保険会社が持病を持っている人への保険提供を拒否できないようにしたり、医療費の自己負担額の上限をもうけて、それ以上を超えないように守る規定も含まれていたりする(上限を超えた場合には、保険会社の負担となる)。

保険を含めた医療負担額を減らす解決策として、このウェブサイトは、複数の選択肢を提示し、それぞれのライフスタイルや経済状況によってどのプランが最適なのかを示すことを目指している。

保険会社はいくつも存在するし、各保険会社が提供するプランも多岐に渡る。このサイトでは各保険会社のウェブサイトを個別にチェックする手間を省けるように、複数の会社にまたがってプランを比較できる。例えばKayakで空席のあるフライトを比較して購入するように、健康保険を比較して購入できる検索・比較サービスだ。

このサイトのローンチはオバマケア政策の目玉の一つになっていて、オバマ大統領も初日にいかにこのサイトへのアクセスが集中したかを誇らしげに語っていた。が、その裏でさまざまな問題が報告されている。

実際、今日行われた会見では、大統領自らが数多く報告されるウェブサイトへの失望やフラストレーションを認めざるを得ない旨をコメントしている。

主な問題は、集中するトラフィック量にサーバーが絶えられなかったり、ユーザー登録がうまくできなかったり、購入プロセスがうまく動いていなかったりという点。

この記事によると、技術的な問題点は明らかなようだ。トラフィックへの耐久性、フロントエンドのユーザーエクスペリエンス(UX)からバックエンドの設計まで、さまざまな原因が挙げられている。

では、これらは未然に防げたのか。

もちろん、上記の点をきちんと把握したエンジニアによって構築されれば技術的に防げることは可能だっただろう。では、それを不可能にしたものは何か。

どの国でも共通したものとして、民と官を隔てる壁が浮き上がってくる。

実はどの州も、州独自のサイトをローンチするか、政府のサイトを使うかという選択肢が与えられた。また、民間の会社と提携してサイトを構築するという選択肢もあったという。ところがカリフォルニアでは、民間会社への構築・運営をアウトソーシングは「時期
早尚」として行わないことにした。

シリコンバレーを中心に多くのスタートアップがすでに同じような目的のサービスを構築しているだけに、この判断を批判する声も多い。もちろん事後に「こうすればよかったのに」と言うのは簡単だけど、少なくとも政府のサイトよりも機能的にもデザイン的にも質の高いものが多いというのは事実のようだ。そのノウハウを利用しないというのは、官のおごりだったというのが批判のポイントだ。

今日の大統領のコメントでも、テクノロジーのエキスパートを入れて24時間体制でサイトの修復・強化に励んでいるという。失敗を認めた今、その修復にどれだけ迅速に対応できるかが注目される。

そもそも一般の企業だったらここまでの対応の遅さだけで、サービス終了となりそうなところだが、幸か不幸か、この時間感覚は政治の世界のスタンダードからすると大して遅くないのかもしれない。ただ、失った信頼のダメージは民間企業のケース以上に大きいだろう。

2013年10月17日木曜日

シリコンバレーのエンジニアの給与がいかに高いか、をデータで証明する。


先日、シャットダウンの影響を受けかねないツイッターの話をしたが、上場の手続きの一貫として管理職の給与が公開されている。その中で、もっとも目を引いたのがエンジニアのSenior Vice PresidentであるChristopher Fryだ。

$10.3 millionと、CEOであるDick Costoloの$11.5 millionに次ぐ2位の金額となっている。組織的には”C”がつく"Chief Technology Officer" "Chief Financial Officer", "Chief Operating Officer"の方が上だが、エンジニアはやはり特別なようだ。

このMr. Fryの場合、報酬のうちの大部分($10.1 million)はストックで、基本給は$145,513 、ボーナスは$100,000だった。

エンジニアのVP/Sr. VPがこれだけの報酬をもらうという傾向が見られるのは、ツイッターだけではない。フェースブックが上場時に公開した情報によると、上場の前年にあたる2011年にエンジニアのVPであったMike Schroepferは、$24.4 millionをストックで受け取っている。

加えて、 $270,833 の基本給と$140,344のボーナスが与えられていたというから、合計で$24.8 millionを超えていたことになる。

ただ異なる点として、フェースブックはツイッターの10倍以上の売り上げがすでにたっていたことを考慮すると、Christopher Fryの報酬は相当高いことになる。

ヘッドハンターによると、この2年間、VP of engineering のオファーの4分の3は基本給が$250,000を超えるものらしい。もちろんそれに加えて、会社の1〜2%にあたるオーナーシップ(equity)を与えられるのが通常だ。

これだけエンジニアの価値が急騰しているのにはいくつかの理由がある。

まずは、それを必要とするスタートアップの数が増えているということ。今年の前半でシード・ラウンドのファンディングを受けたベイエリアのスタートアップの数は242にのぼる。これは、2010年を通した数をすでに超えているという。

もう一つの要因は「テクノロジー」の複雑化だ。ウェブ、モバイル、iOS、アンドロイド、html5... テクノロジーは進化し続ける。今後出てくるテクノロジーを含めてすべて制覇しているというのは不可能だが、新たな技術を習得して既存のテクノロジーに組み込んでいける柔軟さとオープンさを備えているエンジニアが必要となる。

それに関連して、ビジネス環境がめまぐるしく変わる点も無視できない。新たなプラットフォームが出てきたり、買収や提携によって複数のプロダクトやプラットフォームを統合する、などの話も稀ではない。

需要が増えている上に、高い能力が求められているのだ。これは特に管理職レベルの経験のあるエンジニアについて言えるだろう。

では、新卒に近いエンジニアについてはどうだろう。

上記のスタートアップの数からもわかるように、「需要が高い」という点だけでも、彼らの給与を十分高く引き上げている。

例えばグーグルではPhDを取ったばかりの学生に対して、$150,000の基本給と$250,000のrestricted stock optionsをオファーしたと言われている。

シリコンバレーでは、ソフトウェアエンジニアの基本給の平均は$100,049だった。

比較値として、サンフランシスコ・ベイエリア全体での基本給の平均は$66,070。高い給与で知られる医者や弁護士については$133,530と$174,440で、エンジニアの平均よりも高いが、通常この種の職業では、ストックオプションなどはついてこない。スタートアップならではのequityを含めると、総合した報酬額はエンジニアの方が高くなると想像される。

これだけ雇うのが大変なエンジニアだが、雇えればそれで安心、というわけではない。他社から引き抜かれる心配は常に絶えないし、自分で何かをはじめようという起業魂に燃えるエンジニアも少なくないからだ。

最悪なパターンは、トレーニングなど投資して育てあげたエンジニアが、そのスキルを活かしてステップアップ、他社に移ってしまうケースだ。

では、エンジニアをハッピーにするために企業は何をしているのか。給与だけではなく、毎日朝ご飯、ランチからディナーまで無料でオフィスで提供する。それも単なるサンドイッチでは駄目。オーガニックでローカルな食材をふんだんに使い、旬なシェブが腕をふるったグルメな食事でないと、最近の「スタンダード」にはついていけない。

オフィスにはゲームスペースとか、楽器室とか、ヨガルームがあったり、ときにはフィットネス系のクラスを提供する。これは何もグーグルやフェースブック級の会社のことではない。50人などの規模であっても、そのレベルを提供するプレッシャーがあるのだ。

しばらくは、エンジニア獲得の競争が加熱し続けそうなシリコンバレー。

管理職レベルのエンジニアは別としても、新卒のエンジニアにそんな待遇をしたら、不況になったときに一番苦労するのは本人たちなんじゃないかと思ったりする。おせっかいなのは重々承知だけど。

おせっかいついでに心配なのは、これが普通だと思って努力を辞めること。何事もすべて収束する日が来るので、今は十分な待遇を受けていてハッピーな新卒エンジニアでも、新しいものを学び、テクノロジーとともに自分も進化していくことが生き残りのカギになるんだと思う。もちろん、これはエンジニアだけに限った話ではない。

2013年10月9日水曜日

携帯型時計についてのアップデート。サムソンの携帯型時計に対するまずまずの評価は、それだけ期待が大きいことの表れでもある。


以前のブログで紹介した「携帯型時計」だが、予告通り、サムソンの携帯型時計が先月末に発売された。評価はまずまずのようだ。一番手として発売に乗り切っただけに、高い期待には見合わなかったものの、「一番手」となったことへの評価は高い。

見た目は結構いけてる。ただし「スマート・ウォッチ」というからには、機能も伴っていなくてはいけない。現段階ではメールやソーシャルネットワークへのサポートに欠けていることや音声認識がいまいちな点が致命的というのが概ねの評価のようだ。

一方、ヘルス・フィットネスから市場制覇を目指すベーシス(Basis)も、11.75ミリオンドルの追加投資を受けたことを発表した。このお金は主に「オープンなプラットフォーム」の強化に費やされるという。

最近まではバックオーダーですぐには手に入らなかったという話題性は高いものの、この時計についてもまだまだ課題は山積みだ。

周りで持っている友達に聞いたら、一番の課題はデータの正確さ。ちょっと動くだけで心拍数が急激にあがったり、データに支障が出ると言う。

また、その見た目とデザインについてもまだまだ改善の余地がありそうだ。「人には見られたくないから、人目に触れるところではつけない」という意見まで出るのだから、「ウェアラブル」となって始めて効力を発する時計の意味がまったくなくなってしまう。

「話題性」以外に、購入するインセンティブがいまいち見つからない携帯型時計。ただ「話題性」は、そのポテンシャルが高いことの表れだったりもする。

2013年10月5日土曜日

アメリカ政府シャットダウンがシリコンバレーに与える影響。ツイッターの上場は遅れるのか?


アメリカ政府が通称「オバマケア」という医療保険制度を中心とした来年度予算の合意ができず、政府機能のシャットダウンを余儀なくされた。これは17年ぶりという惨事だ。その結果、国防関連や郵便局に代表されるような人々の身の安全や生活に大きな支障を与える機関を除いては、10月2日以来は実質「シャットダウン」状態となっている。

では、ワシントンD.C.から遠く離れたシリコンバレーへの影響はどうだろうか。

まずは身近な例から。ビジネスへの影響は直接的ではないものの、ヨセミテに代表されるようなカリフォルニアの有数の国立公園はすべて「シャットダウン」。数ヶ月前から公園内のキャンプ場を予約していて楽しみにしていた人たちも、泣く泣く予定を変更せざるを得ないなんて、誰が予想しただろう。(ちなみに数ヶ月前には大きな火事のためにヨセミテ国立公園がしばらく閉鎖したりと、この国立公園、今年は何かと不運な出来事が続いている)

またシリコンバレーと言えば、H1Bビザを持つ外国国籍の労働力の占める割合が一番高い地域とされる(いわゆる'H1B intensity'と言われる密度)。このビザ認定プロセスについても、シャットダウンによって滞ることが予想される。パスポート関連のサービスについても遅れが出ると見られるので、急な海外出張でパスポートを更新しないといけないという場合にも多少の影響があるかもしれない。

グーグルのようなシリコンバレーを代表する大企業、しかも政府との取引が多い企業にとっては、このシャットダウンによりビジネスがスローダウンする可能性がある。政府関連のプロジェクトは一旦保留となり、その結果収益にも影響するだろう。グーグル以外に例えばマイクロソフトなど、カリフォルニア外に本社を構えながらシリコンバレーで大規模なオペレーションを行う企業についても、同じことが言える。企業規模の大小に関わらず、政府関連の機関のITをサポートする企業への影響も避けられない。

最後に、シャットダウンとともに課題となっている10月17日がデッドラインとなっている「債務の上限の引き上げ」の行く末次第では、上場手続きの真っただ中にあるシリコンバレーの企業も影響を受けるだろう。

上場と言えば、ツイッターが上場の手続きを始めたと発表した。ツイッター上場のタイムラインへの影響は、プロセスの段階によると言う。まだ手続きの初期段階であれば影響は最小限に留まるが、最終段階であればそのタイムラインへの影響は大きくなり得る。

いずれにしても、このシャットダウンが長引けば長引くほど、以上の分野以外にもさまざまなところで影響が出てくるのは間違いない。

2013年10月2日水曜日

Evernoteが靴下の販売を開始。ブランド戦略か、ユーザーの金銭感覚の違いを逆手にとった戦略か、その真意とは?


Evernoteが、'Evernote market'をローンチした。この発表に首をかしげた人も、少なくないはず。

Evernoteと言えば、パソコン、携帯電話、タブレットなどのデバイスをまたがり、シームレスにドキュメントを管理できるソフトウェア/ウェブサービスだ。携帯電話から入力した情報を自宅や職場のパソコンからもアクセス、更新できるので、いちいちドキュメントをデバイス間で送信したり、共有フォルダーに入れたりとかいう手間が省ける。つまり、オンラインで管理するノートのようなもの。

ではそんな「オンライン・ノート」の会社が、何故また物理的な商品を扱うビジネスに参入したのか?

