2011年3月31日木曜日

アップルの隠れた秘訣:広く浅くよりも、一つに集中。

スマートフォン業界もタブレット業界も、競合各社はアップルに続けばかりと忙しい。が、各社がアップルに見習うべき点は、商品のデザイン性とかマーケティング戦略だけでないのかもしれない。

限られた会社のリソース(人材、資金、時間など)をいかに配分するか、というのは会社の戦略の大きなポイントだ。その中でも、アップルとその他社でその配分率が際立って異なるコストがある。それは、研究開発費だ。

例えばBlackberryのメーカーであるResearch in Motion(RIM)、2008年から2011年にかけて研究開発費が3倍以上にも増えている。研究開発費の売り上げに対する比率で言えば、5.9%から6.8%に増えた。一方RIMのマーケットシェアだが、2009年の19.7%から、2010年には16.3%に落ちている。

昨年はStormやTorchなどの新製品をリリースしたものの、いずれもアップルやアンドロイドに話題をさらわれて、今では懐かしくさえ思える。

では、ノキアについてはどうか。売り上げに対する研究開発費の比率は2006年の9.5%から2009年には14.4%まで上昇、それが 2010年には 13.8%へと低下した。

対照的に、アップルの研究開発費の比率はこの数年でほぼ安定している。さらに驚くのは、昨年を例にとると、その比率が2.7%にすぎないこと。

アップルはこの10年間で研究開発に投資した金額が、マイクロソフトの1年分(2010年)にも満たないのだそうだ。

多くに手を出してリソースを分散させるよりも一つのモデルに集中する、というのがアップルのやり方だ。少数に賭けるということは、その分リスクも高くなる。アップルの自信の現れでもあるし、逆に、それだけ自分にプレッシャーをかけることが成功の秘訣なのかもしれない。

2011年3月25日金曜日

相変わらず敵なしのジョブス、敵なしのipad

日本ではやむを得ず発売が延期になったipad2だが、他の25カ国では、この金曜日に予定通り発売開始となる。アメリカでは発売直後の週末だけで売り上げが100万台に達成したと噂され、初期モデルに匹敵するか上回る勢いだった。

新しいipadの目玉と言えば、正面と後ろ向きカメラとデュアル・プロセッサーの搭載。外見的には、前のバージョンよりも30%以上薄く(13.4ミリから8.8ミリ)、15%軽くできている(1.5ポンドから1.3ポンド)。にも関わらず値段は499ドルからと据え置きなので、ipadからipad2にアップグレードする人も後を絶たない。

それに刺激されてか、タブレットの先駆けとなったipadに続けとばかりに、各社がタブレット市場に殺到している。

2010年末までに発売されたタブレットの数は30種類。近々発売されることが発表されているのは102種類。今年の世界的なタブレット売上数は4,360万台。ただタブレット市場での今のアップルのシェアは78%と圧倒的なシェアを誇っているのは大した驚きでもない。個人的には、22%もアップル以外のタブレットを持っている人がいるの?と逆に驚いたくらい。

一番の競合とされているのは、モトローラから発売されたXoomだ。プラットフォームはグーグルのHoneycomb。これはグーグルのアンドロイド携帯ではまだ使われていないタブレットのために開発されたもので、Xoomが始めてのケースとなる。

外身的には横長のデザインで、基本的に横向きでの使用が想定されている。ワイドスクリーンのビデオに最適だ。また正面向きのカメラも内蔵で、ビデオチャットができるようになっている。モトローラ曰く、4Gネットワークに対応しているためipadよりも10倍速い通信が可能らしい。

マイナスとして、売りのひとつであるはずのフラッシュが初期モデルではまだ未対応などが挙げられるが、それ以上に大きな壁は値段の高さだろう。ipadの一番安い基本バージョンが499ドル(wifiのみ)なのに対して、xoomは600ドルから。この差は大きい。

そして携帯競争ですでに聞き飽きたくらい繰り返されている点だが、あえてもう一度。忘れてはいけない何よりの利点は、アプリの数だ。350,000のアプリがあって、うち65,000はiphoneの小さいスクリーンとは違ったタブレットの大きなスクリーン用に最適化されている。一方のグーグルは、150,000のアプリのみで、そのうち100しか大きなスクリーンへの最適化が行われていない。

