2010年2月21日日曜日

悲惨な事故とそれがシリコンバレーに与えた影響

2月17日の朝8時前、いきなり部屋の照明が消えて、テレビが消えて、ネットワークが使えなくなった。何ごとかと思いつつも、うちだけの問題だろうと思って対して気にもせずに仕事に向かったのだが、道に出るなり信号がまったく機能していないのに気づいた。車の中でラジオをつけたら、パロアルト近辺全体に及ぶ大規模な停電だと言う。しかもその原因は、イーストパロアルト市で起こった小型双発セスナ機の墜落事故だった。

住宅2棟に火災があり、そのうちの1棟はデイケアーセンター(児童託児所)だった。幸い地上での負傷者は誰もいなかったが、セスナに搭乗していた3名は死亡。そしてその3名、創立以来話題になって上場の手続きを進めている最中の、シリコンバレー発の高級電気自動車を開発しているスタートアップ、Tesla Motorsの従業員だということも判明した。

ここ最近、このエリアでは朝方の霧がひどくて運転していても視界がひどく悪かったのだが、この事故も霧によるものと思われている。

この事故の結果、パロアルト市広域に停電が起こり、スタンフォード大学や多くのスタートアップもその影響を受けた。幸いスタンフォード大学病院はバックアップの電力でオペレーションへの支障は逃れたとのことだったが、ほとんどの事業所は一日まったく機能しなかったという。パロアルト近辺にある会社と言えば、Facebook、VMWare、HP(ヒューレットパッカード)など240程度の会社がエリア内にオフィスを持ち、それに加えて多くの有名なベンチャーキャピタルが名を連ねる。

その結果、近辺の会社の社員の多くは家に帰って自宅から仕事、もしくは停電の影響を受けなかった近所のカフェに駆け込んだとのこと。多くのベンチャーキャピタリルトやスタートアップが事務所を構えるサンドヒル・ロードにあるスターバックスでは、ラップトップを片手にネットワークを探し求めるビジネスマンで溢れかえったという。

フェースブックと打ち合わせ予定だったわたしの友人も、一日中取り引き先から連絡がないために何ごとかと思っていたら、夕方になって電力が復活してからようやく誤りの連絡が来たという。

あとからわかったことだが、その影響はパロアルト市を超えて、Menlo Park(メンローパーク)、Mountain View(マウンテンビュー)、Los Altos(ロスアルトス)、Redwood City(レッドウッドシティ)など隣接する市の一部にも及んでいた。

住民やこの地域で働く人の間では、事故によって尊い命が失われたことに対するショックは隠しきれない。

それに加えて、この事故から改めて実感したこともある。それは、ネットワークに頼る今の時代、この街はインターネットがないとまったく機能しなくなってしまうということ。あとは携帯が頼みの綱だが、みんなが一斉に電話をかけたりネットにつなげようとしたため、混雑した回線は一日麻痺状態だったという。

結局夕方の5時あたりに回復し、すべてが通常状態に戻った。10時間以上に渡る大規模な停電、IT帝国を築きあげたシリコンバレーの弱点がさらけ出され、あらためてネットへの依存度を実感した一日だった。

2010年2月5日金曜日

逆玉の輿ブームの到来か?アメリカの女性がますます強くなるワケ。

「永久就職」という言葉が象徴するように、結婚と言えば、女性は専業主婦になって男性の収入に家計を頼るというのが、昔ながらの形だった。女性の社会進出が進んでいたアメリカでは、その「依存度」は日本に比べて低かったものの(2009年時点でも仕事をする女性の率は日本で67.5%、アメリカ72.3%、そして北欧は80%以上)、一家の稼ぎ頭はやっぱり男性、というのは万国共通。ただし最近、アメリカではその関係がついに揺らぎ始めているようだ。

Pew Research Centerが今年一月に、アメリカの最近の結婚事情の変化を裏付けるデータを発表した。その中で、1970年と2007年での女性の収入と学歴の変化、そしてその傾向が男性の経済状況に与える影響、特に結婚による影響について触れている。