'Evernote market'で売っているのは、ポストイット、ノートブックなどの文房具から、バックパック、財布や靴下など多岐に渡り、他社大手ブランドとのコラボ商品も含む。例えば富士通とコラボしたスキャナー。スキャンしたドキュメントがすべてEvernoteで保存されて開けるようになるという特別規格だ。

CEOであるPhil Libinによると、Evernoteのゴールは仕事やプロジェクトの「効率化をはかる」こと。スキャナーは典型的な例だ。スキャンしたドキュメントがメールで送られてきて、それを開いてデスクトップに保存、その上でフォルダーに分類して整理するなどの手間が省かれ、すべてが勝手にEvernote上で整理されてしまうというのは効率的だから。

ポストイットは日本でも販売されるようだが、これも良い例だ。これらに代表される「効率化」は、以前にもこのブログで何度も触れた「オンライン」と「オフライン」の融合にもつながる。

デジタル化がここまで進んだ今でも、紙のポストイットやノート、紙の文書がこの世からなくなるということはあり得ない。となると、オンライン(デジタル)とオフライン(アナログ)の世界をいかにシームレス化するかが効率化へのカギとなる。今までデジタル・デバイス間のシームレス化をはかってきたEvernoteだが、今度はオンラインとオフライン間をつなごうとしているのだ。

では、他の商品についてはどうだろう?ポストイットやスキャナーについては確かに説得力がある「効率化」も、バックや靴下となるとかなり無理がある。

それに対する回答は、「生活の質の向上」。こじつけのようにも聞こえるが、効率化の先にある究極のゴールは、「生活の質の向上」というのだ。つまり、機能的でデザイン性の高いバッグを持つことで、直接的もしくは間接的に、生活の質を向上しているという説だ。

もちろんブランディングという観点からも、「生活の質を向上するプロダクト」というポジティブなイメージが広まるに超したことはない。

またもう一つ注目したいのが、オフライン商品がどのように主力ビジネス(オンライン・ノート商品)の収益に影響を与えるのかという点。この新ビジネスをEvernoteが直接的な収益源として期待しているかどうかは不明だが(おそらく'NO'だろう)、間接的な影響を与えることを期待しているのは間違いない。

例えば、Evernoteではポストイットを購入すると、「Evernote Premium」サービスが1ヶ月間無料で使える。これによって、今まではEvernoteの有料サービスに興味を持たなかったユーザー層まで、リーチを広げることができるのだ。

ここで疑問。そもそも、月々3ドルほどのEvernoteの有料サービスを払いたがらなかったユーザーが、ポストイットに6ドル払うのか。わたしは十分あり得ると思う。消費者は、デジタルとアナログ商品への対価を同じようには評価しないからだ。

消費者がオンラインサービスに対してお金を払うことの抵抗と言えば、アプリが一番の例だろう。

ゲームに代表される人気アプリは、主な収入源はアプリ内での購入で、アプリそのもののダウンロードではない。それが故に、今日のほとんどのアプリは無料ダウンロードで、アプリ内でアップグレードしたり他のコンテンツを買う際に課金する仕組みとなっている。

99セントのアプリと言えば、1ドルショップ(100円ショップに相当するもの)で買い物するのと同じ感覚のはずなのに、アプリの場合は財布のひもが確実に固くなる。100円ショップに行ったら、ついつい予定していないものまで買い込んでしまって、気づいたら1000円になってることが多い。それでもいつか役に立つだろうと満足するどころが、1000円でこれだけ買えたというお得感でうれしくなってしまうから不思議だ。実際には、1000円をどぶに捨てたに過ぎない場合も多いのに。

一方、アプリストアに行くと、まずは「無料」のものにしか目がいかない。無料のトップアプリだけをブラウズして、その中から評価のいいものを選ぶ、というのが典型的な「ディスカバリー・プロセス」だろう。お金を出してでもダウンロードするというのは、知り合いやレビューサイトでの強い推薦があってはじめて、オプションとなる。

返品できない怖さなのかと思いきや、日本の100円ショップだって普通は返品を受け付けないから、それだけではない。結局は目に見える安心感だと思う。キャンドルホルダーとか収納ボックスとか、目に見えてわかりやすくて、自分はその価値を正当に評価できると勝手に「思い込んで」しまう。一方、デジタル商品は見た目での判断はほぼ不可能で、しばらく使ってみないとわからない。

目に見えるものはその質とかお金を払う対価が目に見えるから(正しく判断できるかどうかはまた別問題)、安心感がある。

ちょっと長くなったけど、要は、Evernoteがアナログ商品を販売することで、現ユーザーや今後ユーザーとなる可能性のある潜在ユーザーから、異なる消費行動を引き出すことができるのかもしれない。その結果、異なるユーザー層へのリーチが可能になったり、ユーザーあたりの消費額(アナログ/デジタルにまたがって)が伸びる可能性もある。

この2つのモデルを同一のサイトから、同一ブランドで提供しはじめるEvernote。主力プロダクトはあくまでもオンラインドキュメント管理だが、今回のマーケット提供がどのようにメイン・ビジネスに影響するのか(もしくは、しないのか)、さまざまな観点から面白い。オンラインとオフラインの融合、ブランド力への影響、そして収入源としての相乗効果。

余談だが、日本の100円ショップはすごい。秋の新商品の中に栗ピーラーを発見。これもまた、絶対に使わないことがわかっていながらもついつい買ってしまう代表だろう。

2013年9月26日木曜日

グーグルのショッピングサービスがサービスエリアを拡大。当日配達だけでユーザーをアマゾンから奪えるか。


今日、Googleが「Google Shopping Express」の提供地域を拡大した。これはグーグルのショッピング・当日配達サービスで、今年のはじめから試験的に、サンフランシスコに地域を限定して提供していたものだ。今日のローンチにより、サンノゼまで提供エリアが拡大した。

GoogleはTarget、トイザラス、Office Depotなどの全国チェーンからBlue Bottle Coffeeなどのローカルなビジネスに渡るビジネスと提供、それらの商品をグーグルのサイト上で販売、配達する。値段は各店舗のものと同じで、配送料は一店舗あたり5ドルだ。つまり、Targetの商品を1つ購入しても10個購入しても、配送料は5ドル。ちなみに今は配送料が無料になるキャンペーンをやっているので、店舗に出向く手間と時間が省けるどころか、追加料金を一切払わずに商品が家まで届く。

何よりもこのサービスの売りなのは、「当日宅配」という点。わたしも試験サービス開始以来、何度も利用して重宝している。というのも、朝気づいてその日のうちにどうしても必要な場合って、実は結構あったりするのだ。それも洗剤とか子供のオムツとか、重くてかさばるものが多く’、近所のドラッグストアに駆け込むのも面倒だ。かと言って、大手のスーパーまでわざわざ出向く時間もない。スーパーのオンラインサービスを使うと、配送に最低数日はかかる。ドラッグストアでとりあえず小さいパッケージを買って、数日間しのぐという手もあるが、それだと割高になる。

そんなときの救世主となるこのグーグル・ショッピング・エクスプレス、3〜4時間の枠で時間指定ができ、正午くらいまでにオーダーすると、その夜までに商品が届く。しかも夜の6〜9時という枠があるのもうれしい。

数時間後に、グーグル・ロゴのポロシャツを来た配達員がグーグル・ロゴのついた車で家まで配達してくれると、何度も利用した今でも「うわっ、本当に来てくれた」とその迅速さに感激する。

このサービスローンチによって、当然影響を受けるのはアマゾン。

アマゾンもPrimeというプレミアムサービスを展開していて、79ドルの年間料を払うと無料で2日という特急配送が使える。ただこれが、緊急性が高いものに対してメリットがある特典だとすれば、2日よりも当日の方がいいに決まっている。また、配送時間枠の指定ができない(アマゾンジャパンはできたはずだが)というのも痛い。

アマゾンのもう一つの魅力は、Subscribe & Save Programだ。日本アマゾンでは、「定期お得便」と呼ばれているサービスで、定期的に購入することで(頻度は選べる)単体で購入する場合と比較して、5%から15%までのディスカウントが適用される。

格安になるという点に加え、シャンプーがあとどれくらい残っていて、いつ買い足す必要があるかを気にしなくても良い。大したメリットには聞こえないかもしれないが、忙しい日々の中で心配事が一つ減るというのはうれしい。

というわけで、今後は商品によって使い分けるケースが増えるだろう。緊急性、配送料やディスカウントを含めた値段、そして商品数などが決め手となる。もちろん商品数は圧倒的にアマゾンの方が多いので、グーグルで扱っていなければアマゾンに直行となるわけだが。

定期購入と言えば、先述のグーグルの提携先の一つである(ターゲット)も今週、オムツを筆頭とした赤ちゃん関連の日用品に限定して、Target Subscriptions というサービスをローンチした。いくつかの商品については割引されるようだが、アマゾンのような一律数パーセントといった一貫したディスカウントではない。

赤ちゃん関連の日用品をカテゴリーに選んだという背景については、アマゾンの力の入れようを見るだけでも、そのエリアがいかに大きいのかが推測できる。アマゾンはAmazon Momというプログラムを提供し、メンバー限定のディスカウントを提供したりしている。また、数年前にはベビー用品に特化していたマーケットプレイス「Diapers.com」を買収している。

赤ちゃんを抱えて何かと必要な日用品が多く、しかも消費速度がハンパない。それに加えて、子供を抱えた忙しいママとなれば、これほど最適なターゲットはないのだ。

日用品のオンラインショッピングというスペースで、各社の競争がますます激しくなることが間違いない。サービスエリアや迅速な配達など、基本をしっかり押さえることは必須として、各社とも差別化をはかることが求められそうだ。ひとつのアイディアとしては、どの業界でも求められる「パーソナライズ」。

例えばオムツ。必要なオムツのサイズは大きくなっていくので、Subscribe & Save Programを通して乳幼児用の小さいサイズを1年間定期購入するケースはほぼゼロだ。であれば、勝手にサイズアップした上で「定期配達」してくれるようなサービスがあってもおかしくないと思う。ちなみに、日本のオムツはS/M/Lというサイズ分けのようだが、アメリカでは1〜6ともっと細かく分かれているので、その手のサービスはさらに受けるはず、と思うんだけど。

2013年9月18日水曜日

腕時計型端末やフィットネス系アプリを持つだけで健康になったり痩せた気になりがちだけど、実際、運動やダイエットとしなくていいわけではない、という耳の痛い話。


サムソンが、今月25日に腕時計型端末を販売すると発表した。アップルも腕時計型のウェアラブルコンピューター「iWatch」の詳細がいつ明かされるのかも、注目される。最近、アップルがナイキのリストバンド型計測機器の開発に貢献したJay Blahnik(ジェイ・ブラーニク)を採用したことで、「iWatch」にはフィットネス機能が備わるのではという憶測を呼んでいる。

フィットネス機能は、腕時計型端末によってさまざまな可能性が広がる分野だと言える。

腕時計型端末単体ではなく、デスクトップ、スマホからゲーム機まで、様々なハードウェアと連携することによって、今まで統一的に集めて分析することは難しかったデータの収集が可能になる。その結果、消費者の「ヘルスとフィットネス」の向上を促せる。

まだ若い分野ではあるものの、腕時計型端末、アプリ、ゲーム機で動くソフトウェアなど、ここ最近で急速に競争が激しくなってきたのも事実だ。

プロダクトごとに、目的は微妙に違うし(ダイエット、健康管理、トレーニングなど)、対象としているユーザーも異なる。例えばハードコアなアスリートと普段ジムになんてまったく行かないけどお腹が気になってきた人では、ゴールへの達成方法も変わってくるからだ。ただしほとんどのプロダクトが、レベルごとのメニューやサービスを提供していて、幅広いユーザーが使えるようにはなっている。

最近はやっているサービスをいくつか紹介したい。まずは最近はやりの、腕時計型端末から。

まずはFitbit(フィットビット)。これは腕にはめるバンドのような端末とそれに連携するスマートフォンのアプリで、使い道はシンプルだ。値段が比較的安いこともあってか、わたしの周りではこれを使っている人が一番多い。サイト経由でカロリー計算したりもできるようだが、万歩計のように使っている人が多いように見られる。日々の活動量をはめているだけで自動的に記録してくれて、友達と比較してランキングを公開する。あるレベルに達すると「バッジ」がもらえたりするので、ちょっとしたゲーム感覚で運動をトラッキングできる。