結果としては、十分アップルの脅威になるものを備えているが、100ドルの値段差を払うまでの価値はないと見られるだろうと予想される。

またこのipadが脅威となるのは、同じようなタブレット製品だけではない。例えばkindleなどの電子本用ハードウェア。今回さらに軽くなったipadは、持ち運べる電子本としてさらに使いやすくなる。

3/2のipad2のお披露目イベントに、いつもの出で立ちの黒いタートルネックとジーンズで現れたジョブス氏。すっかりお馴染みになったこの服装だが、地味で目立たない服によって商品のデザイン性を引き立てるという隠れた作戦があるとも言われている。その狙い通りかどうか、またもや世間をあっと言わせたアップル。噂通りの商品だったにも関わらず、ユーザーを失望させず大きな話題性を繰り広げ、さらに競合までをぐんと引き離す力は、さすがとしか言いようがないだろう。

2011年3月21日月曜日

Twitterやフェースブックは、大学の講義すら楽しくする

アメリカ、特にシリコンバレーでは、ビジネスと大学の距離が近い。企業と大学が共同で講義を持ったり、成功した起業家や有名などこかのCEOとかが大学で教えることも多い。

ただ最近は、どちらかと言うと伝統的とされてきた(Web2.0的でない)会社も大学の講義をスポンサーしたがる分野がある。それはオンライン・マーケティング(インターネット・マーケティング)だ。つまり、若い世代をターゲットにマーケティングを繰り広げる際に、学生の知恵を借りようという思惑。

良くあるパートナーシップの形態は、企業が大学に資金や普通では手に入らない顧客情報を提供、その代償として学生が企業のためのプロジェクトを行い、企業はその結果をただで得る。学生にとっても企業と密接に働くことでインターンシップのような経験が得られ、就職活動にプラスとなると好評らしい。

例えば携帯キャリアのスプリントは、ボストンにある大学で「インターネット・マーケティング」のクラスをスポンサーしている。スマートフォンとその無制限の利用を無料で提供する代わりに、学生は同社がボストン地域でリリースする4Gネットワークのサービスについて、インターネットを使ったマーケティングに取り組む。具体的にはブログを書いたり、TwitterやFacebookを使ったり、YouTubeにビデオをアップロードしたりと、インターネットを利用した口コミマーケティングが課題だ。

また企業にとってはおまけの効果がある。

一つ目のおまけは、クラスを取った学生の企業に対するイメージや理解が深まり、新たな顧客になる可能性があるという点。例えばスプリントだったら、サービスを実際に使ってみた結果、AT&Tからスプリントに移り変わるかもしれない。マーケティングを手伝ってくれる学生と言っても、一人の顧客でもあるのだ。

また、良い学生を見つけたら逆に企業側からリクルートすることもできる。

コスト面でも、コースを担当している教授がいるわけだから、手取り足取り教育する必要がないという点で、インターンシップより安くつく(そもそも多くのインターンシップは有給)。大企業にとっては一講義をスポンサーするなんて、安いものだろう。

ちなみにこの手のクラスではその他にも、最近はやりのツールを最大限に利用する秘訣がいろいろと教えられる。例えば一番効果的にTweetできる時間帯:それは朝の11時か夕方の6時らしい。この時間帯にtweetすると、読んでもらえる確立が一番高いとか。

わたしの大学時代にもこんな講義があればもっと楽しく勉強したのに、と思う。何よりも勉強という意識なく学べるのがうらやましい。

2011年3月14日月曜日

ipad2は本体よりもカバーの方が斬新?

