2010年12月29日水曜日

ヒップな若手人材がスタートアップの拠点を決める?人材の集まるところに拠点を構えるスタートアップ。

このブログを気軽に「シリコンバレー日記」と名付けたものの、良く調べてみると「シリコンバレー」というエリア名には、定義上21もの町が含まれるらしい。

とは言っても、つい最近までの「シリコンバレー」は、南部のいわゆる「ペニンスラ」が中心だった。ここに含まれるのは、スタンフォード大学の位置するパロアルト(Palo Alto)やレッドウッドシティー(Redwood City)、グーグル本社のあるマウンテンビュー(Mountain View)、さらに南に位置するサンノゼ(San Jose)、サニーベル(Sunnyvale)、サンタクララ(Santa Clara)、クバチーノ(Cupertino)などで、アップル、HP、eBayなどが本社を構えている。

この状況に最近変化が起きている。近年の多くのスタートアップの拠点が、「ペニンスラ」よりさらに北部のサンフランシスコ都市部に移りつつあるのだ。代表するのがZyngaTwitterYelpDiggなどだが、明日のTwitterを目指す無名のスタートアップも、このトレンドに従ってサンフランシスコに拠点を構える傾向が強いようだ。

この背景の一つとしては、ここ近年はやりの産業の性質があげられる。アップル、グーグルやHPに代表されるようなハードウェア系やインフラに投資が必要な産業というよりは、既存のiphone、アンドロイドやfacebookというプラットフォームの上に載せる、いかにクリエイティブなアプリを作るかといったアイディア勝負の競争が繰り広げられているのだ。

となると、スタートアップは若い人材や創造性を備えた人材を求め、必然的にそういう人材の集まる都市部にオフィスを構えるという流れになる。

ライフスタイル的に都会で少しとがった傾向を好む若い人材のことを、こっちでは俗語で「hipster」(ヒップスター)と呼ぶ。仕事には没頭するけどファッションやライフスタイルにもこだわりがある。食通で単にグルメな人もいれば、有機野菜や健康食に没頭する人もいる。環境問題への意識も高いので、Zipcarに代表されるような車のシェアリングサービスも人気がある。洗練された現代のヒッピーといったところだろうか?

この傾向を検証すべく、実際にベンチャーキャピタルからの投資案件数や投資額が都市別にどのような推移を示しているのか、調べてみた。

残念ながら2010年第2〜4四半期のデータは見つけられなかったので、多少2009年から2010年初めにかけての多少古いデータになってしまうが、それでも2009〜2010年にかけての傾向が少なからず掴めると思う。

まずはバックグラウンドとして、州べつのVCからの投資額と投資案件数の推移を比較してみたい。2009年第2四半期〜2010年第1四半期にかけて、不動のトップ3はカリフォルニア州、ボストンのあるマサチューセッツ州、そしてニューヨーク州となっている。カリフォルニアが全体的に下がり気味とは言うものの、まだダントツの一位であることは変わりない。マサチューセッツ州はヘルスケアや環境ビジネスなど、どちらかというと多額の投資を必要とする業界に強いことが投資額%の増加につながっているのだと思われる。一方、カリフォルニアで増えているアプリやゲームの開発などは、それほどの投資額を必要としない。

次に、分野別ではない町ごとの投資額、案件数のランキング。分野に問わず、VCからの投資案件数と投資額を町別にランキングしたものだ。















これまた残念ながら2009年の第2、3四半期のデータしかないのだが、案件数と投資額ともに、サンフランシスコがパロアルト(Palo Alto)やサニーベル(Sunnyvale)を引き離していっきに一位に踊り出ているのが顕著だ。カリフォルニア全体で見ると、マウンテンビュー(Mountain view)、サンタクララ(Santa Clara)、メンロパーク(Menlo Park)などは揃って増加傾向にあるが、逆にパロアルトに関しては、2009年第3四半期から第4四半期にかけて、投資額で100Mドル、約35%の減少となった。

2009年後半と言えば、サンフランシスコに本社を構えるZyngaが、ソーシャルゲーム業界では過去最大の約180億円という投資を受けたタイミングでもあり、ランキングもその影響を強く受けた。マウンテンビューに拠点を構える競合のPlaydomも大きな投資を受けたタイミングではあったが、それでも約43億円なのでZyngaにはとてもかなわない。ちなみにこのplaydom、2010年7月にディズニーに約700億円で買収されている。

次に「インターネット」分野別でのランキングを見てみたい。インターネットという分野に限った条件で、VCからの投資額と投資案件数を町別にランキングしたものだ。こちらについては2009年第3、4四半期と2010年第1四半期のデータが見つかった。
































サンフランシスコはいずれの四半期も、投資案件数と投資額ともに一位であるが、数値自体も一部を除いて上昇していることに注目してもらいたい。2010年第1四半期の投資額は、2位のニューヨークに迫られてきているものの、投資案件数では逆にニューヨークを引き離す形となった。また他のシリコンバレーの町と比較すると、Redwood city、Menlo Park、Mountain View が毎期順位も絶対数値も下げている一方で、サンフランシスコだけが一位の座と数値を保っていることがわかる。


では、この傾向が業界や労働市場にもたらす影響とは?以前にも何度が書いているように、いまや業界の垣根があってないようなもの。検索のグーグルとソーシャルネットワークのフェースブックが競合関係にあり、アップルとグーグルが携帯で競っている。その携帯の上に載るアプリの開発と言えば、手をつけていない会社がないと言えるほどだろう。

垣根がなくなって同じ土俵で勝負するということは、どの会社も同じような人材を欲しがるということ。グーグル、アップルなどの大手が社員用にサンフランシスコから無料のシャトルバスを走らせるようになってから、すでにだいぶ経つが、いまやサンフランシスコに面白いスタートアップが溢れ帰り、1時間以上の通勤をしてまで大手に入社したいという人も減ってきている。

これらのスタートアップの多くは、グーグルなどの買収候補になることも多いので、運が良ければ(もしくは悪ければ?)結果的には買収されてマウンテンビューの本社に吸収されてしまう、というパターンも少なくない。ただそこは、サンフランシスコをこよなく愛するヒップスター。そうなればなったで、またサンフランシスコに拠点を構える新たなスタートアップを見つけて、転職を繰り返していくのだ。

2010年12月19日日曜日

2011年のキーワードはゲーム化。いかにユーザに遊び感覚でインセンティブを与えるかがカギ!

Zynga, Foursquareに代表されるように、ゲーム、ソーシャルゲームが特徴的だった2010年だったが、この「ゲーム化」現象は2011年も引き続きブームになると思われる。業界人の予測による、特に注目される分野やトレンドとして以下が挙げられていた。

まずは健康系。wii fitにも代表されるように、ここ近年のフィットネスとゲームとの融合は目覚ましいが、その傾向はますます加速すると予想される。そもそもフィットネスは消費カロリーとか運動時間とかって進捗を数値で表してポイント制を導入しやすい分野なので、さらなるゲーム化が進むことは容易に想像できる。

次にあげられているのは、教育。昔から、堅苦しく学習している感を持たせずに遊び感覚で学ぶというのは常に教材の鉄則だったが、ポイント制とかバッジ獲得(Foursquareみたいに)といったメカニズムを使って学習のインセンティブをさらに高めることができる。ある意味、学校で良い点数を取ると☆のシールや花丸マークがもらえるのと同じことなので、その点メカニズムがすでに確立していると言える。あとはそれをオンラインに持ってくることと、友達と競うとかなどの「ソーシャル」性を追加すること。

環境に優しいグリーン業界もゲーム制を活かせる業界だ。例えばリサイクルに出したらポイント獲得、車でなく自転車に乗ったらさらにポイント獲得、というようにポイント制を導入することでユーザのインセンティブを高められる。

伝統的な会社による、この「ゲームメカニズム」の応用。例えば航空会社のマイレージプログラムや、ホテルに宿泊することで稼ぐホテルチェーンのポイントプログラムも、ある意味foursquareに代表される「チェックイン」システムの先駆けのようなもの。今後はこれらのサービスのゲーム性が高まるとともに、zyngaなど のゲーム会社がマイレージを彼らのバーチャルグッズと交換するなど、現実とバーチャル間の融合がさらに強まる可能性がある。

そして最後に挙げられているのが、この手のアプローチが大企業によってより盛んに利用されるだろうということ。一般的に新しいテクノロジーやビジネスモデルが出てきたときには、リスクを取りやすいスタートアップなどの若い会社が開拓して、それが成功とわかった時点で、保守的かつ伝統的な大企業がそれを適応する。ソーシャルゲームの世界でも例外ではなく、大企業を説得するのに十分な成功例とビジネスケースが確立した。来年はみんながこぞってこのメカニズムをどう自分のビジネスに利用できるか、という応用の年になりそうだ。

2010年12月18日土曜日

一体「ソーシャル」って?

ネット業界に限らない話だが、ビジネスの世界では「first mover advantage」という、先にやったもの勝ちという概念がある(つまり後発者が真似をするのは困難)。

今や「ソーシャル」が魔法のキーワードのようになって各社が起業や買収合戦を繰り広げているが、ふと思えば、その「ソーシャル」を先駆けて広めようとしていたサービスや会社が、最近ぱっとしない。彼らはこの「first mover advantage」を掴めなかったのだろうか?