Jawboneが出しているのは、「Jawbone Up」。これもフィットビットと似ていて、バンドを腕にはめ、スマートフォンのアプリを通してデータを見る。トラッキングするのは、活動量、睡眠パターン、食事のカロリーと栄養素などだ。基本的な活動量と睡眠は自動的に計測してくれるけど、それ以外は、多少の入力が必要だ。

Basis(ベイシス)は心拍数とかどれだけ汗をかいたかとか、もう少しニッチなデータまで集める腕時計型端末だ。また時間のディスプレイがあるので、実際に時計として使える。この点はNike+ FuelBandも同様で、それが故には多少ごついデザインになってしまうのと、更なる機能がついているため、上の2つと比べると70〜100ドル高い。

腕時計型端末の課題は、データの正確性とかスマートフォンとの親和性(いかに迅速にデーターがアップデートされるかとか、複数の端末を通してデータを管理する使いやすさとか)だろう。すべて100ドル以上するので、その価格の妥当性を疑問視するユーザーも多いと思われる。

そこまでの値段を払うのは嫌だけど、健康管理には興味ある人には、様々な無料のスマートフォンアプリがある。もちろん収集できるデータが限られるので、基本的な「健康管理」系アプリが多い。こちらは腕時計型端末のように運動を促すというよりも、食生活のモニタリングが主な目的で、ダイエットのためや、食生活のバランスの向上という目的で使われることが多い。一日を通して食べたものをログして、連携したデーターベースからカロリーと栄養素の計算をする。データを友達と共有して、「ソーシャル」にダイエットに励むこともできる。

この手のアプリの課題は、何といってもデータベースの充実化。例えば日本人としては、三食丼とかカレーうどんとか食べたりするわけだけど、データベースを検索しても一番近いのは照り焼きビーフ丼と天ぷらうどんだったりする。また、自分で料理した場合とレストランで食べた場合のカロリーや量の違いなども、的確には反映しづらい。

最後に紹介したいのが、「運動」に特化したアプリ。FitStarというアプリで、これはパーソナル・トレーナーに取って代わることを目指している。アメフト選手 Tony Gonzalezをフィーチャーしていて、実際のフィットネスメニューのデザインも彼が関わっているという。ジムでパーソナル・トレーナーが自分の運動能力や目的に合ったメニューを組んでくれるように、自分のデータを入力することによって、最適な運動メニューを提示してくれる。すべて自分の部屋でできるもので、特別な器具は不要。ジムで高いお金を払いたくなかったり、出張が多かったり忙しくて継続的にジムに行く時間がなかったりする人がターゲットだ。ジムの代替ということもあってか、マネタイズはかなりアグレッシブに行っている。もっとも初歩的な4週間のメニューは無料だが、それ以降は有料になり、メニュー次第で5ドルから10ドル以上かかる。

とにかくあらゆるオプションが提供されてきているのだ。サムソンの端末が販売され、アップルの端末の詳細が明らかになるにつれ、この市場は一層伸びていくだろう。

この分野の大きな魅力は、マーケティングしやすいという点にもある。買ったりインストールしただけで、健康になったり痩せた気にさせてくれる。テクノロジーはモチベーションを与えてくれるし、時にはゴールへの近道を教えてくれるけど、それでも運動や食事管理など努力なしでは何も変わらないというのは耳の痛い話。それがわかっていても、プロダクトを見ているだけで健康な気分になるわけだから、マーケターとしてはやりがいがある(?)だろうなと思う。

ただし今後ますます競争が激しくなるだろうこの分野、単に売り切るだけではなく、ユーザーが継続的に使いたいプロダクト、そして、継続的に使うことが簡単なプロダクトが、最終的には勝ち残っていくんだろう。それによってサブスクリプション的なモデル(定期購入)が確立すれば、収入の安定化にもつながる。

2013年9月11日水曜日

Yahoo!の新ロゴは、会社の一層のリフレッシュ化をはかれるか。


Marissa Mayerとヤフーがまた話題に。今回は、ヤフーのロゴ改訂の話だ。

まずはその内容以前に、これだけ話題にのぼることが多くなっただけで、ヤフーにとっては相当ポジティブな効果が現れている(特に社員の士気)、ということは注目すべき点で、Marissa Mayerの大きな(もしかしたら最大の)貢献だ。

そしてロゴの話。この1ヶ月間、ヤフーは様々なロゴを実験的にホームページ、ヤフーメール、そして他のヤフーのページで試してきた。感覚的ではなく、実験をもとに集めたデータをもとに数値的に決断をするという、Marissa Mayerのグーグル時代からのやり方で新ロゴが決まったとのこと。つまり、経営陣が好きなロゴを選んだとか、ブランドマネージメント会社が提示したものを適用した結果ではない(そもそも今回は外部の会社を使わず、ヤフー内部のデザイナーによってすべてのロゴが作られた)。実トラフィックを使った実験の結果、何人がそのロゴをクリックしたかとか、リピート率や滞在時間に影響があったかとか、また、「印象」という定量化しにくい点についても、ユーザへの調査をもとにその効果をできるだけ数値化したものと思われる。

個人的には前のロゴがすごい好きだったので、できればそのロゴを更新する形で「リフレッシュ」をはかってもらいたかったなと思ったりする。先週発表された新しいロゴについて多くのブログで指摘されたのは、「クリニーク」のような化粧品会社のイメージを彷彿させるということ。意見を聞いてみると確かに説得力がある。今回ヤフーが選んだような、平たい直線的なフォントに立体性を持たせるデザインは、高級感を醸し出してニッチな消費者にアピールしたい場合に人気のあるものらしい。実際多くの化粧品は広い消費者を抱えるが、「ニッチで選ばれた消費者」という印象を買い手に与えることがポイントだ。つまり、自分は他と違い、選ばれた「違いがわかる」消費者なんだ、という優越感を受け付ける。

一方のヤフーは、多くの人に使われたいインターネットボータル。クールでありながら親しみやすいイメージを伝えたいという意図の中、化粧品のようなロゴが選ばれてしまった。

ただ、いつでも批判はつきもの。今までのMarissa Mayerの決断:Tumblrの買収(とその金額)、在宅勤務の廃止、サービスの停止、レイアフなど、常に批判と疑問の声があがったが、振り返ると、全体的にはポジティブな効果をもたらした、もしくは大した批判にはならずに忘れられていった感がある。

ロゴはCEOで彼女自身と並んで、会社の顔だ。自分がそこまでプロジェクトに深く関わって改訂を決定したということは(各デザインやデータのレビューから決定プロセスまで深く関わったらしい)、この決定をそれだけ重く捉えているということで、その責任もしっかり自分で背負っていくという現れ。そういう姿勢は当たり前のように見えても、残念ながらどのCEOにも見られるものではない。その点は、高く評価されるべきだと思う。

ちなみに、ヤフージャパンはロゴ更新の予定はないという。ヤフージャパンはヤフーファミリーの一員というよりも、「ヤフージャパン」としての一ブランドを築きあげ、ある意味、親会社以上の成功を納めてきた。今回のロゴ改訂についても例外ではなく、親会社に依存する必要がないし、逆に独自路線を行った方がメリットが高いかもというのがヤフージャパンの立場だろう。

下の画像にあるのは、左が新しいロゴ、真ん中が今までの古いロゴ、そして右がこれからも変わらないヤフージャパンのロゴ。



2013年9月6日金曜日

ニュースで活躍するレポーターには日系人が多い?


前からローカルニュースを見ていて気になっていたことがある。日本人の名字を持つ、日系アメリカ人のレポーターが多いということだ。天気予報から道路情報、現場からの中継レポートに渡り、日系人を良く見かける。わたしが見た限り、少なくともローカルニュース局では、メインキャスターではなくサブとして活躍している人が多いようだ。

ニュースで活躍する日系人は本当に多いのか?

Wikipediaによると、ニュース・メディアで活躍する日系人として16人の名前があがっている。果たしてこの数値を多いと判断するか、少ないと判断するか。一つのベンチマークとして、中国系アメリカ人と比較してみた。

同様のWikipediaによると、中国系アメリカ人については「ニュース・メディア」というカテゴリーはなく、もっと広い「ジャーナリズム」というカテゴリーのもとに、28人の名前があがっている。トップ何人かのみをリストアップしただけという可能性もあるので一概には比べられないけど、”仮に”両リストとも共通のしきい値を適用して作成されているとする。(雑な仮定であるのは承知の上で。。。)

アメリカ全人口の統計によると、中国系アメリカ人は日系人の4倍以上いるらしい(2010年時点)。となると、ニュース業界にいる日系アメリカ人は比較的多い?という仮説は正しいことになる。

ちなみに余談だが、この統計値によると、日系アメリカ人は減少傾向、一方の中国系アメリカ人は増加傾向を示している。

また地域別のアジア系アメリカ人の比率だが、サンフランシスコはハワイに続いて第2位の比率を占め、全体の18.4%がアジア系だという。

他の情報源として、NBC Bay Areaのキャスター陣を見てみた。34人の社員がテレビに顔を出す報道チームとして名前を並べる中、3人は日本人の名字を持っている。これだけ見ると大した比率ではないが、個人的には現場レポーターも含めると実はもっといるのでは?という印象がある。アメリカ全人口に占める日系人の割合が0.4%なので、それに比較すると高いとは言えるが、サンフランシスコ/ベイエリアならではの傾向なのかもしれない。

気になるのは、その中で女性が一人もいないこと。他のアジア系アメリカ人(ベトナムや中国系)については女性が目立つことに比べると、日系アメリカ人で女性の名前があがっていないのは単なる偶然?かもしれないものの、やはり気になる。

ちなみに日系人の女性キャスターと言って、唯一思いつくのは、ナショナルテレビNBCで全国放映されたいた「Today」ショーの朝の顔を努めていたAnn Curryだ。数年前に突然鋼板させられて話題になった。彼女は日本人のハーフだが、特番として山形(だったと思う)にいる日本の親戚を訪ね、日本の文化を全米に紹介したりもしていた。あまりにも突然の降板に、「男性メインキャスターのMatt Lauerと仲が悪い」、「メインストリームのアメリカ人とはあまりにも違うバックグランドに、視聴者が親近感を覚えられなかった」などさまざまな憶測が出回った。視聴率低下の責任を取らされたのだろうけど、何故彼女だったのかはいまだに明確に説明されていない。

いずれにしても男性女性に関わらず、もっとメインキャスターとして活躍する日系人がいてもいいのにと思わずにはいられない。確率的に言えば、次に日系人メインキャスターが誕生するのは、アジア人率が高いこのベイエリアかもしれない。

余談だが、上記のNBCの日系人キャスター、名字の綴りが微妙に日本人のローマ字表記と違っていたりする。誤表記?なのか、移民時はそのような表記方法で統一されていたのかわからないが。例えば、ベイエリアNBCでお天気担当をしているRob Mayeda。また、道路情報を担当しているのは、Mike Inouye。前田だったらMaedaで井上だったらInoueとなりそうなものだが、「え」を「ye」と綴るのが標準だったのだろうか。

(追加 − 9月25日)
今日、Fox系列のKTVUでニュースを見ていたら、6人ほどのリポーターのうち、3人は日系人!ウェブサイトを見てみたら4人の日本人の名字を持つリポーターが確認できた。

2013年9月5日木曜日

人気ショップになるとサイトから追い出される?という皮肉な矛盾をどう解決するか。Etsyの新たな挑戦。


アメリカ国外でもじょじょに名前が浸透しつつある、手作りクラフト品やヴィンテージ品を売買するEtsy(エッツィーと読む)というサイトがある。

アート、手芸品、工芸品などを世界中の幅広いユーザーに売りたいアマチュア・アーティストのためのマーケットプレースとして、2005年のサービスローンチ。今や3000万人の登録メンバーと、100万店舗を抱える巨大サイトにまで成長した。

キーワードは「ハンドメイド(手作り)」で、趣味として主婦が手作りするアクセサリーから、駆け出しのアーティストの作品まで、個人の手に寄って作られた手作り品を売買する場を提供している。一見ニッチかと思われがちだが、ユニークなギフトやアクセサリー、また、自分でコーディネートする結婚式の小物(結婚式場の装飾、引き出物からブーケやドレスまで)などを買う場として、今やメインストリームなユーザーの中でも認知度は高い。

成功したサイトやビジネスモデルにつきものなコピー版。Etsyも例外ではない。Etsyの場合は強いコミュニティーの上に成り立っているため、サイト自体のコピーは簡単ではないものの、そこで売られている商品のコピーは問題になってきている。さらに、先日の記事によると、「手作り」の定義が会社のそもそものミッション・ビジョンを揺らがしている。

