2013年1月31日木曜日

利用者も投資家も注目する、タクシー業界の風雲児


アメリカは車社会だというのは誰もが知っている。が、サンフランシスコをはじめとする都市で特に、最近はカープールとかカーシェアリングだとか、もっと公共の交通手段を使おうとかっていう動きが盛んになっている。理由としては様々で、1)路駐が困難な場所であればあるほど、駐車場が高い!サンフランシスコ街の中心に行けば行くほど、駐車場所がない上にお金がかかるので誰も運転したくない 2)坂が多くて細々した作りになっているので、渋滞がおきやすい。3レーンあっても両脇はFedexのトラックとSafewayのトラックにふさがれていて、結局1レーンしか空いていない何てことも、しょっちゅうあり。3)一方通行が多いので、地図で見た距離よりも実際の運転距離は長かったりする。そして最後に、4)環境のため。経済的理由と合わせて環境問題を理由に車を持たずにカーシェアリングサービスを使う人も結構いる。公共機関を使って通勤している人には、会社から補助が出たり、税金がほんの少しだけど免除されたりする得点もあります。

ちなみに1点目について余談ですが、2013年1月から、サンフランシスコでは財政難のために日曜日の路駐も課金するようになり、相当住民の反感を買っています。こんなことになるんだったらTwitterへの給与税の軽減措置なんて与えるべきじゃなかったなど、ちょっと無理のある議論まで出ていますが、気持ちはわからないでもない。日曜は教会に行く人が多かったり、そもそもビジネスは休みという意味で課金しなかったというのが歴史だと想像できますが、お店が7日営業になったら今は路駐もお金を払って当然ということなんでしょうか。


話を戻して、Zipcarをはじめとするカーシェリングはすっかり根付いてきましたが、最近この辺で話題になっているのはタクシーの代替もしくはタクシーのシステムを向上させたオンデマンドの送迎サービスです。


今のところ一番目立っているのは、Uber(ウーバー)。最近と言っても2010年設立の会社なので、そんなに新しくはありません。携帯で乗りたい場所を登録すると、数分で黒いセダンのハイヤーがその場所に迎えに来てくれる、オンデマンド送迎サービスです。タクシーがなかなかつかまらなかったり、タクシーよりもゆったりとしたかったりした時に使え、事前にクレジットカードの登録をするのでアプリから支払いもすべてできます。事前予約はできないので、その場で呼んで数分待つことになりますが、個人的な経験からすると数分で必ず来てくれます。ドライバーへのフィードバックシステムもあるので、感じの悪いサービスに当たることもないというのも大きなメリット。ただほとんどの場合、値段はタクシーよりも高い、というのは驚きではないでしょう。


Uberの何よりのチャレンジは、タクシー業界との摩擦。想像の通り、タクシー業界からは猛烈な抵抗を受けていて、サンフランシスコのタクシードライバーの団体やシカゴのタクシー会社から訴えられていて、規制機関はUberのサービスの合法性を討議中。


また、その課金体系もさまざまな議論を呼んでいます。この大晦日にタクシーの需要が爆発的に高まることで有名なニューヨークで、需要に伴って料金が釣り上がる課金体系を発表したところ、ネット上でユーザーとCEOとの熱い議論が繰り広げられた。一部のユーザーは需要と供給モデルを利用したあくどい商法だと文句。一方のCEOは、料金をあげることによってドライバーのインセンティブをあがり、需要を満たすだけの十分な供給を確保するんだから、結果的にユーザーの利益につながるモデルだと反論。最終的には、「Uberは万人のためのサービスではなくて、プレミアムを払っても快適な移動手段を確保したいという人のためのサービスなんだから、それに合意しないなら使わなければいい」という発言までに達した。


さて、その一方でタクシー業界と仲良くやっていこうというのが競合のFlywheel。こちらも同じく2010年に創設したが(2012年後半まではCabulousというサービス名で展開していた)、アプローチはUberと180度違う。既存のタクシーシステムを改善して、タクシー業界も利用者もwin-winシチュエーションに持っていこうという戦略だ。タクシーやドライバーを直接保有、雇用しているわけではなく、タクシー会社や個人ドライバーのパートナーとなり、既存のテクノロジーを使ってオペレーションの向上を目指す。値段についても、通常のタクシーサービスの利用に比べて60セント高いだけなので、Uberに比べたら断然割安感がある。


アプリ経由でタクシーを呼び、タクシーの回転率の向上を目指す。ただ今現在はドライバーのフィードバックや評価システムがないので、ドライバーにとっては利用者へのサービス向上するためにいかにインセンティブを持たせるかも課題になってくる。Uberはドライバーの教育だとか評価システムを重視しているので、その差別化が彼らの高い料金体系を正当化する理由にもなっている。


また、話題になっているというのは、利用者の間だけではなくて投資家の間でも注目されている、ということです。

Uberは2011年末に設立18ヶ月にして、Series Bのファンディングで32ミリオンドルをMenlo Ventures, Jeff Bezos, Goldman Sachsから調達した。それ以前の調達金額と合わせると、合計50ミリオンドルをすでに集めたことになっている。


Flywheelは、昨年の夏にシリーズAで8ミリオンドルの追加投資を得て、創立以来9ミリオンドルの投資を得たことになった。この8ミリオンを使って、新たなマーケットの開拓に積極的に取り組むと意気込んでいる。

新マーケットへの進出と言えば、Uberは海外マーケットへの進出を積極的に視野に入れている。現在はヨーロッパが中心だが、日本も次の視野に入っているようだ。公共機関がすでに十分発達している日本マーケットでどのような進出戦略を打つのか楽しみだ。