例えばDigg。以前はNews Corp, Google, Current Mediaなどによる買収対象として騒がれたものの、ここ数年は特に大きなプロダクトのリリースがあったわけでもない。4千万のユーザはいるというものの、”News Sharing”という意味では、フェースブックやツイッターがいまや主流となっている。

またヤフー傘下にあるdeliciousに関しても、今週行われたヤフーのリストラの一環として、サービスの縮小、閉鎖もしくは売りに出すことが噂されている。

一方でDiggと良く比較されながらもいまだにユーザ層を伸ばしている会社として、「StumbleUpon」がある。Diggと似ているのは、それぞれのサイトを「好き。嫌い」と判断、その結果多くのユーザに評価されたものを他のユーザにも推薦するというもの。Diggが新しいニュースネタを発見するサイトであるのに対して、StumbleUponはカテゴリーごとに新たなウェブサイトを発見するサイトとなっている。ちょっと余談だけど2001年に創設されたこの会社と創設者を有名にしたのは、2007年にebayに買収されたものの、2009年に創設者と投資家によって買い戻されて、その結果また独立したスタートアップ規模の会社に戻ったという歴史。(Skypeのこともあるし、ebayってその手の話が多いような。。。)

さて、ここでの前提(そして問題)は、ネット上の統計的な好き嫌いという好みはどのユーザにも通用するということ。たぶん誰もが経験したことがあるだろうけど、わたしだってサンフランシスコで日本食レストランを探しているときには、ランダムな推薦よりも日本人からの推薦を重視したい。いまやどの会社も、もっと関連性を高めるためにそのユーザとより好みが近いユーザ層からの推薦だったり、そのユーザの友達の輪からの推薦を重視するという方向に進んでいる。

ただここでもわかるように、「ソーシャル」と言ったときの一番のユーズケースは根本的に10年前から変わっていない。新たなコンテンツ、商品やレストランを発見するときに、友達からの推薦を利用するというもの。もちろん一緒にゲームをするとかFantasy Sportsでつながる楽しみという意味での「ソーシャル」も増えているけど、情報のシェアという方が実生活でより「使える」ので、より多くの注目、ニーズそしてお金が集まってくる。ネット上のあらゆるユーザによるランダムな推薦を受けても、そのユーザの趣味嗜好が同じかどうかわからないし、それを信用できるかどうかも疑問だ。一方で自分の良く知っている人からのお薦めだったら、より安心して試す気になるだろう。ゲームは一緒に同じ体験を共有して楽しいに過ぎないけど、実生活での問題点の解決にはならない。

この「ソーシャル」化、昔ながらの検索エンジンにも少なからず影響を与えている。

検索エンジンのそもそもの役目としては、ユーザが目的のウェブサイトにたどりつくのを助けるというものだった。つまり調べたいことがある人が目的を持って使い、目的を果たしたところでその役目は終わるものだった。ただ最近の傾向としては、必ずしも目的がなくても暇つぶしに雑誌をめくる感覚でウェブにアクセスする人たちが多くなってきている。特に携帯経由でのアクセスではその傾向がより強いものと思われる。となると、検索ボックスにキーワードを入力するのではなく、受け身的に情報を受けたくなるもの。もちろん携帯でのキーワード入力はしにくいこともその傾向を後押ししている。自分の行動を振り返ってみても、いまやグーグルを通してではなくフェースブックのフィードを通して新たな情報やサイトを発見することが多いことを考えると、グーグルはじめ検索エンジンも変わらずを得ないことが明らかだ。

マイクロソフトの検索エンジンBingは、フェースブックとのパートナーシップにより、フェースブック上ですでにある機能「likes」を検索結果に反映する。つまり”xbox”と検索したときに、検索結果の一つがフェースブック上の友達によって「likes」と推薦されていたら、それがBingの検索結果ページに表示される。つまり味気ない単なる10のリンクだけでなく、友達からの推薦というパーソナル(かつソーシャル)な情報が追加される。

基本的なアイディアは先述のStumbleUponDiggとたいして変わらない。つまりこの数年間、「ソーシャル」についてのコアなアイディア自体はさして変わっていないことになる。問題はExecution - 誰がそのアイディアをうまく形にできるのか、に尽きるようだ。

2010年12月11日土曜日

グーグルの参入でさらに活気づくebook業界

アマゾンのkindleが3分の2のマーケットシェアを占めているebook市場だが、クリスマス商戦を目前に控えた今週、アマゾンとグーグルがそろってウェブベースでのebookストアのリリースを発表した。

グーグルは「google books」と名でウェブベースでのebookストアを今年内に始める一方で、アマゾンもkindle以外の他のデバイスやウェブブラウザ上で読める、ebookコンテンツのリリースを発表。Androidやiphone 用には無料のアプリも提供される。

今までのebook利用では、デバイスの購入が大きな壁となっていた。アマゾンのkindleだったり、Barnes & Nobleの Nook、 Apple ipad、Android ベースのタブレットなど、指定されたデバイスを購入して始めてebookが読めたからだ。今回のウェブベースのサービス開始によって、iPad、iPod touch、iPhone、Mac、PC、BlackBerry、Androidベースのデバイス、 そしてウェブブラウザが立ち上がる環境ならどこでも本が読めるようになる。

ではアマゾンとグーグルの違いは?大きな違いの一つは、アマゾンでは第3者である出版社、作者、ブロガーなどがebookコンテンツを自分のサイトから直接売って、アフィリエート代を稼ぐことができるという点。一方のグーグルは第3者がコンテンツを売るというモデルがまだできていない。

購入可能な本の数だが、アマゾンでは75万冊の本がダウンロード可能、一方のグーグルは2004年以来、Google books projectのもとで今までに1千5百万冊の本をすでにデジタル化している。最終的には1億5千万冊まで増やすというから、現在の10倍を目指していることになる。1千5百万冊のうち300万冊については売る権利を持っていて、うち200万冊は無料(著作権がすでに無効になったりしているもの)、そして近いうちに数十万冊が購入可能になるという。

ウェブベースになることによるユーザへの利点としては、特定のデバイスを購入する必要がなくなるだけではない。コンテンツの値段自体も下げられる可能性がある。伝統的な本のビジネスだと紙代とか印刷代とか流通にかかるコストなど、削減しようのないコストがいくつも発生してくるが、ウェブベースであればそのほとんどのコストは無関係となる。もちろん作者への支払い分など削減できない部分もあるし、サーバーとかサイトのメンテナンスコストとか他の種のコストが発生してくるものの、直感的にコスト全体は押さえられると想像できる。

また、オンラインで本を購入することによって、そのユーザの購入履歴をトラックすることができる。その人がどんな本が好きだとか友達がどんな本を推薦しているかっていうのは、貴重なユーザのデータとなる。そのデータを利用してより各ユーザに関連性の高い広告を提供したり、本のコンテンツそのものの中に広告を埋め込むこともできるというのだ。つまり、より関連性の高い広告を提供することによって広告収入の増加、そして結果的にコンテンツ自体の値段を下げられる可能性がある。

となると1冊10ドル(アマゾン、グーグルともに10ドル近辺が多い)という単価はまだそれでも高いのでは?という声も。出版社や作者側からすると物理的な本に比べてどんどん下がるebookの値段に対する抵抗は留まらないが、kindle経由で読む場合とウェブベース読む場合に値段が同じだというのはちょっと不思議な気がする。

kindle経由でしか読めなかったときには、ハードウェアコストの一部を肩代わりするためにソフトウェアでも余分に課金しないといけないとか、コンテンツを提供するための無料のワイヤレスのコストをどこかでカバーしなければいけなかった。ただウェブベースになった途端、それらのコストは一切発生しなくなるわけだから、それにも関わらず値段が変わらないというのはおかしいのでは?という声も。

今年デジタルブック市場の売り上げは966億円にのぼり、デバイスの数量としては1千5百万個が売れたという。激しくなる競争とともに、2011年にはますます伸びる市場の一つであることは間違いない。また、そのコスト構造も競争が激しくなると同時にどんどん進化していくだろう。

2010年12月5日日曜日

プロダクトやユーザ獲得においてすでにライバル心を燃やすグーグルとフェースブック。この2社間で繰り広げられるもう一つの競争と言えば?

以前にもブログで何度が書いたが、最近シリコンバレーの会社間でのデキル社員の獲得競争が一層激しくなってきている。一般的にその点では、サイズに関わらずどの会社も四苦八苦している。理由としては、限られたタレント数に対してスタートアップを含める会社数が増えている、つまり需要に対して十分な供給がないためだ。また各社のエリア境界が不明確になってきて、どの会社も同じようなスキルセットや経験をもった社員を欲しがることも背景にある。どの会社もiphoneやアンドロイドの開発者が欲しいというように。

知名度のないスタートアップにとって有能な社員の獲得はとてつもなく困難なのは言うまでもない。ただ、グーグルなど大手にとっても有能な社員の転職の流れを留めることが難しくなってきている。逆に言えば、社員にとっては給料アップを狙ったステップアップの転職がしやすい環境だということだ。

中でも一層と激しい競争を繰り広げているのはグーグル対フェースブック。

前回、サンクスギビング直前にグーグルが立て続けに新プロダクトをリリースした話に触れたが、同じ週にグーグルが世間を騒がせたもう一つのネタと言えば、今や恒例となった年末ボーナス(キャッシュで約10万円)と全社員に10%の給与アップを約束したこと。大物プレーヤー間での業界のマーケットシェア競争がますます激しくなると同時に、有能な社員の確保についての競争はさらに激しくなってきていることを示している。グーグル社員の主な転職先としては、LinkedIn, Facebook, Twitter, Zyngaに代表されるようなIPO前の大物スタートアップだが、その中でも一番脅威とされるのがフェースブックだ。

現在すでに、フェースブック社員の10-12%はもとグーグル社員と言われる。そしてその転職の流れはとどまることを知らない。アメリカではボスが自分の部下やチーム全体を新たな転職先に引き抜くということがよくあるので、キーパーソンを逃すと、その配下にいるチーム全体を失うリスクも高いのだ。