人気商品を他社業者がコピーして販売するというのは、容易に予想できる課題だったが、Etsyが直面する課題はもっと奥が深い。会社の基盤であり、強いコミュニティーを支えてきた、「手作り」の概念とその定義だ。つまり、どこまで手作りだったら許容されるのか、すべてをオーナー一人の手で作らないといけないのか。

というのも、今まできちんとポリシーに乗っ取って運営してものの、注文が殺到したために生産が追いつかなくなり、外注せざるを得なくなる個人アーティストも増えているという。人気が出たが故に一人で生産できなくなって、その結果サイトから追い出されるなんて、皮肉なことだ。2011年にEtsyはポリシーの緩和をはかり、今ではデザインがオリジナルであれば、生産において多少の外注を許可している。

ただ、そんな曖昧な「手作り」という定義をつけ込んで、中国などからアクセサリーなどの商品を大量に格安で仕入れ、Etsy上で「手作り」として売っているショップも増えてきているようだ。仕入れ価格とサイト上での売値を比較すると、3000%近い利益を確保している例も少なくないという。

同じようなデザインが、中国のアリババのようなサイトで売られているケースも多く見つかっている。強いコミュニティーのメンバーによって常時モニタリングされているものの、すべてのコピーを世界中のサイトから摘出するのはほぼ不可能だ。

人気が出たがためのチャレンジに直面するEtsyだが、この問題は今後の成長とともにさらに大きくなる一方だろう。

成長に伴ってポリシーを柔軟に緩和する必要があると同時に、成長した個人ショップが「卒業」する先の別ブランド/サイトを立ち上げるのも手かもしれない。

一方で、コピー商品を世界中からなくすのは、ほぼ不可能。救いなのが、アリババのようなサイトが株式上場に備えてコピー商品の取り締まりを厳しくしてきている、という点くらい。その効力もどこまで続くのかは疑問だったりする。コピーされる側でなくてコピーする側の意識がきちんと更正されるまでは、残念ながらこの追いかけっこは当分終わらないだろう。

2013年8月29日木曜日

遠距離でのつながりを可能にしたインターネットが、今度は崩壊したご近所関係を再構築しようとしている。Nextdoorの人気の理由。


日本でのLINEに代表されるサービスの成功を後押ししたとされる、「ソーシャルネットワークのプライベート化」だが、その傾向はアメリカ、シリコンバレーでもじょじょに広まりつつある。

わたし自身も最近サインアップして、最近周りでも良く聞くようになったのが、Nextdoorという地域に特化したネットワークだ。

シリコンバレーを中心に始まったこのネットワーク、今では17800の近所がすでにネットワークに参加している。

主な利用目的としては、不要品の売り買いといったクラシファイド的なものから、近所での不審な人物を見かけたとか、事件があったとか、ネコが行方不明だとか、不動産情報(売買というよりも、夏の間だけ家を借りたいとか貸したいなど)の情報まで幅広い。

クラシファイドだったらCraig's List、不動産の貸し借りだったらAirBnBなどに代表される他サービスが存在するが、一番Nextdoorが差別化できるのは地域の事故や事件、不審者情報などだろう。車の窓を割って侵入されたとか、ジョギング中に不審者に攻撃されて被害を受けたとか、安全に関わるような情報を即時受け取ることができ、その周辺には近寄らないなどの対策が立てられる。これはすべて、近所/コミュニティーの信頼関係の上に成り立っている。

ではどうやって、住民をなりすました犯罪者がネットワークに加入しないことを確信するのか。

サインアッププロセスの中で、住所確認をするステップを必ず踏んで、その地域の住民であることが確認されないと加入が承認されない。オプションとしては、電話番号による確認、ハガキ郵送での確認、クレジットカードでの確認などの他にも、すでにメンバーになっている「承認済み」のユーザーからの紹介などの方法がある。

このNextdoor、Benchmark CapitalやGreylock Partnersに代表されるVCにバックアップされていて、現在の収益はゼロ。ただここまで細分化された地域に特化したサービス(サンフランシスコの中だけで20近くの「近所」が指定されている)、そして、信頼性の上に成り立っているサービスということで、その地域の小売業などにとっては格好の宣伝プラットフォームになるだろう。

マネタイズの潜在が大きいだけに、広告といえども、いかにユーザーに有益な情報を行き過ぎない方法で届けるかがチャレンジになる。

リアルな世界での「ご近所の付き合い」が薄れ、まったくと言っていいほどなくなってきたこの時代に、Nextdoorのように、オンラインを通した近所付き合いがまた始まろうとしている。

テクノロジーという視点から考えると、物理的な距離を超えたつながりを可能にしたインターネットが、今度は物理的に近い人たちのつながりを再構築しようとしている、という発想がとても面白い。


2013年8月24日土曜日

学研のおばさんが教材の代わりに靴を届けてくれるような感じ?ShoedazzleとJustFabの合併に見る、日本でのファッションの定期購入サービスの可能性。


先日、ファッション界の定期購入サービス大手、ShoedazzleJustFab が合併を発表した。どちらもロスに拠点を持つサブスクリプション(定期購入)型のサービスを展開する会社で、Shoedazzleは名前の通り靴が中心、JustFabは靴からジーンズから子供服とファッションアイテムを幅広く取り扱っている。月額40ドル程度のサブスクリプション費用を払うと、「スタイリスト」によって厳選された自分のテイストにあったとされるファッションアイテムが毎月送られてくる(*ただ、Shoedazzleの料金体系は今年のはじめに変わったようだ)。自分でショッピングする手間が省ける他、「スタイリスト」が選別してくれるファッションだからスタイルに自信がなくても安心して着れるというメリットがある。

今回の合併によって、2014年には400ミリオンドルの売り上げと3,300万人以上のユーザーを世界中に抱えるまでに成長する見込みとのことだ。両社を合わせると、毎月100万人の新規ユーザーが獲得するペースで伸びているという。

こういったビジネスモデル、実は消費者よりも企業側に大きなメリットがあったりもする。何よりも大きいのは、ファッション業界では難しい定期的な安定した収入が期待できるという点。また、毎月配送するファッションアイテムを選ぶのは企業側なので、店頭やオンラインストアで売るモデルに比較すると、在庫管理がしやすい。さらには、メーカー/ブランドと協調して、消費者からのフィードバックを来月の売れ筋予想に利用したり、メーカー側での在庫管理向上に利用できるという点もある。

日本ではそこまで浸透していないモデルだが、欧米ではどの分野でもこの手の人気サービスが存在し、その数は増える一方だ。(リストについては、このサイトを参照)

双方にとってウィン・ウィンのビジネスモデルのように見えるが、どのファッションビジネスにも共通するように、ブランド力がものを言う。ブランドやセンスの信頼性をしっかりと確立して、ユーザーがこのサイトからのおすすめ商品なら信頼できると思わせるような、強いブランド力がカギとなる。

この2社に関しても例外ではなく、そのブランド力に大きく貢献しているのが蒼々たる顔ぶれのセレブリティーだ。ShoedazzleのインベスターはBrian Lee, Robert Shapiro, そしてKim Kardashian、一方のJustFabは、Kimora Lee Simmonsが「celebrity designer and creative director」として関わっている。JustFabはベンチャーキャピタルから110ミリオンドルの投資を受け、Shoedazzleは66ミリオンドルの投資を受けている。

日本ではそこまで浸透していないモデル、ということを前述したが、その点についてもう少し掘り下げてみたい。

オンラインだろうがオフライン(店頭ショッピング)だろうが、特にファッションに関しては、日本では「ショッピング」というイベントを楽しむ傾向が強いような気がする。忙しい働く女性に関しても、ショッピングというイベントを通してストレス発散、なんていう話も良く聞く。店頭でのショッピングである必要はなく、オンラインであっても、ファッション雑誌を見るようにいろんな写真やサイトをクリックして、違うスタイルを「ウィンドウショッピング」して楽しむ人は実際多いだろう。

ただちょっと考えてみると、ファッション業界以外では、学研の学習シリーズとか、生協の宅配サービスとか(購入するものを選べる点が多少異なるが)、概念自体は日本の方が昔から根付いているような気もする。もちろん消費型の食品とか学習教材(消費とは言わないかもしれないが、洋服のように長期間使用するものでもない)とファッションは一様に比較できないが、概念自体に大きな抵抗はない気がする。

逆に言うと、単なる「定期購入」に、もう少しソーシャル性とかショッピング要素を組み入れたら面白いかもしれない。例えば、店頭で取った写真や雑誌の切り抜きをもとに、こんなイメージのスタイルを送ってほしいとリクエストできる機能とか、自分の写真を送って細く見えるコーディネートとか背が高く見えるコーディネートを選んでほしいとか。日本のユーザーならではの付加価値をつければ、面白い分野だと思う。


2013年8月20日火曜日

大手企業のCEOは一般人よりもソーシャルメディア性が低い?


Forbesの記事によると、アメリカのトップ500企業を率いるCEOのうち、ソーシャルメディアを活用しているのは3分の1に過ぎない。

「活用」の定義は、ソーシャルネットワークのアカウントを持っているということだ。

では、実際にどのソーシャルメディアが一番使われているのか。

CEOという職業柄から容易に想像できるように、LinkedInがもっとも利用されている。ヒューレットパッカードのCEOのMeg Whitmanのように、コネクション数が265,852まで達する「ソーシャル」なCEOもいる。

一般ユーザーがソーシャルメディアと聞いて、まず思い浮かぶ、代表格Twitterはどうだろうか。

CEO間でのTwitter利用率は5.6%という予想外に低い数値に留まった。昨年の3.6%から上昇したものの、アメリカ人の18%がTwitterを利用しているという統計からも、一般ユーザーの利用度よりも格段に低いのがわかる。

もう一つの代表格フェースブックに至っては、7.6%という結果だ。アメリカの成人の67%がフェースブックにアカウントを持っているのに、CEO間での浸透率はそれとは比較にならないほどの低い数値に留まった。

もう少しマニアックな(?)域に入るグーグルプラスについては、500人中たった5人の利用という散々な結果だった。

では、日本のCEOはどうだろうか。

同じようなデータは残念ながら見つからなかったが、ソーシャルメディアを活用している企業のリストはこのようになっている。

これらの企業のCEOの、個人としてのアカウントをランダムに検索してみたが、わたしが見た限りでは見つからなかった。

一方、有名人のツイッターアカウントの一覧を見てみると、総勢たるIT企業のCEOが名前を連ねている。いわゆる「トップ企業」に入る企業もあれば、業績よりも話題性が先行して、有名人となったというような起業家の名前も、ちらほら見られる。

トップ企業のリーダー間でのソーシャルメディア浸透率が、一般ユーザー間でのそれに追いついていないというのは気になるところだ。

ただ、これも業界やCEOの世代によって当然異なるだろう。

IT業界をはじめとする新しい業界や、若い企業、世代の間では、今やCEOが会社の顔だけでなく、個人としてそのビジョンを発信することが求められるし(CEOとしてだったり、個人としてだったり)、それによって若者のロールモデルのようになっていく。ある意味セレブ的な存在になる。

そういう意識を持った若いリーダーや若い業界のリーダーは、個人としてソーシャルメディアにプレゼンスを持つ重要性の意識が必然的に高くなる。一方で、伝統的な業界だったり、コンシューマーではなくエンタープライズ相手のビジネスに従事しているような企業は、そのような意識もまだまだ低いものと思われる。

ただ、アカウントを持つだけでは十分ではなく、どれだけ面白いメッセージをある程度の頻度で発することができるかが、企業の代表またビジネスマン個人として、ソーシャルメディアを最大限活用するカギとなるだろう。

2013年8月9日金曜日

サンフランシスコがあらたなシリコンバレーだということが、ますます顕著になってきた


今日は2年ほど前に書いた内容を、再度考察してみたい。「シリコンバレー日記」というブログ名の原点に戻って、「シリコンバレー」とは一体どこを指すのか?ということ。2年前の記事では、シリコンバレーの拠点が南から徐々にサンフランシスコに移りつつあるという話をしたが、その傾向が一層顕著になってきている。

一昔前のシリコンバレーと言えば、eBay、ヤフー、グーグル、フェースブックなどに代表されるサニーベル、マウンテンビュー、パロアルトなどサンフランシスコから車で1〜1.5時間ほど南に位置する郊外の街を指す代名詞のようなものだったが、最近の傾向を見るとその定義自体が変わってきているのが良くわかる。話題になった最近のスタートアップを見てみると(今やスタートアップではないが、かつてのスタートアップも含めて)、例えばTwitter、Pinterest、Zyngaなどはすべてサンフランシスコに拠点をもうけている。それ以外にも数多くのスタートアップや新しいビジネスがサンフランシスコから発信されたり、サウスベイからサンフランシスコに拠点を移しているのを目の当たりにし、みんな何となくそれは感覚的にわかっていた。ふと気づけば、ここ最近このブログで取り上げた会社も、ほとんどがサンフランシスコを拠点としている。Uber, AirBnB, Pinterestなどなど。Pinterestはパロアルトで始まった会社だが、成長とともに拠点をサンフランシスコに移している。

