2010年6月21日月曜日

次のツイッターは誰か。カギはソーシャルゲーム、それとも地域情報?

シリコンバレーの動きは早い。去年世間を騒がせたTwitter (ツイッター)はメインストリームになりすぎて鮮度が落ち、昨年ほど騒がれることはなくなった。では次にツイッター並みに世間を騒がせるのは誰か、ということに注目が集まる。

最近急成長の会社は?と言われて、まず名前が思い浮かぶのが Zynga(ジンガ)FourSquare(フォースクエアー)だ。

ジンガとはサンフランシスコに拠点を持つソーシャルゲームの会社で、わたしの周りでもここに転職する人がやたらと多いこともあり(それだけ急激に拡大している)、最近やたらと名前と聞くことが多い会社の一つだ。フェースブックにアカウントを持っている人だったら、一度は友達の使うジンガのゲームアプリからメッセージを受け取ったことがあるかもしれない。

ジンガのビジネスモデルは、ソーシャルネットワーク(主にフェースブック)にあってこそ初めて成り立つという、「ソーシャルネットワーク依存型」だ。いまやジンガ自体の世界中のアクティブユーザーが月間2億4千万人を超えていることを考えると、フェースブックにとって大きな存在に成長しつつあることは間違いないが、それでもフェースブックありきのジンガという構造は変わらない。

その証拠として、両者の2008年11月以来の月間ユーザー数の推移を見ると(以下のグラフ)、フェースブックの伸びに引きあげられるようにジンガのユーザー数も伸びているのがわかる。ジンガの成長の裏にはフェースブックの成長が大きく貢献しているのだ。



では「ソーシャルゲーム」とは一体何者なのか?

ジンガの代表的なゲームFarmVille(ファーム・ヴィル)を例にとってみよう。このゲームでは、ユーザーが農地を与えられて野菜を収穫しながら資産を増やし、その資産で新たな畑を買ったり、農耕機具を買ったりして、さらに資産を増やしていく。その拡大の過程でフェースブック上の友達を農民として近所に招いて、単体の農家から農村を築いていくのだ。つまり一人で自分の資産を増やしていくのではなく、ソーシャルネットワーク上の友達を利用することでさらに高得点を勝ち取れる仕組みになっている。最近ではフェースブック上でジンガ関連の招待メッセージがスパムのように溢れかえり、フェースブックが最近禁止するという措置を取るまでになった。大きな影響力と急増するユーザー数の証とも言える。

このジンガ、今日の上場価格は50億ドルにものぼると噂されている(ソース: SecondShares.com

この新しい概念「ソーシャルゲーム」、中国ではすでにビジネスとして確立された分野で、4つの会社がすでに上場を果たしている。収入の合計は33億ドルにのぼり、マージンは50%を超えるというもっともおいしいビジネスの一つとされているのだ。この例からもわかるように、この分野が魅力的なのは異様に高いマージンが狙えるという点。コンピューターゲームや映画のように精密なグラフィックが売りなわけではなく、漫画のような単純な動きのキャラで十分とされるので、ゲームの開発費が莫大にかかるわけではない。また、一端起動に乗れば運営費が大してかかるわけでもない。

実際ジンガも、同じコンセプトをリサイクルして新しいゲームとしてリリース、ゲームのラインアップを増やしている。農村で成功したら、次は漁村(フィッシュビル)、そしてカフェ経営(カフェ・ワールド)やマフィア組織(マフィア・ウォーズ)、など要は同じ仕組みでバーチャルグッズを購入、ソーシャルネットワークを通して友達と連携することでビジネスを拡大していくという単純なモデルを、設定を少しだけ変えて繰り返しているのだ。

ではこのモデル、おいしいだけでリスクはないのだろうか?

最大のリスクは、ソーシャル・ゲームという他社のリソースの上に成り立つという危うさだ。フェースブックの乗り入れ停止処置のよ うに、SNSのポリシー次第で運命が左右されてしまう。それはギブ&テイクの提携モデルの危うさでもあるが、ソーシャル・ゲームが受ける痛手はさらに大き い。

また、真似しやすいということもリスクの一つとして上げられる。ゲーム自体とてもシンプルだし、高度な技術を駆使しているわけでもないので、誰でも簡単にコピーできる。

また最近ジンガを悩ませているのは、そのビジネスモデルに対する批判的な報道だ。小額だからいいかと少しずつバーチャル・グッズを購入していくうちに、気づいたら高額使っていたというユーザーからの不満の声が増えている。わかりにくい課金体系や不透明さに批判が集中するのは、家で時間を過ごすことの多い主婦ユーザーをターゲットの一つとしているからかもしれない。