実際にグーグルは今年11月頭に、フェースブックに行きたい意思を示したStaff Engineerに対して、3.5億円の特例ボーナスを提示して引き止めたらしい。ちょっと補足すると、グーグルのStaff EngineerというのはEngineer, Sr. Engineerに続くタイトルで、上にはSr. Staff Engineer, Manager, Director, VP と続く(正確にはもっと階層があるかもしれないが)。そこまで上のタイトルではないにのも関わらず、そんな額を提示するというのはかなりの切迫感を感じる証拠だ。

噂によると、グーグルがこの手の引き止めのためのオファーを出すことは珍しくない。そしてその結果、80%の社員は考え直してグーグルに留まるのだという。一番のくどき文句は、転職先となるIPO直前のスタートアップのバリュエーションについての不透明性。会社の価値が100Billionドル(約10兆円)という予想が本当であれば、社員のオプションの価値はとてつもない高額になりかねないが、その一方でそんな値段がつかないリスクはそれ以上に高い。その一方、グーグルの市場価値というのはすでに確立して手堅いもの。とてつもないアップサイドもない代わり、すごい損することだってないのだ。

グーグルとフェースブックに代表されるタレント確保競争は、まだまだ始まったばかり。これから来年に向けて他のプレーヤーも巻き込んでさらに加速していくだろう。

2010年12月3日金曜日

サンクスギビング直前のリリース合戦。カギはローカル、ショッピングそしてソーシャル。

一般的にこの業界では、サンクスギビングを境に新プロダクトのリリースがぱったり止まる。日本の年末年始と同じようなもので、年末に向けて社員が休みを取り始めるのがサンクスギビングなので、新たなコードリリースが新たなメンテナンスを要することを控えて、多くの会社がコードフリーズ期間に入る。つまり、サンクスギビング前には今年最後のチャンスとばかりに、新プロダクトや新機能のリリースが立て続けに行われるということだ。

今年のサンクスギビング直前の11月15日の週に、立て続けのプロダクトリリースを繰り広げてひと際目を引いたのはグーグルだった。

まずはローカル情報のレビューなどを集めるHotpot というサービスをリリース。

ソーシャルネットワークを使った「地域情報ベースのお薦めの情報サーチエンジン」と位置づけている。今までの地域情報検索エンジンはレビューのソースに重きを置いていたが、今回のHotpotはもっと「パーソナル」にデザインされているという。つまり今までだったらYelpに代表されるような大手サイトからのレビューが上位にランクされていたのに対し、この新サービスではユーザ各自の好き嫌いや友達からのおすすめが検索結果により色濃く反映されるようになるので、人それぞれで検索結果が異なってくるのだ。ということで「パーソナル」。

グーグルがその週にリリースした他の機能は、プロダクトサーチの強化。プロダクトサーチと言えばショッピング目的なのでローカル(地域情報)とは一見無関係と思えるが、この機能追加は地域情報に関連している。オンラインで買い物する場合は商品の在庫状況が当然購入プロセスの中で提示されるが、小売り店など実際の店舗で買い物をしようとした場合、在庫状況は実際に行ってみるか、電話しないと確認できない。今回グーグルは70ほどのリテール・ブランドと手を組んで(Best Buy Williams-Sonomaなど)、店舗での在庫状況を検索結果として表示する機能を追加した。

またショッピングつながりと言えば、同じ週にリリースしたBoutiques.comというサイトがある。カメラとかゲームといった電化製品はスペックや製品番号がはっきり定義されているので検索がしやすいが、洋服、靴やアクセサリーはそういうわけにはいかない。サイズや色だけではなく、デザインやスタイルなど必ずしも言葉では明確に示されない要素が必要となってくる。オンラインでのアパレル製品を購入するユーザは増える一方なので、この難関をいかに克服するかが検索エンジンやファッションサイトの常に大きな課題とされてきた。このBoutiques.comでは、シルエット、色、スタイルだったりと、電化商品や本とは違った角度で検索結果を絞り込む機能を備えている。また好きなスタイルをもとに、似たイメージのコーディネートをおすすめしたりという機能もある。またファッション雑誌的な要素も兼ねていて、名の知れたブロガーやスタイリストなどがバーチャル・プティックを開いて、ユーザはそのブティックから直接洋服やアクセサリーを購入できるようになっている。実際に使ってみると、まだまだ改善の余地ありというベータ版にすぎない印象はあるものの、新境地に積極的に取り組むグーグルの意気込みが感じられる。もう一つ目を引く点としては、このサイトにはグーグルというブランドやロゴがどこにもないこと。ファッションという新境地でグーグルというブランド力が必ずしも強みとなるわけではないという判断だと思われる。

以上の3つが、一週間内に立て続けに行われたグーグルのリリースだ。ホリデーシーズン直前ということもあるが、グーグルがローカルとショッピング(そしてこの2つのオーバーラップは大きい)に相当力を入れているのが顕著だ。この2分野はビジネス(マネタイズ)という点でも、もっともポテンシャルのあるエリアだということも忘れてはいけない。

そしてもう一つの共通点は「ソーシャル」。レストラン情報なりファッション情報なり、友達からのおすすめや友達と情報を積極的にシェアするような作りになっている。

最後にちょっと余談になるが、ローカルとショッピングと言えば、この数日で噂となっているグーグルのグルーポンの買収話もその重要性を象徴している。グルーポンとは、地域ごとの中小ビジネス(全国規模のチェーン店も参加したりするけど、基本的には地域ごとに提供されるクーポンの種類が違っている)が1〜2日限定でクーポンを提供し、ある一定の人数が購入したら始めてそのクーポンが成立するというのもの。例えば、サンフランシスコのエステサロンが50%オフのクーポンを50ドルで売るとする。100人が購入したら始めてそのクーポンが有効になるが、もし99人しか購入しなかったら非成立となる。グルーポンはこの手のサービスの中では圧倒的に独占状態に近く、グーグルがそのユーザ層とブランドを利用して彼らのプロダクトサーチやローカルサーチに利用するという限りない可能性を秘めている。噂では6千億円に近い買収額が提示されたというとことだが、果たして真相はどうなのだろうか。

2010年11月23日火曜日

ますます盛り上がるアプリ開発

アメリカでのiphoneのテレビコマーシャルのキャッチコピーである“There’s an app for that”が、まさに今のシリコンバレーを象徴している。この近辺で、起業家やこれから起業しようとアイディアを練っている人たちの99%は携帯、スマートフォーン、タブレット向けのアプリ開発を狙っていると言っても過言ではないだろう。

今までiphoneの唯一のキャリアだったAT&Tも、パロアルトに数億円かけてアプリ開発専門のテックセンターを開くことを発表。VCのKleiner Perkins Caufield and Byers(KPCB)は、「ifund」を通してiphone, ipod touch, ipadのアプリ開発者たちに200億円の投資を行っている。彼らの焦点はロケーションベース、ソーシャルネットワーキング、ヘルスケア、教育、エンターテインメントなど。投資先の主な会社にはBooyah, Zynga Mobile, Shazamなどがある。ビジネスになるところにお金が集まり、さらに開発者を刺激する。

スタンフォード大学が拠点を構えるパロアルト発の人気アプリと言えば、“Tap Tap” ゲームで知られるTapulous がある。これまでに3.5千万ユーザを獲得し、この7月にはディズニーに買収された。"
Guitar Hero for the iPhone"(もしくはDance Dance revolution)と例えられることでも証明されるように、何も目新しいアイディアではない。ただ、Lady Gaga, Cold Play, Justin Bieber, Katy Perryなど実際の有名アーティストと手を組んで彼らのヒット曲をフィーチャーしたり、アーティストとのチャットルームを設けたりして、ビジネスとしての新境地を必死に探す音楽業界とも密接に手を組んでいる。つまり、単なるリズムゲームではない立派な娯楽ゲームを確立したのだ。

娯楽性と言えば、最近のアプリの成功のカギの一つとされている。もう一つは実用性の高さ。両方を備えていればベストだけど、少なくともいずれかに徹していることが成功のカギと言えるだろう。競争は激しくなり、目新しいからというだけでユーザがお金を払って使ってくれる時代は終わった。また、スマートフォーンが技術に疎い一般人まで普及してきたことにより、使い勝手の良さやわかりやすいユーザインターフェースも一層重要となってきている。

もちろんOSという点では、アンドロイドも忘れてはならない。2010年の第3四半期には売り上げでiphoneを超えていて、開発者にとってはiphoneと同様に、もしくはこれからはそれ以上に大事なプラットフォームとなってくる。

開発者
Tim Su とビジネスパートナーJon Parisが始めたスケジュール管理アプリ、”Todoroo” はパロアルト近辺発の代表的なアンドロイド向けアプリだ。会社名の由来もストレートに、Astrid (Android’s Simple Task Recording Dashboard)。

タスクをオンラインで管理する方法なんていくらでもあるのに、今さら何で?と思いがちだが、ポイントは仕事を連想させずにユーモアを織り交ぜる点にある。今日中に終わらせられなかった仕事や用事のリストを、グーグルやアウトルックにリマインダーをされると、罪悪感だけが残る。このアプリ、癒し系キャラクターのイカがほにゃほにゃと現れて、「いったいやる気あるの?」とか「もうやる必要ないっか?」とかビジネスっぽくなく柔らかなリマインダーを出してくれる。つまり「実用性」が高いんだけど遊び要素(ゲーム性?)も兼ね備えていて、業務用に使う素っ気ない管理ソフトとは一味違うところが受けている。

この2人はスタンフォード大学で意気投合してビジネスを始めたのだが、そのスタンフォード大学と言えば、当然のごとくこのブームに乗ってiphone向けアプリの開発コースを設けている。また、コードを書くというだけでなく、アイディアをどのように起業に結びつけ、そしてビジネスにしていくかという集中講義のようなサポートも行っている。

アプリのもうひとつの大きなポテンシャルはビジネスとして成り立ちやすいことである。主な収入源は広告、バーチャルグッズ、またはプレミアムバージョンを有料で売るなどだが、仮にすぐに収入に結びつかないとしても、多くのエンドユーザとつながったらしめたもの。パブリッシャー、広告主、キャリア、みんながみんなエンドユーザーの情報が欲しくてたまらないからだ。ユーザーがどこに行って、どういうスケジュールで一日を過ごし、何を食べて、どこで買い物して、どこに旅行するのか。どんな趣味があってどんな友達ネットワークを持つのか。モバイルはその点完璧なデバイスで、そのエンドユーザにつながって結果的に情報を収集するためにはその情報に対して金目をいとわないという会社も多い。

2010年9月11日土曜日

日本人の謙虚さが仇になる?