数年前は何となく定量化する程度だったが、今回はそれを決定的にするデータを見つけたので、紹介したい。

その記事というのは、こちら

まず下の2つの地図だが、ベンチャーキャピタルの投資額とベンチャーキャピタルによるディール数の分散を示している。サンフランシスコが位置する左上の丸が飛び抜けて大きく、続いてその南部を中心に点が分散しているのがわかる。次に密集している南部のエリアはマウンテンビュー、パロアルト近辺にあたるが、規サンフランシスコの規模と比較すると桁違いなのが一目瞭然だ。





一方、下の表は郵便番号ごとのベンチャーキャピタルによる投資額のランキングだ。トップ2はいずれもサンフランシスコで、5位にもサンフランシスコ市内の郵便番号がランク入りしている。その他はやり強いのは、グーグルが拠点を構えるマウンテンビューや、スタンフォード大学のあるパロアルト、そしてそのやや北(サンフランシスコ寄り)に位置するレッドウッドシティーだ。

続いて次の表は、市別のベンチャーキャピタルの投資額のランキングだ。郵便番号ごとのブレイクダウンで見るよりもストレートに、サンフランシスコでのベンチャーキャピタルの活動が飛び抜けて活発なことが一目でわかる。


もう一つの指標としては、サンフランシスコのオフィススペースの高騰化があげられる。わたし自身もサンフランシスコのオフィススペースを探した経験があり、オーナーがかなり強気な条件を突きつけてきたのを覚えている。一番驚いたのは、会社の財政状態を見る以前に、特定の業種には貸さないというポリシーを突きつけてきたオーナー。ソーシャルゲーム会社のZynga(ジンガ)に関する悪評が不動産関係者に広まりゲーム会社には物件をリースするなという警告が流れたというのが背景らしかった。噂によると、ジンガはリースで規定された以上の社員数を詰め込み、その結果物件の良いコンディションを守れなかったというようなことらしい。
ただし、サンフランシスコに会社を構える会社でもその多くは、サウスベイやイーストベイからの公共機関での交通の便を考えたオフィス選びをする。サンフランシスコに拠点を置いて若いエンジニアやアーティストをリクルートする傍ら、いまだにエンジニアに好まれるとされる(特に比較的年齢が上で、家族持ちのエンジニア)サウスベイからも有能なタレントをリクルーティングしたいという意向の現れだ。

つまりリクルーティングは引き続き大きな課題で(それどころか、ますます困難になる一方だ)、有能な人材に最大限アクセスできる立地条件、というのが多くの会社にとっての最優先の条件なんだろう。

2013年6月27日木曜日

コミュニケーションはパブリックからプライベートに、そして記録として残るコンテンツから閲覧時間限定のコンテンツに。スナップチャットの成功が示唆する方向性。


最近写真共有とかビデオ共有という話をしたので、その延長でSnapchatについて。

つい最近シリーズBで60ミリオンドルを集めることに成功、860ミリオンドルのバリュエーション(評価額)に達したという。

Snapchatとは、2011年にスタンフォード大学出身のEvan Spiegel(エヴァン・スピーゲル)とBobby Murphy(ボビー・マーフィー)が立ち上げたアプリだ。2011年9月にリリースされて以来、2012年10月には投稿メッセージ(スナップ)が累計10億件を超え、今では会員によってアップロードされる写真が1日2億件を越えているらしい。

Snapchatを使うと、数秒間で削除されて後に残らないテキスト、写真、動画などを友人に送信することができる。手元に残ってしまわないのが好都合な写真やビデオが対象ということで、学生や若者層に人気がある。悪ふざけした写真や、泥酔した際に勢いで撮った写真も、笑いのネタとして送信して数秒後にはその証拠を完全に消すことができる。スナップショットを取れば保存できてしまうが、その場合は送信元に通知が行くので、少なくとも知らないうちにスクリーンショットが保存されていたということはなくなる。その性質上、物議を呼ぶことが多いアプリでもある。

写真とは思い出を半永久的に残すためのもの、というそもそもの前提を覆して、数秒で消える写真というアイディアをアプリにしたところが面白い。

そもそも写真アプリの業界全体で見ると、5億枚もの写真が毎日アップロード・共有されている。そして、その量は今後どんどん伸びていくことが予想される。

フェースブックも昨年末に対抗サービスをローンチ、今後他の大きなソーシャルネットワークLINEなどが真似する可能性も高い。

ある調査によると、3割が採用時にフェースブックなどのソーシャルメディアをチェックして、不採用にしたことがあるらしい。主な原因は不適切な写真やコメント、アルコールや違法薬物の利用を示唆するもの、前の会社についての文句やネガティブなコメントだ。

文章や写真で記録を残して、複数人と共有するという多くのソーシャルネットワークが売りとする典型的なバリュープロポジションが裏目に出て、自分の不利に働くことが出てくるということの証明だ。

LINEの成功に見られるように、プライベート性を高めることが今後のコミュニケーションのトレンドだとも言われるが、記録として残らない「閲覧時間限定」コンテンツがそれに続くトレンドとなるかもしれない。

2013年6月22日土曜日

Instagramのビデオ機能はひとまず大成功。計算かたまたまか、NBAファイナルとのスケジュール重複が勢いに拍車をかける。


今週木曜日のフェースブックのイベントでの発表内容が噂になっていることについて触れましたが、今日はそのフォローアップを。様々な憶測の中、イベントで発表されたのはやはりインスタグラムのビデオ機能追加だった。

ただ驚くのは、その機能追加の結果。ローンチ後の24時間で、何と500万(!)ものビデオがアップロードされたというから驚異的だ。

フェースブックによると、最大のスパイクはローンチ直後ではなく、その数時間後だったとのこと。現地時間の木曜の夜と言えば、NBA(プロバスケットボール)のチャンピオンを決める最終戦が行われたのだが、マイアミに拠点を持つHeatが、テキサスのサンアントニオに拠点を持つSpursを敗った瞬間、何と1分あたり40時間に相当する量のビデオをアップロードされた。

そもそも今年のNBAのチャンピオンシップ、始まった当初からハラハラするような僅差の試合が続いていた。

2日前に行われた第6試合は延長戦にもつれ込んだアツい試合で、今シーズン最高の試合だったとの評価を受けた。第7戦への期待にさらなる拍車をかけたのはソーシャルメディアだ。Twitterはじめとしたさまざまなソーシャルメディアは、第6戦の興奮が覚めやらぬ様子を反映したコメントで溢れた。その範囲はファンはもちろん、有名人、ファンじゃない人たちの間にまで及んだ。

その熱気を踏まえると、木曜夜のインスタグラムのスパイクも驚きではないかもしれない。いいタイミングでローンチしたとも言える。

一方で、あらためてスポーツ観戦という経験を一層盛り上げるソーシャルメディアの威力、そしてソーシャルメディアにとってスポーツというイベントがいかに理想的なユースケースかということがわかる。スポーツ観戦はソーシャルイベントの一つだけど、誰もがその空間に物理的に身を置けるわけではない。一方、とっても感情的な経験なので、その瞬間に気持ちを共有したり伝えることが大事だ。また、政治とか宗教の問題ではなく理屈のない「どっちのチームが好きか」という単純な好き嫌いの話なので、話題にしやすい。リアルタイム性、ソーシャル性、当たり障りのなさ、どれをとってもソーシャルメディアにもってこいだ。

第7戦も良い試合だった。一夜明けた今日は、みんなソーシャルメディアでのコメントやビデオを見て、余韻に浸っているのではないだろうか。



2013年6月20日木曜日

Instagram(インスタグラム)の噂が示唆する、画像/ビデオ共有ネットワークへの期待と可能性


今週後半に予定されているフェースブックのイベントで何が発表されるかについての憶測が行き交っているけど、有力な噂としてあがっているのが、Instagramがビデオ共有を始めるのでは、というネタだ。

Twitterのビデオ共有サービスVine が急激に伸びていることへの対抗という見方が強いようだ。

数年前にインスタグラムについて触れたが、その後勢いがなくなり、Facebookによる買収以来プロダクト的に大きな動きがなかったInstagramだけに、次の展開が注目されるのは間違いない。

また、一般的に、写真やビデオってコンテンツを利用したサービスがこれだけ展開されてきている傾向を踏まえると、Instagramのビデオ展開するっていうのは説得力がある。

その手のコンテンツは、文章よりもより直感的で受け取り側としても消費しやすいし、さらにはマネタイズのポテンシャルが大きい。アメリカではすでに、Instagramをうまく企業マーケティングに利用している例が多い。代表的なのはSharpie, Warby Parker,  Red Bullなどだ。

一方、画像SNSと言われるピントレストは、日本では楽天が投資した去年の夏以来、日本では勢いを失っている感がある。アメリカでも、投資を集め過ぎたのではと、バリュエーションを懸念する声があがっていたりして、昨年の勢いを維持しているとは言いがたい。

つまり混み合ってきたスペースだけに、戦略をいかに早く形にするか、「エグゼキューション力」が今後のカギになってくる。

また、メディアコンテンツの「共有」という点では、オープンなのかクローズドなのかの定義もカギになる。

例えば、日本ではフェースブック疲れという話や、LINEの急激な伸びはそのクローズド性だという話を良く聞くけど、アメリカでも徐々にプライベートなシェアを売りにするサービスが出てきている。これはネットワークに限らず、写真とかビデオとか特定したコンテンツに特化したサービスでも同じ傾向だ。

例えば、「Nextdoor」。限定された人の中だけでのフェースブックもどきのネットワークが作れる。

写真共有アプリ「Qwilt」は、携帯で撮った忘れられてしまいがちな写真を自動的に整理してアルバムにする。その上、限られた人の間での共有まで手がけてくれる。いちいち他のサイトにアップロードしたり、メッセンジャーやメールで一枚一枚写真を共有する手間が省ける。

明日のフェースブックのイベントでの発表内容はまったく別のものかもしれない。でも、これだけ噂が飛び交っているということは、インスタグラムの次の戦略への期待がそれだけ高まっているということの証拠でもある。

2013年6月14日金曜日

Googleのアルゴリズム改善で、より快適なモバイル検索に期待


グーグルの最近のアナウンスによると、近々検索のアルゴリズムを変えて、スマートフォンに最適化したウェブサイトの構築を促進するという。要は、スマートフォンに最適化したモバイルウェブを提供していないと、検索順位を落とすよということ。

例えばスマートフォン上で検索して検索結果のリンクをクリックしたものの、エラーページに送られたり、読みたかった記事のページではなくモバイルバージョンのトップページに送られたりっていう経験は、誰でもあると思う。

スマートフォン上だと、PC上でのウェブ検索と同レベルの経験はまだ得られにくいのが現状だ。

スマートフォンでウェブを開いてコンテンツを見ようとすると、アプリのダウンロードを強制するサイトまである。

ウェブ検索となるといまだに圧倒的な力を持つグーグル。ここまで強力になると、グーグルの定める掟「イコール」インターネットの掟、みたいな賛否両輪な現実があるけど、こういう方法でモバイルウェブサイトを促して、サイトオーナーにプレッシャーをかけるのは大歓迎。

別リサーチによると、日本のユーザがモバイル経由でオンラインショッピングする際、モバイルウェブの利用がアプリよりもまだまだ多いということがわかっている。特にアパレルやアクセサリーなど女性ユーザが多いカテゴリーで、モバイルウェブの利用が多いそうだ。今後引き続き成長するだろうとされるマーケットなだけに、企業側もモバイルに最適化したウェブの作り込みが一層と重要になってくる。結果的にサイトオーナーもユーザーも、みんなが得をするということだろう。

2013年6月11日火曜日

NBAプレーヤーと、ジムのカフェと、ナパのワイナリー


近所のジムに行って、その帰りに隣接のカフェで仕事をしていたところ、隣のテーブルでの会話が耳に入ってきた。

「最近何してるの」「上海やソウルに行くことが多くて忙しいの。最近はYao Ming(ヤオ・ミン)のPRを担当しているから」。そんな会話の節々が聞こえると、下を向いて仕事に集中しているふりをしながらも、耳は思いっきり隣のテーブルに集中せざるを得ない。

