2013年3月13日水曜日

見知らぬ他人の自宅に泊まることに抵抗ありますか?


先月ハワイに行ってきたのだが、その旅行で一番印象に残った滞在場所(寝泊まり処)はプライベートビーチのついたチェーンホテルでも、景色の良い大型ホテルでもなかった。

それはオンラインでブッキングした見知らぬ誰かの家。着いた先はマウイ島の東端にある「ハナ」という町で、雨が多くうっそうと生い茂る緑に覆われた、昔ながらのハワイの風景が残るとても静かなエリアだ。アクセスが困難なことでも知られていて、空港から車で3時間、しかも道幅は狭く、車が一台しか通過できない橋が54カ所、600あまりのカーブが続く峠道を運転してやっと到着する。

住所の表示がなく、家を見つけるまでに10分ほどかかり、ついには何度も目の前を通っていた家であったことが発覚。見つけてからはすべてがスムースだった。ロックのかかった郵便受けに入ったカギを取って家に入る。入った途端に目の前には大きなリビングルーム、奥にはベッドルームと隣接したバスルーム。リビングの目の前にはバーベジュー・グリルの設置された広いバルコニーがあり、朝にはコーヒーを楽しめそうなアウトドア用のテーブルと椅子も用意されていた。フルキッチンに調理用具も完備。

一軒家の2階だけを借りたので1階には別の家族が泊まっていたが(入り口は別)、下からの音もほとんど聞こえなかった。

こんな隔離した町だけに、町にあるホテルは一軒だけ。しかも超高級ホテルで一泊500ドル以上はする。

でも値段以上に、印象に残ったのはその静けさとリラックス感。ホテルでありがちな、清掃の時間とか他の宿泊客をまったく気にせずに、静けさの中でハワイアンミュージックとか聞いていると、まるでハワイの自分の別荘にいるかのような幻想に陥る。

このブッキングのプロセスだが、いたって簡単だった。オンラインのサイトでサーチして、過去の滞在者のレビュー/評価をチェック、空き状況を確認したら、クレジットカードで支払いを済ませてブッキングが完了だ。その過程で詳細について質問があったので、直接オーナーにメールのやり取りを行ったが数日以上待たされることはなかった。(やり取りのすばやさもレビューの一貫に反映されるので、貸し主側は即時に対応してくれることが多い)

このように、使っていない自宅、アパートの一室や別荘を丸ごと借りるサービスを急展開しているのが、「airbnb」という会社だ。

この会社、日本語サイトも立ち上げて(翻訳は微妙)日本でのホストも600件ほど登録されているようだ。登録件数やユーザ数はアメリカに比べるとまだまだ見劣りするが、最低限の翻訳しかなされていないサイトを見ると、まだまだ力を入れてないことは明らかなので仕方ないとも言える。

ただ、そもそもこの手のサービスが日本で成功するかどうかという質問には、いろいろな意見がある。

「シェアリング」サービス一般的に、各マーケットの国民性や文化がその成功に大きく影響すると言われるが、これはコンテンツとかリンクとか写真の「シェアリング」ではなく、物理的な「住居」の「シェアリング」となる。従って、文化的な壁はさらに高い。どちらかというと、アメリカでは大きく成長した"Craig's list"のようなClassifiedサービスが日本でうまくいかなかったという議論に似ているような気もする。クラシファイドサイトでの大きなカテゴリーである中古品売買もルームシェアも、日本では受けいられなかった。

アメリカでは大学生のほとんどが学内の寮に住み、一部屋をもう一人のルームメイト、もしくはそれ以上とシェアする。高学年になると数人で一軒家を借りてシェアするなど、物理的な空間をシェアするのに慣れている。卒業して社会人になっても、しばらくお金が貯まるまではルームメイトと一軒のアパートをシェアすることが稀ではない。

日本では、そういう習慣はまったく根付いていない一方で、有名人が田舎のお宅にお邪魔して泊まらせてもらったり、有名人が海外のホストファミリーのところに泊まらせてもらって異文化体験をするなどのテレビ番組が人気なのも事実。誰もがそういう体験に憧れをもっていることは伺える。


日本人が日本国内を旅行するときには、あまりにも習慣の壁が高くて浸透しない可能性が高い。今や安くてきれいなビジネスホテルも増え、温泉を楽しめる旅館もさまざまな値段で楽しめるのに、何故わざわざ見知らぬ人の家に?というのが率直な反応だろう。

それだけに、airbnbのようなサービスにとっては、海外旅行者向けに節約というよりも異文化体験を売りにし、また、ルームシェアという概念に慣れた外国人が日本を旅行する際のオプションとしてポジショニングするのが、比較的受け入れやすいエントリー戦略かもしれない。


ちなみに去年末に行われたCEOのインタビューを読んでいると、airbnbのホストは、「異文化交流」とか「新しい交流を求めて」部屋や家を貸し出すことは少ないと言う。大部分は(少なくとも当初は)小銭稼ぎが目的だが、結果的に思わぬ交流や出会いが生まれ、ゲストと友達として連絡を取り続けることは少なくない。

日本人のホストに向けては、むしろ異文化交流の要素を全面に打ち出すのが効果的かもしれない。

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