日本では、今年3月期から年収1億円以上の役員の実名公表が義務づけられている。

リストのトップを飾るのは日産のCarlos Ghosn、ソニーのHoward Stringerといった外国人社長。これは驚きではないけど、日本人社長はどうだろうか。

この10年で日本人管理職の報酬は2倍以上になったというものの、2009年のデータによると、3,813の上場企業の中で実名公表の対象となったのは300人にも満たなかったという。PricewaeterhouseCoopers の調査によると、日本の株式市場で上場している企業の社長の平均年収は4,900万円で、一般社員のほぼ16倍だったという。対して、アメリカのトップ3000社の社長の平均年収(給料、オプション、ボーナス含む)は$3.5million (ほぼ3億円)と報告されているから、その差は歴然だ。

Carlos Ghosnが$10Mを稼ぐ一方で、ライバル社のトヨタの社長はリストにさえ入っていない。ソニーのHoward Stringerが$9.1Mを稼ぐ一方で、ライバル社のパナソニックの社長もリスト入りをしていない。

この原因の一つとしては、伝統的に日本の会社は社長が内部から採用されることが多いことがあげられる。アメリカでは外部からリクルートすることが多いため、社長候補になるハイプロファイルな人材の獲得競争が激しく、提示給与が大きなカギとなるのだ。

これは幹部レベルに限ったことではないが、終身雇用がいまだに根付いている日本ではどのポジションでも労働力の流動が海外に比べると極端に少ない。ただ労働人口が減少する一方の今後の日本では、いかに海外からの優れた人材をリクルートするかは大きな課題の一つになるだろう。そしてその際に、給料水準の低さが一つの障害になるのも明らかだ。

加えて、日本での物価の高さが足かせになる。個人的にはサンフランシスコの方が物価が高いのでは?と思ったりするけど、アメリカ人がアメリカでのライフスタイルをそのまま東京に持ち込もうとしたら(ステーキを食べ、買い物は商店街ではなくて紀伊国屋でないといけないとか。。。)、確かに東京では相当の出費になると思われる。実際Mercer Consultingによると、物価の高い都市ランキングでは大阪が6位、東京が2位にランクインしている。

もう一つの問題は、労働人口が減少する日本からさらに労働力が流出していく可能性があるということ。若者の世界観が広がって、海外でのキャリアかつ金銭的なチャンスの大きさを知ったら、日本を飛び出していく若者は少なくないだろう。それを引き止めるためにも、金銭的なインセンティブは一つのカギになると思う。

今まで日本経済の強さの一因とされてきた謙虚さとか忠誠心だが、これからの時代はかえって仇になるかもしれない。

さて最後に、面白いのは日本のメディアと海外のメディアの受け取り方の違いだ。「200人以上も1億円プレーヤーがいることが判明」と報道する日本メディアに対して、「1億円を超える社長の数があまりにも少ないことに驚き」というのがアメリカでのトーンだ。

もう少し視野を広げて、このあたりの認識を変えていくのが第一歩かもしれない。

2010年7月12日月曜日

LeBron Jamesと経済効果

今月の大きな話題と言えば、NBAのスーパースターLeBron Jamesが移籍先としてMiami Heatを選んだこと。Jamesは高校からNBAにスカウトされて以来、本人の地元でもあるクリーブランド(Cleveland Cavaliers)でスターの座を確保、ほぼ無名だったチームをチャンピオン候補にまで成長させた。Cavaliersはファイナルに進むことはできなかったもののプレイオフには残り、過去最高の成績で今シーズンを終えた。

Jamesのこの7年間の功績をたたえる一方で、それだけの年数かけてもクリーブランドをチャンピオンにできなかったJamesを「失格」と呼ぶ声もある。バスケットボールはあくまでもチーム競技で、スーパースター一人の力で優勝できるわけではない。クリーブランドのチームは脇役不足、このスーパースターをアシストする力がなく、Jamesはその状況に満足していないというのがもっぱらの噂だった。

そんな中、ついに今シーズンを終えた7月1日にフリーエージェント入り。年間20億円相当(日本のスポーツ選手年俸との規模が違いにも注目)を稼ぐこのスーパースターの移籍先が、プレイオフ中から注目を浴びていた。

必死で引き止めたいクリーブランドの狙いは、チームの成績だけではない。

というのも、このJames獲得した7年前以来変わったのはランキングだけではないのだ。クリーブランドという、人口数が全米で40位以下、確立した産業があるわけでもなく、経済的に落ち込んでいる都市に対して、Jamesは大きな経済効果をもたらした。

James獲得以来、Cavaliersの観客動員数は59%上昇(ホームゲームの場合)、今シーズンはチーム結成以来はじめて41のホームゲームのチケットを完売した。

では、チームの成績が上がることでホームタウンにもたらす経済効果とはどの程度なのか?シカゴ大学ビジネススクールの調査によると、New York, LA, Chicago, Dallas, Philadelphia, Miami, Washington, Boston, Cleveland というNBA人気チームが拠点を構える都市では、人口の5%がプレイオフゲームにだったら100ドル余分に支払ってもいいと回答した。クリーブランド以外は人口が5百万人を超える都市なので、その5%が100ドル余分に払うとしたら、相当な収入増になる(もちろん収容できる客員数の範囲で、だけど)。もちろんそれに伴いグッズの売り上げも伸びるだろう。

先日CNNのLarry Kingショーでのインタビューを見ていたら、「クリーブランドの経済に対して責任は感じない?」と質問されていた。いかにスーパースターでも、一都市の経済状況を負わせるのは酷な話。

インタビューでも言っていたけれど、このレベルになるとお金の問題ではない。チャンピオンシップを勝ち取れるチームメートとコーチが揃ったチーム、ということがこの25歳にとっては本当に一番大事なのだ。

2010年6月21日月曜日

次のツイッターは誰か。カギはソーシャルゲーム、それとも地域情報?

シリコンバレーの動きは早い。去年世間を騒がせたTwitter (ツイッター)はメインストリームになりすぎて鮮度が落ち、昨年ほど騒がれることはなくなった。では次にツイッター並みに世間を騒がせるのは誰か、ということに注目が集まる。

最近急成長の会社は?と言われて、まず名前が思い浮かぶのが Zynga(ジンガ)FourSquare(フォースクエアー)だ。

ジンガとはサンフランシスコに拠点を持つソーシャルゲームの会社で、わたしの周りでもここに転職する人がやたらと多いこともあり(それだけ急激に拡大している)、最近やたらと名前と聞くことが多い会社の一つだ。フェースブックにアカウントを持っている人だったら、一度は友達の使うジンガのゲームアプリからメッセージを受け取ったことがあるかもしれない。

ジンガのビジネスモデルは、ソーシャルネットワーク(主にフェースブック)にあってこそ初めて成り立つという、「ソーシャルネットワーク依存型」だ。いまやジンガ自体の世界中のアクティブユーザーが月間2億4千万人を超えていることを考えると、フェースブックにとって大きな存在に成長しつつあることは間違いないが、それでもフェースブックありきのジンガという構造は変わらない。

その証拠として、両者の2008年11月以来の月間ユーザー数の推移を見ると(以下のグラフ)、フェースブックの伸びに引きあげられるようにジンガのユーザー数も伸びているのがわかる。ジンガの成長の裏にはフェースブックの成長が大きく貢献しているのだ。



では「ソーシャルゲーム」とは一体何者なのか?

ジンガの代表的なゲームFarmVille(ファーム・ヴィル)を例にとってみよう。このゲームでは、ユーザーが農地を与えられて野菜を収穫しながら資産を増やし、その資産で新たな畑を買ったり、農耕機具を買ったりして、さらに資産を増やしていく。その拡大の過程でフェースブック上の友達を農民として近所に招いて、単体の農家から農村を築いていくのだ。つまり一人で自分の資産を増やしていくのではなく、ソーシャルネットワーク上の友達を利用することでさらに高得点を勝ち取れる仕組みになっている。最近ではフェースブック上でジンガ関連の招待メッセージがスパムのように溢れかえり、フェースブックが最近禁止するという措置を取るまでになった。大きな影響力と急増するユーザー数の証とも言える。

このジンガ、今日の上場価格は50億ドルにものぼると噂されている(ソース: SecondShares.com

この新しい概念「ソーシャルゲーム」、中国ではすでにビジネスとして確立された分野で、4つの会社がすでに上場を果たしている。収入の合計は33億ドルにのぼり、マージンは50%を超えるというもっともおいしいビジネスの一つとされているのだ。この例からもわかるように、この分野が魅力的なのは異様に高いマージンが狙えるという点。コンピューターゲームや映画のように精密なグラフィックが売りなわけではなく、漫画のような単純な動きのキャラで十分とされるので、ゲームの開発費が莫大にかかるわけではない。また、一端起動に乗れば運営費が大してかかるわけでもない。

実際ジンガも、同じコンセプトをリサイクルして新しいゲームとしてリリース、ゲームのラインアップを増やしている。農村で成功したら、次は漁村(フィッシュビル)、そしてカフェ経営(カフェ・ワールド)やマフィア組織(マフィア・ウォーズ)、など要は同じ仕組みでバーチャルグッズを購入、ソーシャルネットワークを通して友達と連携することでビジネスを拡大していくという単純なモデルを、設定を少しだけ変えて繰り返しているのだ。

ではこのモデル、おいしいだけでリスクはないのだろうか?