話を聞いていると、どうやらヤオ・ミンが始めたナパのワイナリー事業についてらしい。ヤオ・ミンと言えば数年前に怪我が原因で惜しまれながらNBAを引退、上海に戻ってプロのバスケットボールのチームのオーナーだけでなく、様々な事業に手を出していると報告されている。大学に戻って勉強しているという話も。そんな傍ら、ナパワインの事業にも手を出していたとは、知らなかった。

「ヤオ・ミンの英語は完璧じゃないけど、会話するには十分」「大学に戻って勉強に励んだりして、頑張っている」など言ってるのを聞くと、もっぱらでまかせでもないようだ。

中国のワイン消費はここ数年ですごい伸びを見せていて、2005年から2009年にかけては倍になっている。その中でも海外産ワインの消費量は2008年から2010年にかけて、240%伸びた。中国人の間ではワインと言えばフランスというイメージがいまだに強いようだが、それを逆手にとって、カリフォルニアワインの参入機会は大きいと見たのがヤオ・ミンだったようだ。

中国市場をターゲットにするには、これ以上の理想的なセレブはいない。アメリカの国民的スポーツの一つとされているバスケットボールで驚異的な成功をおさめて、グローバルなスターになった。アメリカのワインと中国市場を結ぶにはこんなにふさわしい象徴的な人はいないだろう。

ナパと言えば、最近話題になっているKenzo Estate Wineryも、名前から容易に察しできるように、日本人オーナーのワイナリーだ。予約制のみで子供連れはだめなど、一般的にカジュアルでゆるい雰囲気のナパの他のワイナリーに比べて、敷居が高い。こちらも日本にテースティングバーをもうけたり、高級レストランにワインを卸したり、日本人消費者に向けたビジネスを積極的に展開しているようだ。

とりとめのない話になったけど、要は、思いもがけないところで中国人セレブが起業していたり、そんな人と直接仕事している人が近所のカフェにいたりして、面白いなと思ったと同時に、話を聞いていたら久々にナパに行きたくなったということでした。

2013年3月20日水曜日

口コミによって会社をクビになる日は来るのか


先日紹介したウーバー(Uber)だが、先週、サンフランシスコの本社の外で大きなデモが繰り広げられたという記事を目にした。

デモを主導したのは最近ウーバーの登録から外されたドライバーたちだ(正式な社員ではないので、「クビ」ではない)。会社から不当な扱いを受けたというクレームで、会社の文化を「アプリを利用したバーチャルなスウェットショップ」と表現している。

インタビューを受けたデモに参加していたドライバーによると、先月だけで500人のドライバーが登録を外され、その一方で、最近新たに登録されたドライバーの中にはプロのドライバーとして商業用の保険を持っていない"soccer mom"(子供のサッカーの試合の送り迎えに忙しい子育て真っ盛りのママのこと)や大学を卒業したての"kids"が含まれているという。

ウーバーの差別化はそのタイムリーさと高サービスなので、ドライバーのサービスの質は当然大きな要素となる。ユーザーからのレビューを受けての判断なのか、それ以外の問題もあったのかは不明だが、ウーバーが大きくなればなるほどこの手の問題は避けられないだろう。

一歩引いて、この話題について考えてみる。

今の世の中、いろんなサービスに対して口コミとレビューが入手できる。街角の小さいレストランだってオンラインのレビュー一つで閉店に追い込まれることもあれば、大繁盛して店舗拡大なんてことにも成りかねない。

今月はじめに紹介したAirbnbについても、レストランレビューの最大手のYelpも、料金とロケーションを除けば、レビューが最大の購買決定要因になる、と言っても過言ではないだろう。

今回のウーバーの例が象徴しているのは、このオンラインでの評価システムが誰にでも起こりうるということ。サービス業とか小売業だけでなく、わたしたち一人一人が労働力として、星で評価されるようになるかもしれない。

ただし、労働力の評価ってそう簡単には行かない。リソースが不足しているプロジェクトに配置された場合とリソースに余裕のあるプロジェクトの場合。チームのメンバーと打ち解けなかったり、複数の関連者との調整が必要な場合もあれば、極めて率直なタスクもある。また本人には能力があるのに、会社の方向性が急に変わってしまったために今までの仕事が無駄になってしまったなんてことも少なくはない。

レビューシステムが社会全体に浸透すればするほど、評価側もその重みをちゃんと受け止めて、真剣な姿勢でフィードバックを書かないといけない。

2013年3月13日水曜日

見知らぬ他人の自宅に泊まることに抵抗ありますか?


先月ハワイに行ってきたのだが、その旅行で一番印象に残った滞在場所(寝泊まり処)はプライベートビーチのついたチェーンホテルでも、景色の良い大型ホテルでもなかった。

それはオンラインでブッキングした見知らぬ誰かの家。着いた先はマウイ島の東端にある「ハナ」という町で、雨が多くうっそうと生い茂る緑に覆われた、昔ながらのハワイの風景が残るとても静かなエリアだ。アクセスが困難なことでも知られていて、空港から車で3時間、しかも道幅は狭く、車が一台しか通過できない橋が54カ所、600あまりのカーブが続く峠道を運転してやっと到着する。

住所の表示がなく、家を見つけるまでに10分ほどかかり、ついには何度も目の前を通っていた家であったことが発覚。見つけてからはすべてがスムースだった。ロックのかかった郵便受けに入ったカギを取って家に入る。入った途端に目の前には大きなリビングルーム、奥にはベッドルームと隣接したバスルーム。リビングの目の前にはバーベジュー・グリルの設置された広いバルコニーがあり、朝にはコーヒーを楽しめそうなアウトドア用のテーブルと椅子も用意されていた。フルキッチンに調理用具も完備。

一軒家の2階だけを借りたので1階には別の家族が泊まっていたが(入り口は別)、下からの音もほとんど聞こえなかった。

こんな隔離した町だけに、町にあるホテルは一軒だけ。しかも超高級ホテルで一泊500ドル以上はする。

でも値段以上に、印象に残ったのはその静けさとリラックス感。ホテルでありがちな、清掃の時間とか他の宿泊客をまったく気にせずに、静けさの中でハワイアンミュージックとか聞いていると、まるでハワイの自分の別荘にいるかのような幻想に陥る。

このブッキングのプロセスだが、いたって簡単だった。オンラインのサイトでサーチして、過去の滞在者のレビュー/評価をチェック、空き状況を確認したら、クレジットカードで支払いを済ませてブッキングが完了だ。その過程で詳細について質問があったので、直接オーナーにメールのやり取りを行ったが数日以上待たされることはなかった。(やり取りのすばやさもレビューの一貫に反映されるので、貸し主側は即時に対応してくれることが多い)

このように、使っていない自宅、アパートの一室や別荘を丸ごと借りるサービスを急展開しているのが、「airbnb」という会社だ。

この会社、日本語サイトも立ち上げて(翻訳は微妙)日本でのホストも600件ほど登録されているようだ。登録件数やユーザ数はアメリカに比べるとまだまだ見劣りするが、最低限の翻訳しかなされていないサイトを見ると、まだまだ力を入れてないことは明らかなので仕方ないとも言える。

ただ、そもそもこの手のサービスが日本で成功するかどうかという質問には、いろいろな意見がある。

「シェアリング」サービス一般的に、各マーケットの国民性や文化がその成功に大きく影響すると言われるが、これはコンテンツとかリンクとか写真の「シェアリング」ではなく、物理的な「住居」の「シェアリング」となる。従って、文化的な壁はさらに高い。どちらかというと、アメリカでは大きく成長した"Craig's list"のようなClassifiedサービスが日本でうまくいかなかったという議論に似ているような気もする。クラシファイドサイトでの大きなカテゴリーである中古品売買もルームシェアも、日本では受けいられなかった。

アメリカでは大学生のほとんどが学内の寮に住み、一部屋をもう一人のルームメイト、もしくはそれ以上とシェアする。高学年になると数人で一軒家を借りてシェアするなど、物理的な空間をシェアするのに慣れている。卒業して社会人になっても、しばらくお金が貯まるまではルームメイトと一軒のアパートをシェアすることが稀ではない。

日本では、そういう習慣はまったく根付いていない一方で、有名人が田舎のお宅にお邪魔して泊まらせてもらったり、有名人が海外のホストファミリーのところに泊まらせてもらって異文化体験をするなどのテレビ番組が人気なのも事実。誰もがそういう体験に憧れをもっていることは伺える。


日本人が日本国内を旅行するときには、あまりにも習慣の壁が高くて浸透しない可能性が高い。今や安くてきれいなビジネスホテルも増え、温泉を楽しめる旅館もさまざまな値段で楽しめるのに、何故わざわざ見知らぬ人の家に?というのが率直な反応だろう。

それだけに、airbnbのようなサービスにとっては、海外旅行者向けに節約というよりも異文化体験を売りにし、また、ルームシェアという概念に慣れた外国人が日本を旅行する際のオプションとしてポジショニングするのが、比較的受け入れやすいエントリー戦略かもしれない。


ちなみに去年末に行われたCEOのインタビューを読んでいると、airbnbのホストは、「異文化交流」とか「新しい交流を求めて」部屋や家を貸し出すことは少ないと言う。大部分は(少なくとも当初は)小銭稼ぎが目的だが、結果的に思わぬ交流や出会いが生まれ、ゲストと友達として連絡を取り続けることは少なくない。

日本人のホストに向けては、むしろ異文化交流の要素を全面に打ち出すのが効果的かもしれない。

2013年3月6日水曜日

ヤフーが巻き起こした在宅勤務論争


2012年7月にヤフーのCEOに就任して以来、次々と話題を繰り広げてきたMarissa Mayerだが、先週の発表は、今までで一番物議を呼んだ社内改革の一つと言えるかもしれない。

彼女自身、就任したときには妊娠5ヶ月、出産の2週間後には職場に復帰したというスーパーウーマン。就任以来、プロダクトの改善に留まらず、社員食堂(というと何か暗いイメージだが、実際は明るいカフェテリアというイメージ)での食事をすべて無料にしたり、iphoneを社員全員に配布したりと、シリコンバレーの代表企業では当然とされていることを積極的に取り入れ、「カルチャー」の改善にも余念がない。ここまでの変化は概ね好評で、少なくとも株価にはポジティブに反映されている。投資家には合格点をもらっているようだ。

今回のアナウンスは、いわゆる'work from home'と呼ばれる在宅勤務を禁止するというもの。今までの彼女の「カルチャー改革」の中でも、もっとも物議を呼んでいる一つと言えるだろう。

この'work from home'、日本ではまだあまり馴染みのないコンセプトだが、共働きが多く、リモートで勤務する環境に慣れているアメリカでは、週の数日もしくは毎日を自宅から勤務するという形態が稀ではない。日本の東京集中型と違ってビジネスの拠点が複数に分散しているアメリカでは、同じ国内でもニューヨークとシカゴとロスとサンフランシスコに分散したバーチャル・チームでプロジェクトを周していく、なんてことも多々ある。なので、メールや電話やスカイプ越しで顔を合わせずに仕事することに慣れている。

もう一つの背景は、評価方法にあると思う。日本ではまだまだ対面時間がとても大事で、さらに決定的なのは、それが仕事の評価に反映されることが多い。シリコンバレーの会社では、勤務時間が指定されていたり、歯医者で外出する場合は上司の許可が必要とか、そういう規則は聞いたことがない。それどころか、最近こっちではやっているのは「無制限の有給休暇」。根底にあるのは、自分に任された責任をきちんと果たして結果を出してさえいれば、それ以外の時間の使い方は個人に任せる、というカルチャー。結果がすべてで、仕事の評価も結果に基づいて行われるべき、という姿勢の反映したシステムだ。

ところが今回Marissa Mayerが打ち出したポリシーは、この自由奔放なシリコンバレーに逆流するものとも言える。

この決断の裏として憶測されているのが以下のような背景だ。

まずは、ヤフーではこの「在宅勤務」システムが乱用化されているのではないかという疑惑。つまり結果次第でそのプロセスは個人任せという信頼関係の上ではじめて成り立つこのシステムなので、そもそもの前提である信頼関係が崩れたら、システム自体も崩壊してしまう。

2点目は、この勤務体系の廃止をすることで、間接的なレイオフを狙っているのではという憶測。このポリシーの変更に賛同しない社員や毎日通勤することが不可能な社員が自主的に辞めれば、会社の課題となっている人件費の軽減が、低コストで実現できる。

この発表に、ヤフーの社員に限らず、あらゆる業界のあらゆる人たちが反応した。否定的な声を発したのは、共働きの両親(特にワーキングマザー)コミュニティーからRichard Brandson(Virgin Airの創設者でチェアマン)などのセレブリティまでに至る。

Marissa Mayer自身が出産2週間で職場に戻ったワーキングマザーだが、自分のオフィスの横に育児書を設立し、子供を連れてきているらしい。会社のお金ではなく自己負担で作ったというものの、そんな優遇された環境が持てる社員は他にいない。その不公正さがさらに不満の声を高めている。

一方、既存の社員は(おそらく在宅勤務を必要としない既存社員に限られると思われるが)おおむね好意的に受け取っているようだ。それぞれの事情は理解しようとするものの、やはり机を並べてホワイトボードに絵を書きながら議論するのと、音質が悪い電話会議で時間を気にしながら議論をするのを比較すると、明らかに生産性に違いが出る。株価は上がりつつあるものの、プロダクトの質やマーケットシェアではまだ競合他社に引けを取り、厳しい状況が続くヤフー。そんな状況で暢気に在宅勤務をしている場合ではないだろう、という危機感もあるようだ。

ヤフーの発表から1週間ほどたった今日、大手電気ディスカウントチェーン店であるBest Buy が、似たようなアナウンスを行った。今まで、在宅勤務に上司の許可は不要だったが、今後は上司の許可を必須とするという発表をした。「今までは結果のみを重視してきたけど、今後は結果だけではなくそれにたどり着いたプロセスも重視したい」とのこと。

行くところまで行き着いた観のあるシリコンバレー企業の個人主義文化だが、「基本に戻れ」的に逆流してきているのが面白い。

2013年3月2日土曜日

ゲーム・アプリも教育のためだったら良し?