「ソーシャルゲーム」に加えて、もう一つの今年のトレンドは「ローカル(地域情報)」。そしてその代表が、ニューヨークに拠点を構える 「foursquare」と呼ばれる位置情報をもとにした、iphoneのアプリから人気に火がついたサービスだ。

GPSつきのスマートフォーンを使って、自分のいる位置、特にレストランだったりカフェだったりバーだったり、もしくは花屋でもコンビニでもいいんだけど、何か目印になる場所にいるときに「自分がここにいる」という印を残すもの。これを「チェックイン」と呼ぶ。

この「チェックイン」をするたびにポイントが与えられ、新しい場所を発見したり、遠いところでチェックインしたら特別な「バッジ」が、また12時間以内に10回チェックインしたらこれまた特別な「バッジ」がもらえたりする。「バッジ」とは勲章のようなもので、ステータスとしてどれだけバッジを稼いだかを友達に見せびらかすことができる。まるで子供をあやすみたいにご褒美がどんどん与えられるので、うれしくなってさらにはまっていくという仕組みになっている。

わたしも最近サンフランシスコでブランチに立ち寄ったカフェで「チェックイン」したら、大して広くない店内(せいぜい30人くらい)で、すでに3人がチェックイン済みでびっくりした。

一番多く「チェックイン」した人には、「Mayer」(市長?)という照合が与えられ、そのレストランから特別なサービスが受けられたりする。また5回以上チェックインした人にはコーヒーが無料になったり、デザートがサービスになったりと、地元のビジネスにとっては今までオンラインで接触することの難しかったお客さんを直接呼び込む協力なツールとなっている。

このfoursquare、今年の3月初め時点で50万ユーザー以上を確保、140万のロケーションが登録、そして1550万の「チェックイン」がすでになされている。そしてその成長はいまや携帯のアプリ経由だけでなく、ウェブサイト経由に拡大している。このウェブサイトにもっともトラフィックを呼び込んでいるのは、またもやFacebookだ。33%のトラフィックがFacebook経由となっている。Google 22%, Twitter 8%を合わせても届かない影響力だ。これまたソーシャルネットワークがトラッフィックドライバーとしてますます影響力を強めている裏付けと言えるだろう。また、そのサービスや会社に関連する検索数がどれだけ伸びているのかというのも良く認知度の目安として使われるのだが、その検索数の伸びも目覚ましい。



以上のグラフで緑の線は、アメリカ市場での総検索数に対して foursquareに関する検索数の割合を示している。 今年2月に0.00032%まで急激に伸び、その後少なくとも数週間は、安定しているように見える。0.00032%というととてつもなく小さい数に思えるが、アメリカ全体での日々の検索数が数億に上ることを考慮すると、実際にはかなりの絶対数になる。

一方で赤い線は、foursquareへのトラフィクの伸びを示している。アメリカ市場全体でクリック数の中で、foursquareに流れるトラフィックの割合を示したものだが、こちらからもトラフィックが急激に伸びているのが顕著だ。

この’foursquare’、最近ではハーバード大学、ウェールストリートジャーナル、ペプシと連携したりして、着実に認知度を高めている。

このグラフのデータが集められた直後の3月後半には、10日で10万以上の新規ユーザーを獲得、結果的に60万ユーザーにまで達したというデータも出ている。

また最近のFoursquareの発表によると、チェックイン数は2,200万までに達したとのこと。まだまだTwitterの5,000万Tweet(1日あたり)には及ばないものの、1年足らずの会社にしては快挙と言えるだろう。また、 一日中同じ場所にいても何回でも投稿できるtwitterと違って、物理的にその場にいかないとチェックインできないことこのサービスでは、一日あたりに可能なチェックイン数も必然的に限られるので、Tweet数に劣るのは当然と言えば当然。

Foursquareも前述のジンガと同様、IphoneやFacebookといった他の会社のプラットフォームを基盤に成長しているプロダクトだということ点が特徴だこれは賢い反面、リスクでもある。アップルがアプリの審査基準や課金体制を変えたり、フェースブックがポリシーを変えたら、打撃を受けるのは目に見えている。

これまたジンガのモデルと共通しているのが、真似しやすいということ。特に複雑な作りでもないし、インフラに大した投資が必要なわけでもないので、プロダクト的に真似するのは難しくはないはずだ。実際、ジンガが手がけるソーシャルゲームは国内国外ともに競争が高まっている分野の一つだし、Foursquareのような地域情報系についても、アメリカ国内だけでもYelp, Gowallaと言った強力プレーヤーがすでに存在している

この2社のいずれかが次のツイッターとなるのか、もしくは関連分野の競合がその地位をさらうのか、今年後半の各社の動きが注目される。