最大のリスクは、ソーシャル・ゲームという他社のリソースの上に成り立つという危うさだ。フェースブックの乗り入れ停止処置のよ うに、SNSのポリシー次第で運命が左右されてしまう。それはギブ&テイクの提携モデルの危うさでもあるが、ソーシャル・ゲームが受ける痛手はさらに大き い。

また、真似しやすいということもリスクの一つとして上げられる。ゲーム自体とてもシンプルだし、高度な技術を駆使しているわけでもないので、誰でも簡単にコピーできる。

また最近ジンガを悩ませているのは、そのビジネスモデルに対する批判的な報道だ。小額だからいいかと少しずつバーチャル・グッズを購入していくうちに、気づいたら高額使っていたというユーザーからの不満の声が増えている。わかりにくい課金体系や不透明さに批判が集中するのは、家で時間を過ごすことの多い主婦ユーザーをターゲットの一つとしているからかもしれない。

「ソーシャルゲーム」に加えて、もう一つの今年のトレンドは「ローカル(地域情報)」。そしてその代表が、ニューヨークに拠点を構える 「foursquare」と呼ばれる位置情報をもとにした、iphoneのアプリから人気に火がついたサービスだ。

GPSつきのスマートフォーンを使って、自分のいる位置、特にレストランだったりカフェだったりバーだったり、もしくは花屋でもコンビニでもいいんだけど、何か目印になる場所にいるときに「自分がここにいる」という印を残すもの。これを「チェックイン」と呼ぶ。

この「チェックイン」をするたびにポイントが与えられ、新しい場所を発見したり、遠いところでチェックインしたら特別な「バッジ」が、また12時間以内に10回チェックインしたらこれまた特別な「バッジ」がもらえたりする。「バッジ」とは勲章のようなもので、ステータスとしてどれだけバッジを稼いだかを友達に見せびらかすことができる。まるで子供をあやすみたいにご褒美がどんどん与えられるので、うれしくなってさらにはまっていくという仕組みになっている。

わたしも最近サンフランシスコでブランチに立ち寄ったカフェで「チェックイン」したら、大して広くない店内(せいぜい30人くらい)で、すでに3人がチェックイン済みでびっくりした。

一番多く「チェックイン」した人には、「Mayer」(市長?)という照合が与えられ、そのレストランから特別なサービスが受けられたりする。また5回以上チェックインした人にはコーヒーが無料になったり、デザートがサービスになったりと、地元のビジネスにとっては今までオンラインで接触することの難しかったお客さんを直接呼び込む協力なツールとなっている。

このfoursquare、今年の3月初め時点で50万ユーザー以上を確保、140万のロケーションが登録、そして1550万の「チェックイン」がすでになされている。そしてその成長はいまや携帯のアプリ経由だけでなく、ウェブサイト経由に拡大している。このウェブサイトにもっともトラフィックを呼び込んでいるのは、またもやFacebookだ。33%のトラフィックがFacebook経由となっている。Google 22%, Twitter 8%を合わせても届かない影響力だ。これまたソーシャルネットワークがトラッフィックドライバーとしてますます影響力を強めている裏付けと言えるだろう。また、そのサービスや会社に関連する検索数がどれだけ伸びているのかというのも良く認知度の目安として使われるのだが、その検索数の伸びも目覚ましい。



以上のグラフで緑の線は、アメリカ市場での総検索数に対して foursquareに関する検索数の割合を示している。 今年2月に0.00032%まで急激に伸び、その後少なくとも数週間は、安定しているように見える。0.00032%というととてつもなく小さい数に思えるが、アメリカ全体での日々の検索数が数億に上ることを考慮すると、実際にはかなりの絶対数になる。

一方で赤い線は、foursquareへのトラフィクの伸びを示している。アメリカ市場全体でクリック数の中で、foursquareに流れるトラフィックの割合を示したものだが、こちらからもトラフィックが急激に伸びているのが顕著だ。

この’foursquare’、最近ではハーバード大学、ウェールストリートジャーナル、ペプシと連携したりして、着実に認知度を高めている。

このグラフのデータが集められた直後の3月後半には、10日で10万以上の新規ユーザーを獲得、結果的に60万ユーザーにまで達したというデータも出ている。

また最近のFoursquareの発表によると、チェックイン数は2,200万までに達したとのこと。まだまだTwitterの5,000万Tweet(1日あたり)には及ばないものの、1年足らずの会社にしては快挙と言えるだろう。また、 一日中同じ場所にいても何回でも投稿できるtwitterと違って、物理的にその場にいかないとチェックインできないことこのサービスでは、一日あたりに可能なチェックイン数も必然的に限られるので、Tweet数に劣るのは当然と言えば当然。

Foursquareも前述のジンガと同様、IphoneやFacebookといった他の会社のプラットフォームを基盤に成長しているプロダクトだということ点が特徴だこれは賢い反面、リスクでもある。アップルがアプリの審査基準や課金体制を変えたり、フェースブックがポリシーを変えたら、打撃を受けるのは目に見えている。

これまたジンガのモデルと共通しているのが、真似しやすいということ。特に複雑な作りでもないし、インフラに大した投資が必要なわけでもないので、プロダクト的に真似するのは難しくはないはずだ。実際、ジンガが手がけるソーシャルゲームは国内国外ともに競争が高まっている分野の一つだし、Foursquareのような地域情報系についても、アメリカ国内だけでもYelp, Gowallaと言った強力プレーヤーがすでに存在している

この2社のいずれかが次のツイッターとなるのか、もしくは関連分野の競合がその地位をさらうのか、今年後半の各社の動きが注目される。

2010年5月30日日曜日

ケーブルテレビとiphoneアプリのコラボ

CNN、NBCやABCなどの大手テレビ局が、facebook, twitter, myspaceなど、今やソーシャルネットワークの王道となったサービスを駆使して、若い視聴者に向けて「ソーシャル性」をアピールするようになってしばらくたつ。今や大手テレビ局と大手ソーシャルネットワーク同士の連携は珍しくなくなってきたが、最近は、比較的マイナーなケーブルテレビ局とネットを中心に展開しているスタートアップ系のサイトがコラボレーションしているケースを、見かけるようになってきた。

例えばリアリティーショーを主に取り扱っている「Bravo」というケーブルネットワーク。2002年に始まったNBC Universalの系列ネットワークで、主な番組に'Top Chef', 'Project Runway', 'Shear Genius' などがある。駆け出しや無名のシェフ、デザイナーやヘアースタイリストがその技を競って優勝のタイトルを目指すという筋書きで、日本でも馴染み深いありがちなコンセプトだ。その番組ラインナップに最近、「Launch my line」 という番組が加わった。これはファッションデザイナーと業界人(スタイリストだったり、音楽関係者だったり、イベントプランナーだったり、様々な業界の達人だったりする)がチームを組んで、業界人の発想をデザイナーが洋服という形にする。勝負のポイントは、必ずしもハイファッションに求められる斬新さとか洗練性ではなく、どれだけ一般人に売れそうかというところにある。つまりファッションショーで話題になるよりも、デパートに置いたときにどれだけ一般のお客さんが買ってくれるか、という観点から審査される。毎回1組が脱落し、最終的に残った優勝者は自分のブランドを立ち上げて販売することが確約される。

この番組がパートナーとして選んだのは、高級ブランドのアパレル商品をアウトレット価格で販売するショッピングサイト「Rue La La」。各ブランドが抱えている売れ残った在庫を格安で販売するサイトだ。在庫数に限りがある上に購入できる期間を1〜2日に限定するので、ある種のゲーム感覚がそそる。日本にも進出しているギルトグループと並んで、この手の高級ブランド品割引サービスの代表プレーヤーだ。昨年末にGSI Commerceに3億5千万ドルで買収されたことでも話題になった。

さて、そのコラボの内容だが、番組内で各チームがデザインした洋服をこのサイトを通して実際に購入できるという単純なもの。デザイナーにとっては自分のデザインの商品性(ビジネス性)を試す絶好の場だし、RueLalaとしても人気急上昇のケーブルネットワークを通して名前を全国に宣伝する絶好の機会となった。

Bravoの目玉番組の一つ、「Project runway」も似たようなコラボを行っている。この番組はデザイナーとしてのビジョンとか技量を競う番組で、商品性とかビジネス性というよりもファッション性を競う番組だ。ホストに人気スーパーモデルのHeidi Clum、審査員には有名デザイナーのMichael Korsなど、ケーブルテレビとしては豪華な顔ぶれを揃える。この番組では、「launch my line」と似たコンセプトで、番組内でデザインされた服を「bluefly」というオンラインショッピングサイトで販売している。

Bravo はこれ以外にも「Foursquare」というロケーションベースのサービスと手を組んで、面白い取り組みを展開している。Foursquareは人気急上昇中のiphoneのアプリで、GPS付きの携帯を利用してユーザーのローケーションやその近辺のスポット(レストランやカフェ)を認識、ユーザーがその一つに入店したら「チェックイン」できるというサービス。自分の友達がどこに「チェックイン」したかがわかったり、あるレストランにある一定数以上「チェックイン」するとコーヒーが無料になったり、という特典が与えられる。

そんなサービスとリアリティーショーにどんな関連性があるのか?