英語で「toddler」とか「Preschooler」と言うと、赤ちゃんでもなく幼稚園児でもなく、よちよち歩きの2歳から4歳くらいの幼児のことを指す。言葉を話し始め、指示を理解するようになり、何事にも興味を示して好奇心旺盛になってくる年頃だ。この幼児をターゲットにしたスマートフォン、タブレットの「教育」アプリ開発が注目を集めている。

子供向けゲームと言えば拒否反応を示す親が多いが、現実的には今の社会と環境でゲームやスマートフォン、タブレットから子供を完全に切り離すことはもはやできない。親である大人が片時も携帯やタブレットを離せない生活になってしまった以上、家族の時間からそれを排除するのはどんどん難しくなっている。家庭内での使用を禁止しても、友達の家に行けばみんなタブレットで遊んでいる。だとしたら、どうやって最適コンテンツを選別し、子供がそれらのデバイスに触れている時間を最大限に活かすことができるか?というのが次の課題になってくる。

ちなみにアメリカのリサーチ会社NPD Groupの発表によれば、北米の2歳〜17歳のうち、91%はゲームを楽しんでいるという。

アメリカで人気がある幼児向けゲームと言えば、Angry Birds(教育という分野には属さないが)やディズニー、ThupのMonkey Preschool Lunchbox, Duck Duck MooseのWheels on the Busなど、大手からスタートアップが広く混在している。

また、Leapfrogのように幼児向けのおもちゃで大手の会社も、独自のデバイスをローンチするなどしてバーチャルな世界に参入しようとしている。

この分野での日本とアメリカの違いは何か。アメリカの方が有料のものが多い印象を受ける。一方で日本のアプリは、無料(少なくともデフォルトでダウンロードされる限定された機能については)にしているものが多いように見られる。つまり、アメリカの消費者の方がそれらのゲームに対してお金を出す価値を見いだしているのかもしれない。無料のものには広告が伴うのがお約束だが、広告というのは当然利用者の目を引きやすいようにデザインされていて、直感的に反応する子供は特に目が奪われやすい。さらに問題なのは広告の質で、日本のいくつかのアプリを使ってみると、まったく無関連もしくは不適切な大人向けの広告が出てきたりするのだ。

それだったら1ドルや2ドル出した方が良い、というのには同感できる。

アメリカでのこの手のアプリの一番の使い道はロードトリップでの車中。日々の通勤でも、週末の気軽な旅行にしても、この車社会では、数時間から一日近くかけてドライブすることは少なくない。飽きやすい子供相手(特に幼児)を歌や読書で30分以上エンターテインするというのは、不可能に近い。

子連れで飛行機で乗るときにも、必需品となっている。

先日外食に行ってある光景にびっくりした。同じレストラン内に大人子供含めて10人を超える大きなグループがディナーをしていたのだが、幼児を含めて子供たちは一人一台iPadを持ち、全員が下をうつむいてそれぞれのゲームに没頭している。一方の大人たちは、リラックスした様子でワインとおしゃべりを楽しんでいる。

そういった食事時の光景には賛否両論あるが、たまには騒ぐ子供を静まらせながら肩身の狭い思いをしないで、ゆっくりと会話を楽しみながら外食したいというのが親たちの本音だろう。

どんな統計値よりも、幼児・子供向けアプリの今後の可能性を印象づける象徴的な光景だった。

2013年2月26日火曜日

今度の風雲児は、ペイメント業界のスクエア

クレジットカードやモバイルペイメントがここまで普及した日本でも、屋台とか町の商店街では現金決済のオプションしかないことがほとんどだ。

アメリカでも状況は同じで、はやりのフードトラック(いわゆるランチやスナックの販売車)や地元の家族経営のレストラン、街角のキオスクでは、支払いは現金のみということが多かった(少なくとも最近までは)。

小売決済はカードが主流なのに、個人や個人事業主がカード加盟店になるのはむずかしい。仮に、加盟店になれたとしても、カード決済端末は高く、ランニング費用もかかる。よって、25ドル以上の購入に限りカード利用可など、金額を決めている店も少なくない。

そんな不便さと非効率を解決しようと勢いを増しているのがサンフランシスコ発の会社、スクエアだ。最近特にサンフランシスコのあちこちに出没するフードトラックやファーマーズマーケットでは、ほとんどの業者がスクエアを取り入れているように見える。

Squareとは、スマートフォンやタブレットに小型のカードリーダーを取り付けてクレジットカード決済を可能にするサービスだ。また消費者向けには、Square Walletというプロダクトもある。これはモバイルペイメントアプリで、Square Walletを搭載したスマートフォンを持って店舗に入ると、スマートフォンの存在が認知されて、利用者が店舗で支払いをすると、Square Walletに紐づけられたカードから引き落としが行われる。レジではSquare Walletで登録したユーザーの写真が表示されるので、店員は顔写真を確認して支払いを受け付けられる。

日本だと、昨年楽天が同じようなサービスをローンチして話題になった。

アメリカでも、もちろん競合が黙っていないわけにいかない。Groupon、ペイパルなどの大手企業から、スタートアップまでさまざまな企業がこのエリアに参入している。

では、何故スクエアが有利なのか?

もちろん創業者がツイッターやフォースクエアに関与したジャック・ドーシーで、2億ドルを調達した最近のラウンドでの時価評価は32億ドル、といったバズがマーケティング効果をもたらしていることは間違いない。特にペイメントと言えば信用が何よりのサービスなので、超有名な創業者に超有名な投資家がバックアップしているということは、会社やサービスの信用度に大きな影響を与える。

加えて、積極的にマーケティングを繰り広げているようだ。最近はゴールデンタイムの大手チャンネルで、テレビコマーシャルを良く見かける。

ただそれだけではない。

小売業者の観点から言うと、何よりの魅力はその課金精度のシンプルさ。カードをスワイプした場合は2.75%、カード番号を手打ちで入力した場合は3.5% + $0.15がトランザクションごとにかかる。決して安いとは言えないものの、月額費や早期解約のペナルティーがないなど、総合的には多くのサービスより安いと受け取られているようだ。

一方で不満が集まっているのは、不正を防ぐためのポリシー。スクエアのサービスでは、カード利用者のクレジットヒストリーチェックなどを行わないため、ある一定額を超えたカード不在の購入(カードのスワイプではなく番号を手打ちした場合で、数千ドルを超えた購入)の場合、金額が数日以上振り込まれない。ただし、あくまでも数ドルのスナックを売るフードトラックなどが対象であれば、そういうケースは稀なのかもしれない。

もう一点話題となるのが、そのカスタマーサポートの薄さ。まずはウェブサイトから電話番号が見つけづらい。見つかった番号にかけても、留守電で、折り返しの連絡は数日後になる。手厚いカスタマーサポートを売りにする伝統的な会社ではないものの、やはり先述の「信用」に関わってくる業界だけに、ここは改善を期待したい。

消費者の観点からすると、利点はとてもわかりやすい。今までクレジットカードが使えなかったところで利用が可能になる。また、Square Walletを使えば、カードを持ち歩かずに携帯一台ですべての支払いが済む。それに加えて、ロイヤルティーカード機能(お買い物スタンプのようなもの)や検索機能も備えているので、買い物途中に時間が空いたときにお茶ができるカフェを近所で探したりできる。ちなみにSquare Walletはすでに20万店舗で利用可能で、特にサンフランシスコはサービス発祥の地であるだけに、スクエア加盟店が多く見つかる。

会社の昨年の一番と言ってもいいマイルストーンは、スターバックスとの提携だ。2012年秋からSquareはスターバックスの全米7000店においてクレジット・カード、デビット・カードによる支払い処理を担当することになった。Squareで支払いをするユーザーはiPhoneまたはAndroidのSquare Directoryで、近所のStarbucksの位置を知ることができる。(ちなみにスターバックスは2500万ドルに上るシリーズDの投資も行った)。

スターバックスのカードと言えば、昨年のクリスマスにもっとも売れたギフトカード。数人に一人のアメリカ人がクリスマスのギフトとして、スターバックスカードをもらったという統計が見た。わたし自身ももらったし、結局気が変わったものの、お世話になった人にあげようとも考えていた。今までなら現金がない場合、消費者はクレジットカード、スターバックスカード、スターバックスアプリでの支払いがオプションとしてあった。そこにスクエアが加わったことで、スクエアはある意味クレジットカード機能とアプリ機能の両方を兼ね備えることになる。ギフトカードをスクエア経由で使うことはまだできないようだが(少なくともわたしのAndroidでは、使えなかった)、そのうち複数のカード(クレジット、デビット、ギフト)が使えるプラットフォームとして、ますます用途が増えていくものとされる。

他の多くの成長中のスタートアップと同様、スクエアの2013年の課題はアメリカでのネットワーク(小売業そして消費者ともに)を広げていくとともに、海外での成長だと言う。ペイメントはさまざまな規制があり、各地でのクレジットカード会社とうまく協調していかないといけない。他のサービスやプロダクトのように簡単にスケール化できないだけに、そのあたりをどう解決していくのかが注目だ。

2013年2月12日火曜日

2013年のPinterest。このままの勢いを続けられるのか、もしくは昨年のInstagramのように失速してしまうのか。


先日ファッションとシリコンバレーという記事を書いたが、そこであまり触れなかったPinterestについて。画像を使ったSNSということで去年から一気に注目を浴びるようになった。それもそのはず、ユーザ数とトラフィックが急激な伸びを見せて、特に小売り業や大手ブランドではないサイトへの大きなトラフィックの原動力となってきている。

仕組みはフェースブックやTwitterの’いいね!’や’retweet'と似ていているが、ユニークなのはその対象コンテンツが画像ということだ。ウェブブラウジングをしていて気に入った洋服、写真、家具、その他何でもイメージがあれば、’Pin'して自分独自のオンラインのスクラップブックを作る('board'と呼ぶ)。それを他の人に公開すると同時に、他の人のスクラップブックをフォローすることもできるので、友達、同じ趣味を持つ人、また、会社がオフィシャルに立ち上げたアカウントをフォローして、最新商品やコーディネート例を参考にしたりできる。家のインテリアデコレーションの検討、結婚式のプランニングをするときのアイディア集めなど、画像やイメージでの情報集めが威力を発揮するケースで、特に好んで使われているようだ。

Nielsenのレポートによると、今までのFacebook, Twitter, Linkedinというソーシャルサイトのビッグ3に、2012年にはPinterestがビッグ4として名乗りをあげた。2012年にもっとも伸びを示したのがPinterestだからだ。

ユニークPCユーザ数で1,047%の伸びを記録。ちなみに第2位はGoogle Plusで80%だったから、いかに飛び向けた数値かがわかるだろう。モバイルアプリのユニークユーザ数は1,698%、モバイルウェブのユニークユーザ数は4,225%という、驚異的な伸びを示した。ちなみにモバイルアプリの第二位はTwitterで134%、モバイルウェブはRedditで153%と桁違いで引き離している。

ソーシャルサイトにとっては、多くの人がサイトを訪れることは重要だが、各ユーザのエンゲージメントは同様に成功のカギとなる。そのエンゲージメントの指標となるminutes spent(サイトやアプリ上で過ごした時間)では、モバイルアプリでは6,056%の伸びを示して、第4位となった。