1970年の男性と言えば、家族全員を一生養っていく責任が一人の肩にズッシリとのしかかっていた時代。その頃に比べると、女性の社会的な地位や役割が大きく変わり、男性にとって結婚による経済的負担が軽減したということは容易に想像できる。いまや一人の肩にかかっているというよりも、二人で一緒に担いでいる、といったところだろうか。その分家事も2人で分担することになるわけだがら、それを男性がラッキーと考えるか、アンラッキーと考えるかは人それぞれだろうけど。

では実際にどの程度、男性への経済的負担は減ったのか?女性が「一家の稼ぎ頭」になるまでに変化したのだろうか?

まず奥さんの収入がダンナの収入を上回っている家庭の比率を見てみると(30〜44歳のみ対象)、1970年では4%にすぎなかったのが、2007年には22%にまで上昇したという結果が紹介されている。ということは、いまや家庭を持つ男性のほぼ4人に1人は、女性が一家の稼ぎ頭を担うという、ラッキー(?)な状況にあるということだ。

以下のグラフは、既婚女性、独身女性、既婚男性、独身男性という4つのカテゴリごとに、アメリカにおける一家庭あたりの平均収入を1970年から2007年にかけてプロットしてものだ。条件を揃えるために多少の修正が入っているので、絶対値よりも各カテゴリの伸び率に注目してもらいたい。

1970年から2007年にかけた平均伸び率を比較してみると、既婚女性は60%、独身女性は59%、既婚男性は61%も上昇しているのに対して、独身男性群の伸びは16%に留まる。

つまり、男性が結婚することによって得る経済的メリットがどんどん上昇していることになる。昔は男性にとって経済的「負担」とされていた結婚が、いまでは「お得」な結果を生み出しているのだ。



では、カリフォルニアに焦点を移してみたい。

California budget projectによると、カリフォルニアでの一家あたりの平均収入は1979年から2005年にかけて9.6%あがった(数値は、インフレなど調整した結果)。ただ女性の収入をカウントしなければ、一家族あたりの平均収入は3.1%低下する計算になったとされている。

また、カリフォルニアでは女性の平均収入は74.3%あがったと言うから、前述の全国平均59〜60%に比べると平均以上に高い伸び率を示したと言っても過言ではないかもしれない。もちろん、データの提供元も計算方法も異なるし、全国平均は「一家庭の平均収入」であるのに対してカリフォルニアの数値は「女性の平均収入」なので、これまた一概には比較できないのだが。

さらにエリアを狭めてシリコンバレーに目を移してみると、どうだろう。アメリカの中でも一位二位を争って高い平均収入を記録するエリアで、かつ働く女性も多いので、男性が結婚によって受ける経済的負担は全国平均よりも低い(つまり経済メリットは大きい)ように想像できる。

ではシリコンバレーの夫婦は、結婚によって経済的な余裕を楽しんでいるのか?というと、現実はそうは甘くない。

仕事があるところに労働力が集まり、人口が増えて需要が高まるので物価があがる。特に家の値段の上昇はハンパなく、その結果、2人とも頑張って働かないと生活が成り立たないという、悲しい悪循環に陥っている。つまり男性女性に関わらず、いまや一人の収入源では余裕のある生活ができないという、異常な物価上昇に悩まされているのだ。。。でも少なくとも男性にとっては、自分の肩だけに生活がかかっているというプレッシャーが逃れられるだけでも朗報なのかも?

そして最後に触れておきたいのは、それでも男女間の給料のギャップは存在する、という現実。女性の平均収入が男性の52%だった1970年に対して、2007年には71%にあがっているものの、同条件への男女間の収入のギャップはいまだに存在する。カリフォルニアも例外ではないが、2006年には84〜92%とその差は全国平均よりは小さいようだ。そしての高給取りになればなるほど、男性優位の傾向は強まるというデータも出ている。

このギャップが解消すれば、奥さんの経済力がますます高まり、男性は大喜び?それとも、経済力に伴ってますます強くなっていくアメリカの女性に対して、複雑な心境だったりするのかも。。。