アップルのマーケターぶりはやっぱりすごい。今回のipad2で話題騒然かと思いきや、ひそかに話題になっているのはそのケースだったりする。ケースなんて何でもいいんじゃないの?と思いがちだけど、アップル製品の魅力はそのデザイン性が大きいわけで、数万円出して中身を買うんだったら数千円余分に出して外身も格好よく見せたい、というアップル好きの消費者心理を見事に利用している。

わたしもケースに40ドル出してそれでも買ってしまった。。という話を以前書いたけれど、今度のケースは見た目が格好良いだけではない。

このケース、開けた途端にipadが立ち上がるように作られている。ニューヨークタイムズの記事の中では、このケースを冷蔵庫の扉に例えている。起動時間をじっと待たないといけないPCと違って、冷蔵庫は扉を開けた途端に電気が付いて食べたいものにすぐ手が届く。今回のケースも待ち時間なしの冷蔵庫のようなものだというのだ。

通常ipadを起動するには、ボタンを押してスイッチオンして、画面上を指でスワイプしてログイン画面を立ち上げる必要がある。それにかかるのは合計3〜4秒。そんなの大した時間に感じないかもしれないけど、その間にもう一通メールが返信できるかもしれないし、一つtweetが読めるかもしれない。となると、少しの時間短縮可能でもテッキーな人たちにはうれしい。

ipad2のカバーはipad2そのものよりも斬新的だという声まである。このカバーが故にipadからipad2にアップグレードする人も出てくるだろうというくらいだ。

色がいろいろと選べて、39ドルからレザーでできた69ドルまで価格はさまざまだ。

スティーブジョブスによると、このカバーはあとから思いついたものではなく、ipad2の開発と並行してともにデザインされたものだという。アクセサリまで含めてトータル・ブランディングを展開するアップル、さすがというしかない。また、かゆいところに手が届くというか、永久に満足することを知らないテッキーな消費者をどこまでも魅了し続ける。近いうちに音声で起動したりするんじゃないかと思ってしまう。

2011年3月10日木曜日

低迷するサンノゼ空港

サンノゼと言えば750万人近くが住むカリフォルニアで3番目、また全米でも10番目に大きな町。ただ最近、かつてはシリコンバレーへの玄関となっていたサンノゼ空港が利用客低下で悩んでいるという。サンフランシスコの南に位置するサンフランシスコ空港に、利用客が流れているらしい。

位置的にはシリコンバレーの中心とされている複数の町から30分内の距離という理想的な立地条件で、シスコ、グーグル、アップルなど代表的なシリコンバレーの大企業からの距離も、サンフランシスコ空港よりもサンノゼ空港の方が断然近い。

サンフランシスコ空港に流れる原因としては、利便性に欠ける点が大きいという。東海岸向け、例えばニューヨークやボストン向けの便は一日に一本しかないというとても不便な状況なのだ。また国内線だけでなく、国際線への接続も圧倒的に少ない。これは10年前にドットコムバブルがはじけた際に、大手航空会社が軒並みサンノゼから撤退した結果だ。

この傾向を受けて、空港ではいくつかの対策をかかげて大手航空会社を呼び戻そうとしている。

例えば利用料に対して大幅ディスカウントを適用して、便数を増やすよう促したり、レンタカーエリアやセキュリティのオペレーションなどの改善して待ち時間を減らす努力をしていたり。また、Wifiの提供や電源をそこらじゅうにつけるなどの努力も欠かしていない。

シリコンバレー近辺の大手企業にもサポートを促して、地域一体となって再度の活性化をはかっている。例えばeBayやシスコのサポートを受けて、懸命にANAをサンノゼ空港に呼び込もうとしている。

一方、各航空会社の日本行き便についても競争が激しくなることが予想される。サンフランシスコ〜羽田間の運行を始めたJALに対抗して、ANAも差別化をはかる対策を取ることを余儀なくされるだろう。日本行き便の利用客にとっては、いずれにしてもオプションが増えるというのはいいことだけど。

またもう一つの対策案として、空港名に「シリコンバレー」をつけてもっと魅力的な名前に変えることも検討中らしい。

ちなみに現在のサンノゼ空港のオフィシャルな名前は「ミネタ・サンノゼ空港」。この名前にある「ミネタ」さんは、ジョージ・ブッシュ政権時代のTransportation Secretaryで、クリントン政権時代のCommerce Secretaryだったサンノゼ出身のNorman Yoshio Minetaからとったもの。このミネタさん、日本からの移民であった両親のもとに生まれた日系1世で、その昔はサンノゼ市長でもあった。

ミネタさんの名前がシリコンバレーに置き換わるとしたら、日本人としてはちょっと寂しい気もするけど。