リアリティーショーと言えば、ここ数年ますますその幅を広げていて、その結果「有名人」の定義をも変えつつあるほどだ。女優や歌手などの典型的セレブ人とは違って、要は単なる目立ちたがりな一般人だったり、何かの技能を持った職人だったりするのだが、人気番組の参加者の知名度は驚くほど高いのだ。シーズン性が高いために番組が終わると忘れられるのも早いが、番組放映中だと下手なB級俳優とかよりも全然知名度が高かったりする。一方で、芸能人のように特定のものを宣伝してコマーシャルのようになることもないし、お気に入りスポットの情報を発信するのも一般人の感覚で気軽にできる。

BravoとFrousquareはそんな点に注目した。発表によると、Foursquareのユーザが全国500以上にのぼるBravoのおすすめスポットに行くたびに、ポイントを稼ぐことができる。各おすすめスポットはリアリティーショーの登場人物によるものだったり、関連がある。スポット巡りをする過程で思わぬ商品がもらえたり、抽選に参加する権利を得たりできるので、まさにゲーム感覚そのもの。

テレビ会社と言えばメディアの王様、大組織で腰が重く、ビジネスパートナーとしても各業界大手しか相手にしない古いイメージが強かったが、そんな伝統的な業界もネットによってもたらされる危機感によって態度を変えざるを得ない。また一方で、大手テレビ局以外に数百ものケーブルテレビ局が名前を連ねる今、リスクを恐れずに実験的な番組を展開しようというケーブルテレビ局も多く、その一環として実験的にスタートアップと組んで何か面白いことをしてみようという意欲も高いようだ。テレビ界も他の伝統的な業界の例外でなく、敷居が低くなってきたということだろうか。

日本のテレビ局はまだまだお固いイメージが強いけど、NHKのアナウンサーが視聴者からのTweetを紹介する日も近いかもしれない(?)

2010年4月11日日曜日

太っ腹グーグルとケチなアップルー買収合戦を勝ち抜くのはどっちか

世界で一番有名なベンチャーキャピタルと言っても過言ではない、天下のセコイア・キャピタルが投資先の企業のマネージメントに向けて送った56枚のパワーポイントが出回ってから早くも1年半近くたつ。そのテーマは「 Get Real or Go Home.」(目を覚ませ、もしくはさっさとあきらめろ)。

起業家に向けて「強気な成長や野望よりも、堅実で現実なビジネスプランを」と訴え、地に足を着けた経営、コスト削減、成長率・売り上げ予測など予測の見直し、品質向上、リスク回避、借金をなくすなどのアドバイスをした上で、今後当面は企業の買収合併数も買収金額も減り、上場も難しくなると予想していた。

確かに不景気で急減した企業の買収合併数だが、最近またちらほらと大型案件が動いている。

JPモルガンによる今後のトレンドとしては、バクチ的でリスクの高い買収や投資は減り、堅実な買収が増えると予測されている。つまり、確実に伸びるだろうとされている業界で、ビジネスモデルもすでに成り立っている(収入源がしっかりと確保・証明されている)ようなベンチャーが買収先として注目される。

そしてもう一つのトレンド予測としては、借金のほとんどない大手の超優良企業による買収が増えるだろうということ。他の企業がビジネスの立て直しに精一杯な中、マイクロソフトとかシスコに代表されるようなキャッシュがあり余っている企業が圧倒的に有利、ということになる。つまり先述のセコイアのアドバイス、「買収額が下がる」というのを逆手に取って、大企業は競争が少ないうちに手堅い買収案件をしっかり押さえておこうというのだ。

昨年末に買収合戦で世間を騒がせたのは、グーグルとアップルによるモバイル広告プラットフォームの買収だ。グーグルがモバイル広告プラットフォームを提供するAdMobの買収を発表した途端、アップルがそのライバルであるクアトロ・ワイヤレスの買収を発表。ライバル関係が強まる一方のグーグルとアップルという大物による買収で、しかもモバイル広告という、今後の成長が確実なビジネス(特に発展途上国を含めた世界的な成長)という組み合わせを考えれば、先述のJPモルガンのコメントがすんなりと当てはまる。

また、地域レストラン情報を提供して急成長を遂げるYelpは、FacebookやTwitterと並んで買収先として常に注目を浴びてきたが、ヤフーとグーグルの買収に興味を示した結果、どちらも手を引くという不可解な結果になっている。地域情報系のビジネスはこれまた確実に伸びるとされているし、ソーシャルネットワークとかと違って、収入が得られるビジネスモデルもそれなりに確立していることを考慮すると、キャッシュを持て余す大手が目をつけないわけがないだろう。

このようにいくつかの例を見てみても、大物がここぞと手堅い分野で手堅いベンチャーに対しての積極的な買収ゲームを繰り広げているのは、確実なトレンドのようだ。

上のモバイル広告の例にもあったように、「大物」の筆頭を走っているのは、グーグルとアップルだ。何かと比較されて love - hate relationship(好きだけど嫌いという複雑な心境?)な関係を築いてきたこの2社、買収合戦によってその複雑な関係にさらに拍車がかかっている。グーグルが携帯ビジネスへの本格参入を表明しはじめた頃から、その敵対関係はあからさまになってきた。結果として、昨年にはアップルがiphoneアプリの審査過程で、電話機能を置き換えるグーグルヴォイスのアプリを承認しなかったり、グーグルのEric Schmidtがアップルのボードメンバーから外されたりと、さまざまなドラマがあった。

数年前まではマイクロソフトを共通の敵として連盟を組んでいたように見えていたこの2社だが、その関係についに亀裂が入り、今ではかつてのマイクロソフトとアップルのような敵対関係になっている。それに加えて、メディアが敵対関係をあおるような記事を書く。芸能人のゴシップのように脚色され、ある意味、シリコンバレーのギークたちにとってのリアリティーショーと言ったところだろうか。

この2社の今までの歴史を比較すると、アップルは比較的「ケチ」で、あまり熟したベンチャーを高値で買おうとはしない。一方のグーグルは先行き不明で未熟なベンチャーを安く買うよりも、ある程度成功の目処がついた、熟したベンチャーを高額で買うという手堅い買収を好む傾向にある。

今までの2社の買収の歴史を見てみよう。また、アップルとは以前敵対関係にあったが、今となってはサーチビジネスでグーグルと敵対関係を築き始めたマイクロソフトもこの2社にとっては欠かせない役割を担っているので、三角関係への複雑化する要素として追加したい。ちなみに、データもとはグーグルアップルマイクロソフトともにWikipediaです。

折れ線グラフは年ごとの買収金額の推移を、棒グラフは年ごとの買収案件数をカテゴリごとに示している。(2010年3月14日時点でのデータ)

注意してもらいたいのは、すべての買収額が公表されているわけではない、ということ。年によっては5つも6つも買収が行われたにも関わらず1件も買収額が公表されていないためにゼロのように見える年がある。また、ゼロでない年についても、半分以上の買収は額が公表されていないことをご考慮いただきたい。例えばマイクロソフトは2006年に18もの買収案件があったが、金額が公表されているのはたったの1件のみ、というように、実際の合計金額を推測するのはほぼ不可能だったりする。点が欠けている年については、買収が行われたものの金額の公表されている案件が一つもないために、プロットする点がないというケース。

それでも大きな買収、例えばグーグルについてはトップ3に入る買収案件(Youtube, DoubleClick, Admob)は含まれているので、ある程度の指標にはなると思う。

折れ線グラフは買収額の推移を示したもの、そして棒グラフは買収案件数の推移をカテゴリ別に示したものになっている。カテゴリ分けについては、会社ごとに特徴があって、例えばグーグルの場合はどの部署に統合されたか、というグーグル内の部署/サービスごとに考えた方がわかりやすかったので、あえてカテゴリーを揃えていない。

欲張ってカテゴリを細かくしてしまったので見づらいかもしれないけど、大まかにでもトレンドが読み取ってもらえるのではないだろうか。



まず3社共通して言えるのは、買収先の業界分布が各社のプロダクト戦略を反映していて、その重なり部分がどんどん大きくなっているということ。

例えば最近のマイクロソフトは、モバイルやサーチ(検索)関連の案件が増えている。それらはグーグルの創設以来のコアなビジネスだったが、そのグーグルと言えば最近では、広告やモバイルに加えて、ドキュメント機能やメールなどのコミュニケーション、また写真やビデオのマルチメディア系にも力を入れている。それらは、数年前まではマイクロソフトやアップルの領域だったもの。

2001年には買収相手に関して共通点がなかった3社だが、ここ数年のリストを比べると、モバイル、ゲーム、サーチ(検索)、アド(広告)と言った分野で競争が加速していることがわかる。

また、全体的にアップルは買収額が低い(ずべての案件金額はカバーしていないものの)こともすぐにわかるだろう。アップル=ケチというイメージはこんなところにも現れているのかもしれない。

グラフ中には現れていないが、各案件の詳細を見ると、アップルの場合は買収先がアメリカ企業に集中している一方で、グーグルは早い段階から海外を視野に入れていることが顕著だ。一方のマイクロソフトは歴史が長い分、買収案件の数も多く、当初はアメリカ集中だったが2001年頃からは海外案件が着実に増えている。