特徴的なのはユーザーの大部分が女性ということ。アプリユーザの84%、モバイルウェブユーザーの72%、PCユーザーの70%が女性という圧倒的な数値になっている。

女性ユーザーが中心というのも直感的に納得がいく。'cars and motorcycles' などを含んだ20あまりのカテゴリーに分かれているものの、画像を使ってビジュアル的にアピールするプロダクトなので、必然的に利用されるのはファッション、デザインとかインテリアデザイン。アーティスティックで洗練された写真がそのまま商品購入につながるのだから、見た目に楽しいだけでなくマネタイズにもつながる。

ユーザーの一人としては、検索機能を充実してほしいとか、もっと細かいサブカテゴリーを提供してほしいと思うわけだが、pinterestの考えている方向性とは一致しないのかもしれない。

Pinterstの一番の目的は、ユーザーが新しいコンテンツや商品を発見する場の提供だ。もし検索機能を充実させたり、細かいサブカテゴリで検索を絞り込んだら、ユーザーは探しているものを見つけてそれで「検索」という目的は果たされてしまう。となると究極のところ、グーグルの画像検索と変わらない。例えば結婚式のプランニングでどんなイメージ/テーマにしたいかわからないときに、とりあえずいろんなアイディアを見てみたい、というときにPinterestが使える。ウェディング雑誌をめくるように、pinterestの'board'をブラウズするのだ。つまり検索機能を充実するということは、逆にこのサービスのユーザー・プロポジションに反する可能性がある。

昨年、楽天が$50 millionの投資を行って日本でも有名になったPinterest。今後どのようにプロダクトを充実していくのか、どのようなポジショニングを行うのか、そしてこの勢いを2013年も続けられるのが、目が離せない。ちなみに2011年に一番の伸びを見せたInstagramだが、Nielsenの2012年トップ10のリストからは漏れている。

2013年2月5日火曜日

ファッションとシリコンバレー


ファッション関連のビジネスと言えば、いまだにニューヨークが主要拠点だというイメージが強いが、最近はシリコンバレーに拠点を構えるファッション関連のスタートアップが増えてきている。

ファッション関連のビジネスと言っても、単にオンラインショッピングを提供するサービスではなく、ソーシャル性を組み込んだり、伝統的な小売業のトレンドを予測するなど、斬新なアイディアを実装したサービスが次々と生まれている。

例えば、modcloth

ファッション業界は、毎シーズンのトレンドや売れ筋を正確に予測するのは難しい。一方で、全国的、世界的に大規模で展開しているブランドにとっては、商品が店頭に並ぶ前に需要を予測、それに見合うだけの大量生産を始めないと供給が追いつかない。ある程度シーズンのトレンド予測はつくものの、リスクが高い賭けのようなものだ。

一般的にアパレル商品のマージンは高いと思われがちだ。確かに通常価格で店頭で売れれば60〜80%以上と高いが、アウトレットに送られた途端のそのマージンは30%に落ち、さらにTJMaxsなどに代表されるディスカウント店に送られた途端に10〜20%となる。いかに通常価格で売りさばくかが、売り上げ高の大きなカギとなる。

そんな業界のチャレンジを克服するために、今年のトレンドや売れ筋を試すサイトを立ち上げたのがmodcloth.comだ。大量生産を始める前に試作品としての商品をオンサイトで販売し、ユーザーの反応をモニター。反響の大きさを受けて、実際のプロダクションに入る商品を決める。

他にファッション関係と言えば、当然のごとく、Pinterestがあげられる。去年の前半ほど話題にのぼることがなくなったものの、いまだにマーケティングツールとしてファッション業界だけでなくインテリアデザイン、アートなどいろいろな観点で目が離せない。

そして、Palo Alto発で"the most popular fashion site on the Internet"と言われているのは、Polyvore

誰もが自分のファッションセンスを表現できるプラットフォームを、というコンセプトで始まったサービス。オンラインストアなどから「切り抜いた」画像を使って、誰でも洋服やアクセサリーのコーディネートのアイディアが作って、他のユーザーに共有できるサイトだ。ファッション好きな女性ユーザーの自己表現の場として人気を集めるだけでなく、大手ブランドが自社商品を使ったコーディネート例を宣伝する場となっている。サイトを経由して商品の購入もできるので、ユーザ数やトラフィックだけ集めたものの収益に結びつかない多くのスタートアップと違って、確実にマネタイズできることを証明している。毎月1,300万人以上のユーザーを抱え、4,500万以上のイメージ(コーディネート例)が作成されているというから、その数値からもユーザーのエンゲージメントが高いことがわかる。

一方、一見良くあるようなオンラインショッピングのサイトに見えるが、特定のユーザー層と商品にターゲットを絞っているOne King's Lane もサンフランシスコ発だ。高級家具、インテリア関連の商品や台所用品などをディスカウント価格で提供している。昨年12月にはSeries Dとして50 millionドルを集め、設立以来、合計117 millionドルの投資を受けたことになる。2012年の予想年間売り上げは200 million ドル、毎日6百万人のユーザーがサイトを訪れる上でのさらなる追加投資だから、今後も積極的な展開を進めていくのは明らかだ。

扱っている商品はすべて高級ブランド、ビンテージ商品や、有名デザイナーのものだったりするところが他サイトとの差別化と言える。今までの高級家具と言えば、数が限られていたり取り扱い店が限られていたので、買い手にとっては必然的に選択肢が限られていた。デザイナーにとっても、大手チェーンでない限りは、ディストリビューションのネットワークは限られていて、売れ切らないリスクは高かったのだと思われる。そんな買い手と売り手の距離を縮めたのがOne King's Laneだ。サイトを見ると、ディスカウントという安売りしているイメージはまったくなく、洗練された印象だ。また、2ドルのコップから数千ドルの高級家具まで売られているので、家具以外の気軽な買い物もできる。

前述のmodclothのように、伝統的なファッション業界のチャレンジを克服するため、ファッションショーなど特定の業界人の反応ではなく、実際の顧客が何を買い求めるかのトレンドをより正確に予測するサイト。また一方でPolyvoreのように、ユーザーから能動的に、今のファッションを定義させるサイト。そしてPinterestのように、それらのサイトにトラフィックを呼び込むサイト。一見競合関係に陥りそうな各サービスだが、いまのところはうまく共存しているようだ。実際昨年のPolyvoreの発表によると、PolyvoreにとってはPinterestが2つ目に大きなトラフィックソースだそうだ。Pinterestにとっても、Polyvoreはもっとも"pinned"されたサイトの第6位にランクインするとのこと(2012年3月のデータ)。

ところで、これらのサイトを見ていると、日本のファッション雑誌を思い出さずにはいられない。日本の雑誌を見るたびに関心するのが、その実用性とか具体性。例えば30日着回し術とか、春から秋への着回し術とか。アメリカのファッション雑誌は半分以上が広告で、実際に自分が着られそうな服はほとんど見つからなかったりする。日本の雑誌も半分以上広告だったりするが、広告を広告のように見せないところがすごい。着回し術の特集だと思っていたら、実はすべて同じブランドの服で、そこがスポンサーしている特集だったりするけど、それを思わせないような構成になっている。シリコンバレーのスタートアップが今後使えるアイディアが日本にはすでに存在しているのかもしれない。

2013年1月31日木曜日

利用者も投資家も注目する、タクシー業界の風雲児


アメリカは車社会だというのは誰もが知っている。が、サンフランシスコをはじめとする都市で特に、最近はカープールとかカーシェアリングだとか、もっと公共の交通手段を使おうとかっていう動きが盛んになっている。理由としては様々で、1)路駐が困難な場所であればあるほど、駐車場が高い!サンフランシスコ街の中心に行けば行くほど、駐車場所がない上にお金がかかるので誰も運転したくない 2)坂が多くて細々した作りになっているので、渋滞がおきやすい。3レーンあっても両脇はFedexのトラックとSafewayのトラックにふさがれていて、結局1レーンしか空いていない何てことも、しょっちゅうあり。3)一方通行が多いので、地図で見た距離よりも実際の運転距離は長かったりする。そして最後に、4)環境のため。経済的理由と合わせて環境問題を理由に車を持たずにカーシェアリングサービスを使う人も結構いる。公共機関を使って通勤している人には、会社から補助が出たり、税金がほんの少しだけど免除されたりする得点もあります。

ちなみに1点目について余談ですが、2013年1月から、サンフランシスコでは財政難のために日曜日の路駐も課金するようになり、相当住民の反感を買っています。こんなことになるんだったらTwitterへの給与税の軽減措置なんて与えるべきじゃなかったなど、ちょっと無理のある議論まで出ていますが、気持ちはわからないでもない。日曜は教会に行く人が多かったり、そもそもビジネスは休みという意味で課金しなかったというのが歴史だと想像できますが、お店が7日営業になったら今は路駐もお金を払って当然ということなんでしょうか。


話を戻して、Zipcarをはじめとするカーシェリングはすっかり根付いてきましたが、最近この辺で話題になっているのはタクシーの代替もしくはタクシーのシステムを向上させたオンデマンドの送迎サービスです。


今のところ一番目立っているのは、Uber(ウーバー)。最近と言っても2010年設立の会社なので、そんなに新しくはありません。携帯で乗りたい場所を登録すると、数分で黒いセダンのハイヤーがその場所に迎えに来てくれる、オンデマンド送迎サービスです。タクシーがなかなかつかまらなかったり、タクシーよりもゆったりとしたかったりした時に使え、事前にクレジットカードの登録をするのでアプリから支払いもすべてできます。事前予約はできないので、その場で呼んで数分待つことになりますが、個人的な経験からすると数分で必ず来てくれます。ドライバーへのフィードバックシステムもあるので、感じの悪いサービスに当たることもないというのも大きなメリット。ただほとんどの場合、値段はタクシーよりも高い、というのは驚きではないでしょう。


Uberの何よりのチャレンジは、タクシー業界との摩擦。想像の通り、タクシー業界からは猛烈な抵抗を受けていて、サンフランシスコのタクシードライバーの団体やシカゴのタクシー会社から訴えられていて、規制機関はUberのサービスの合法性を討議中。


また、その課金体系もさまざまな議論を呼んでいます。この大晦日にタクシーの需要が爆発的に高まることで有名なニューヨークで、需要に伴って料金が釣り上がる課金体系を発表したところ、ネット上でユーザーとCEOとの熱い議論が繰り広げられた。一部のユーザーは需要と供給モデルを利用したあくどい商法だと文句。一方のCEOは、料金をあげることによってドライバーのインセンティブをあがり、需要を満たすだけの十分な供給を確保するんだから、結果的にユーザーの利益につながるモデルだと反論。最終的には、「Uberは万人のためのサービスではなくて、プレミアムを払っても快適な移動手段を確保したいという人のためのサービスなんだから、それに合意しないなら使わなければいい」という発言までに達した。


さて、その一方でタクシー業界と仲良くやっていこうというのが競合のFlywheel。こちらも同じく2010年に創設したが(2012年後半まではCabulousというサービス名で展開していた)、アプローチはUberと180度違う。既存のタクシーシステムを改善して、タクシー業界も利用者もwin-winシチュエーションに持っていこうという戦略だ。タクシーやドライバーを直接保有、雇用しているわけではなく、タクシー会社や個人ドライバーのパートナーとなり、既存のテクノロジーを使ってオペレーションの向上を目指す。値段についても、通常のタクシーサービスの利用に比べて60セント高いだけなので、Uberに比べたら断然割安感がある。


アプリ経由でタクシーを呼び、タクシーの回転率の向上を目指す。ただ今現在はドライバーのフィードバックや評価システムがないので、ドライバーにとっては利用者へのサービス向上するためにいかにインセンティブを持たせるかも課題になってくる。Uberはドライバーの教育だとか評価システムを重視しているので、その差別化が彼らの高い料金体系を正当化する理由にもなっている。


また、話題になっているというのは、利用者の間だけではなくて投資家の間でも注目されている、ということです。

Uberは2011年末に設立18ヶ月にして、Series Bのファンディングで32ミリオンドルをMenlo Ventures, Jeff Bezos, Goldman Sachsから調達した。それ以前の調達金額と合わせると、合計50ミリオンドルをすでに集めたことになっている。


Flywheelは、昨年の夏にシリーズAで8ミリオンドルの追加投資を得て、創立以来9ミリオンドルの投資を得たことになった。この8ミリオンを使って、新たなマーケットの開拓に積極的に取り組むと意気込んでいる。

新マーケットへの進出と言えば、Uberは海外マーケットへの進出を積極的に視野に入れている。現在はヨーロッパが中心だが、日本も次の視野に入っているようだ。公共機関がすでに十分発達している日本マーケットでどのような進出戦略を打つのか楽しみだ。