創立されたタイミングからしてもネットという業界の性質からも、グーグルが早い段階から海外を視野に入れていることは驚きではない。

最後に、驚いたのは、この記事を書いている数週間の間にもグーグルが次々と買収案件が発表されていったこと。今年に入って毎月1件以上のペースで買収を決めているようだ。今後ますます競争が激しくなることが予想されるこの2社(マイクロソフトも入れると3社)、それぞれの異なる買収戦略が勝負の分け目となるのか。

2010年3月3日水曜日

シリコンバレー版オノボリさん

アメリカは人種のつぼ、って良く言うけど、ここシリコンバレーには特殊な人種マップがある。まずはアメリカ生まれアメリカ育ちのアメリカ人。この中にはヨーロッパ系、ヒスパニック系、アフリカンアメリカン系、アジア系など人種的にはさまざまな「アメリカ人」が含まれる。ここに属する人たちは単に「アメリカ人」と呼ばれるか、「○○系アメリカ人」と呼ばれる。

一方で、仕事や教育を求めて世界各国から集まってきた人たち、つまり移民や一時的にシリコンバレーに滞在する留学生とかビジネスマン、エンジニアなどがいる。出身はヨーロッパ、南米、オセアニア、アフリカ、そして今や数的には主流となったアジアなどさまざまで、ここに属する人たちは出身国に基づいて単に「○○人」と呼ばれる。シリコンバレーの土地柄上、移民と言っても悲観的な響きはなく、経験を積んだら母国に帰る、というノリの人も結構多い。

ちなみに「アジア人」と言ったときに大抵インド人はここに含まれず、「インド人」として分けて呼ばれることが多い。そういう意味だと「中国人」も別途扱いになることが多い。理由としては、人数が圧倒的に多いことがあるが、それ以上にステレオタイプ化しやすいからだと思う。ステレオタイプ化しやすいのは人数が多いから、とも言えるが。

話を戻すと、ただ2つに単純に分かれるかというとそうでもないわけで、中間に陥る人たちもいる。アメリカで生まれたわけではないけれど、小さい頃にアメリカに移ってきて身なりも行動も話し方も英語もすっかりアメリカ人のような場合は、国籍がどこであろうが、社会的には「○○系アメリカ人」みたいに扱われる。高校からアメリカなどという場合も、若いときからアメリカ社会にとけ込んでアメリカ人の友達が多いことから、社会的には「○○系アメリカ人」のように扱われることが多い。それを超えると「系アメリカ人」の部分が落ちて、○○人ということになる。例えば日本人、フランス人、と言ったように。

逆に言うと、アメリカ生まれの2世でも、環境によっては○○人というアイデンティティーの方が「アメリカ人」という意識よりも強くなることもあり得る。アメリカ全国が西海岸みたいにオープンで人種の豊富なわけではないので、環境がアイデンティティーという意識形成に大きく影響することは容易に想像できるだろう。

つまり、自分が何人かという微妙な境界線は、国籍とか書類上のステータス以上に、どういうコミュニティーとつながっていて、どういう友達がいるのか、と言った社会的なステータスによるところが大きいような気がする。

となると、社会的ステータスを示す俗語が発達するのも自然な流れなんだけど、最近知った関連性のある俗語を紹介したい。

「FOB(フォブ)」っていう言葉、聞いたことあります?「Fresh off the boat」を省略したもので、直訳すると、ボートからおりたばっかりの移民、という意味。多少差別的な印象を与えかねないので、アメリカ人が使うときは注意した方がいいけど、外国人のわたしが使う分には特に問題ない、はず。

要はオノボリさん、と言った感覚?ただ前述のように、書類上のステータスによって定義される「移民」に対して使うというよりも、最近の移民のステレオタイプ化された言動に対して使う場合が多いようだ。たとえば運転が下手だとか、ファッション感覚が主流アメリカ人とちょっと違うとか、クセのある、もしくは良くわからない英語を話すとか。

逆に言えば、アメリカ生まれでアメリカ育ちの人に対しても、「あの子FOBかと思った」とか、「あの子FOBっぽい」というように使ったりする。

先日友達と話してたら(彼女はアジア系アメリカ人)、「あの子はFOBが好みだから、FOBとばっかり付き合っている」と。なるほど、そういう使い方をするのかと興味深く聞いてしまったけど、わたしもFOBの一人でバカにされていると怒った方がいいのかとあとから思ったり。ただ彼女的には、「彼は細い子が好きだから」とか「髪の長い子が好き」という程度で、体の特徴とか見た目とか国籍と同じくらい軽い感覚で使っているのだ。日本社会で言ったら、「東京育ち」か「上京したて」か、程度の感覚だろう。

アメリカ滞在の○○人のカテゴリーの中でも、新入り(少なくともそう見られる)に属するFOBだが、シリコンバレーの大きな原動力の一つになっていることも確かだ。新たなアイディアを吹き込み、シリコンバレーを世界とつなぐ役割も果たしている。今回のような失業率向上に陥るたび、短期的・一時的な解決策を求めてFOBを追い出す意見と、長期的な価値を見てさらに受け入れを促進すべきという意見に分かれるが、新たな風を受け入れないシリコンバレーは、そもそもシリコンバレーではなくなってしまう、ということを忘れてはならないと思う。

2010年2月21日日曜日

悲惨な事故とそれがシリコンバレーに与えた影響

2月17日の朝8時前、いきなり部屋の照明が消えて、テレビが消えて、ネットワークが使えなくなった。何ごとかと思いつつも、うちだけの問題だろうと思って対して気にもせずに仕事に向かったのだが、道に出るなり信号がまったく機能していないのに気づいた。車の中でラジオをつけたら、パロアルト近辺全体に及ぶ大規模な停電だと言う。しかもその原因は、イーストパロアルト市で起こった小型双発セスナ機の墜落事故だった。

住宅2棟に火災があり、そのうちの1棟はデイケアーセンター(児童託児所)だった。幸い地上での負傷者は誰もいなかったが、セスナに搭乗していた3名は死亡。そしてその3名、創立以来話題になって上場の手続きを進めている最中の、シリコンバレー発の高級電気自動車を開発しているスタートアップ、Tesla Motorsの従業員だということも判明した。

ここ最近、このエリアでは朝方の霧がひどくて運転していても視界がひどく悪かったのだが、この事故も霧によるものと思われている。

この事故の結果、パロアルト市広域に停電が起こり、スタンフォード大学や多くのスタートアップもその影響を受けた。幸いスタンフォード大学病院はバックアップの電力でオペレーションへの支障は逃れたとのことだったが、ほとんどの事業所は一日まったく機能しなかったという。パロアルト近辺にある会社と言えば、Facebook、VMWare、HP(ヒューレットパッカード)など240程度の会社がエリア内にオフィスを持ち、それに加えて多くの有名なベンチャーキャピタルが名を連ねる。

その結果、近辺の会社の社員の多くは家に帰って自宅から仕事、もしくは停電の影響を受けなかった近所のカフェに駆け込んだとのこと。多くのベンチャーキャピタリルトやスタートアップが事務所を構えるサンドヒル・ロードにあるスターバックスでは、ラップトップを片手にネットワークを探し求めるビジネスマンで溢れかえったという。

フェースブックと打ち合わせ予定だったわたしの友人も、一日中取り引き先から連絡がないために何ごとかと思っていたら、夕方になって電力が復活してからようやく誤りの連絡が来たという。

あとからわかったことだが、その影響はパロアルト市を超えて、Menlo Park(メンローパーク)、Mountain View(マウンテンビュー)、Los Altos(ロスアルトス)、Redwood City(レッドウッドシティ)など隣接する市の一部にも及んでいた。

住民やこの地域で働く人の間では、事故によって尊い命が失われたことに対するショックは隠しきれない。

それに加えて、この事故から改めて実感したこともある。それは、ネットワークに頼る今の時代、この街はインターネットがないとまったく機能しなくなってしまうということ。あとは携帯が頼みの綱だが、みんなが一斉に電話をかけたりネットにつなげようとしたため、混雑した回線は一日麻痺状態だったという。

結局夕方の5時あたりに回復し、すべてが通常状態に戻った。10時間以上に渡る大規模な停電、IT帝国を築きあげたシリコンバレーの弱点がさらけ出され、あらためてネットへの依存度を実感した一日だった。

2010年2月5日金曜日

逆玉の輿ブームの到来か?アメリカの女性がますます強くなるワケ。

「永久就職」という言葉が象徴するように、結婚と言えば、女性は専業主婦になって男性の収入に家計を頼るというのが、昔ながらの形だった。女性の社会進出が進んでいたアメリカでは、その「依存度」は日本に比べて低かったものの(2009年時点でも仕事をする女性の率は日本で67.5%、アメリカ72.3%、そして北欧は80%以上)、一家の稼ぎ頭はやっぱり男性、というのは万国共通。ただし最近、アメリカではその関係がついに揺らぎ始めているようだ。

Pew Research Centerが今年一月に、アメリカの最近の結婚事情の変化を裏付けるデータを発表した。その中で、1970年と2007年での女性の収入と学歴の変化、そしてその傾向が男性の経済状況に与える影響、特に結婚による影響について触れている。

1970年の男性と言えば、家族全員を一生養っていく責任が一人の肩にズッシリとのしかかっていた時代。その頃に比べると、女性の社会的な地位や役割が大きく変わり、男性にとって結婚による経済的負担が軽減したということは容易に想像できる。いまや一人の肩にかかっているというよりも、二人で一緒に担いでいる、といったところだろうか。その分家事も2人で分担することになるわけだがら、それを男性がラッキーと考えるか、アンラッキーと考えるかは人それぞれだろうけど。

では実際にどの程度、男性への経済的負担は減ったのか?女性が「一家の稼ぎ頭」になるまでに変化したのだろうか?

まず奥さんの収入がダンナの収入を上回っている家庭の比率を見てみると(30〜44歳のみ対象)、1970年では4%にすぎなかったのが、2007年には22%にまで上昇したという結果が紹介されている。ということは、いまや家庭を持つ男性のほぼ4人に1人は、女性が一家の稼ぎ頭を担うという、ラッキー(?)な状況にあるということだ。

以下のグラフは、既婚女性、独身女性、既婚男性、独身男性という4つのカテゴリごとに、アメリカにおける一家庭あたりの平均収入を1970年から2007年にかけてプロットしてものだ。条件を揃えるために多少の修正が入っているので、絶対値よりも各カテゴリの伸び率に注目してもらいたい。

1970年から2007年にかけた平均伸び率を比較してみると、既婚女性は60%、独身女性は59%、既婚男性は61%も上昇しているのに対して、独身男性群の伸びは16%に留まる。

つまり、男性が結婚することによって得る経済的メリットがどんどん上昇していることになる。昔は男性にとって経済的「負担」とされていた結婚が、いまでは「お得」な結果を生み出しているのだ。



では、カリフォルニアに焦点を移してみたい。

California budget projectによると、カリフォルニアでの一家あたりの平均収入は1979年から2005年にかけて9.6%あがった(数値は、インフレなど調整した結果)。ただ女性の収入をカウントしなければ、一家族あたりの平均収入は3.1%低下する計算になったとされている。

また、カリフォルニアでは女性の平均収入は74.3%あがったと言うから、前述の全国平均59〜60%に比べると平均以上に高い伸び率を示したと言っても過言ではないかもしれない。もちろん、データの提供元も計算方法も異なるし、全国平均は「一家庭の平均収入」であるのに対してカリフォルニアの数値は「女性の平均収入」なので、これまた一概には比較できないのだが。

さらにエリアを狭めてシリコンバレーに目を移してみると、どうだろう。アメリカの中でも一位二位を争って高い平均収入を記録するエリアで、かつ働く女性も多いので、男性が結婚によって受ける経済的負担は全国平均よりも低い(つまり経済メリットは大きい)ように想像できる。

ではシリコンバレーの夫婦は、結婚によって経済的な余裕を楽しんでいるのか?というと、現実はそうは甘くない。

仕事があるところに労働力が集まり、人口が増えて需要が高まるので物価があがる。特に家の値段の上昇はハンパなく、その結果、2人とも頑張って働かないと生活が成り立たないという、悲しい悪循環に陥っている。つまり男性女性に関わらず、いまや一人の収入源では余裕のある生活ができないという、異常な物価上昇に悩まされているのだ。。。でも少なくとも男性にとっては、自分の肩だけに生活がかかっているというプレッシャーが逃れられるだけでも朗報なのかも?

そして最後に触れておきたいのは、それでも男女間の給料のギャップは存在する、という現実。女性の平均収入が男性の52%だった1970年に対して、2007年には71%にあがっているものの、同条件への男女間の収入のギャップはいまだに存在する。カリフォルニアも例外ではないが、2006年には84〜92%とその差は全国平均よりは小さいようだ。そしての高給取りになればなるほど、男性優位の傾向は強まるというデータも出ている。

このギャップが解消すれば、奥さんの経済力がますます高まり、男性は大喜び?それとも、経済力に伴ってますます強くなっていくアメリカの女性に対して、複雑な心境だったりするのかも。。。

2010年1月25日月曜日

Twitter(ツイッター)、バレンタインにも一役買う?

アメリカで1860年以来、メッセージ入りのキャンディーを作り続けているNECCOが、今年のバレンタインに向けて、キャンディーにスタンプされる新たなメッセージを発表した。投票によって決められた今年の愛の人気メッセージの上位は、1位から10位まで順番に、'tweet me', 'text me', 'love bug', 'you rock', 'sweet love', 'me + you', 'sweet pea', 'love me', 'soul mate', 'puppy love'。

'call me'は20世紀のメッセージだとしても、10位くらいには入ってもよさそうな'email me'でさえ、一世代前の言葉になってしまったという個人的にはショッキングな結果。。

このNECCO、キャンディーを作っている伝統的な製菓会社にしては最近のテクノロジーへの対応に頑張っていて、iphoneのアプリまで開発している。このアプリ、何をするかと言うと、Twitter(ツイッター)のアカウントから5つまでメッセージつきのバーチャルキャンディーを、相手のTwitterのアカウントに送れるようになっている。

150年の歴史を持つキャンディー会社と、この数年で爆発的に人気の出たtwitter。一見共通点がないように見えるだが、実は大きな共通点がある。それは限られた文字数の中でいかにメッセージを伝えるか、ということ。Twitterの140文字という文字数制限はすでに短く感じるが、一方のキャンディーはせいぜい7文字くらいが限界という、twitterの究極版なのだ。

ちなみにこのコラボに関して、2つの会社間で金銭のやり取りはまったくないらしい。NECCOにとっては、キャンディーを使ってTwitterを宣伝するのが目的ではなく、あくまでも社会現象を反映した結果だから、とのこと。確かに日本語の「グーグる」の例にもあるように、会社名やサービス名の動詞化は、大成功の一つの証かもしれない。

2010年1月5日火曜日

オバマは大企業のCEOになれるか

ここ最近に始まった話ではないが、シリコンバレー系の企業で重役を勤めた有名人たちが政界に進出するケースが増えてきている。最近良く目にするのは、1998年から2008年までebayのCEOを勤め、共和党からカリフォルニア州知事に立候補宣言したMeg Whitman(メグ・ウィットマン)。そのMeg Whitmanが2008年の大統領選時に支持表明した、マサチューセッツ州知事のMitt Romney(ミット・ロムニー)も、もともとはコンサルティング会社Bain & CompanyのCEOだった。2003年から2007年まで州知事として勤めていて、2012年の大統領選にも再度出馬を表明するだろうと見られている。

元大企業のCEOと言えば、HPのCEOだったCarly Fiorina(カーリー・フィオリーナ)も2008年にオバマと大統領選を戦った共和党John McCain(ジョン・マッケイン)の経済アドバイザーを勤めていて、最近ではカリフォルニア上院議員選に出馬するのではと噂されている。

またそこまでの有名人でないとしても、シアトルでは元マイクロソフトの重役が数人こぞって政界に進出しているという話もある。

ここでふと疑問に思うのが、「成功したビジネスマン、もしくはビジネス経験の豊富な人材は政治家としても成功できるのか」ということ。そして逆に、2008年の選挙戦を騒がせたObama(オバマ), McCain(マッケイン), Biden(バイデン)やPalin(ペイリン)などは、ビジネス界でリーダーとしての素質を発揮できるのだろうか?(この4人全員が必ずしも政治家として成功しているとは言えないので、「ビジネス界で」ではない点を強調させてください)

前述のCarly Fiorinaが、最近公の場で「今の政界を仕切っている政治家たちは、HPのような大企業を動かしていくことは決してできない」と発言している。皮肉な見方をすれば、彼女自身のCEOとしての評判は散々だったので、CEOとして成功しなかった自分でも政治界では成功できる可能性があると密かにアピールしているのかもしれない。

では、企業のCEOに必要な素質とは何だろう。そしてそれは政治界でのリーダーのそれとどう異なるのか。

大きな企業でCEOの地位まで上りつめるためには、能力や経験はもちろんだが、自分を売り込むことに長けていることが必須だ。自己主張が強く自分のポジショニングや売り込みがうまくなければ、大企業のトップにまで上り詰めることは不可能と言っても過言ではない。わたしの個人的な経験からしても、アメリカ人の自己アピールはハンパじゃない。日本的な遠慮とか周りへの計らいとか言っていたら、言葉通り蹴落とされてしまう。ただ、一度トップの地位に着いてしまうと、アピールする対象と相手が一転する。今度は、自分が他の社員よりも優れていることを社内の上司にアピールするのではなく、社外に対して、会社全体そして自分が動かすチームがいかに有能かを売り込むことが要求される。

また会社のトップともなれば、投資家や金融アナリストなど、社員とは違った観点で会社を評価する、厄介な部外者を相手にしなければならない。例えば短期的なリターンを求める投資家に対しては、社内での長期的戦略をサポートする数値は大して評価されない可能性がある。さらに厄介なことに、彼らは会社のトップであるCEOよりも力や発言力を持っているのだ。

違った目的を持ったさまざまな関係者たちの多様な期待に応えられるよういかにチームをまとめられるか、がカギになる。一人でやり遂げる規模のことではないので、社員からの信頼は必須で、その点はボランティアをまとめて市民や国民にアピールしていく政治家と似ているかもしれない。

ということは、成功したCEOは政治家としても成功する素質があるということか?

Steve Jobs(スティーブ・.ジョブス)を例にとってみたい。学歴的には大学の途中で退学、マネージメントのトレーニングなども受けていないなど、履歴書上では政治家としては失格になりかねない。ただジョブスがCEOとして失格だという人は、誰もいないだろう。

彼はエンジニアとかデザインとかファイナンスといった狭い分野のエキスパートではなく、大きな視野と方向性を持ち、エキスパートの集まりであるチームをその方向に導くことができる、いわゆる「ビジョナリー」だ。それに加えて、そのビジョンを達成するために良い人材を選ぶ目を持っていること、そして厳しいながらも必ず結果を出すという徹底したスタイルが特徴だ。カリスマ性がスキルと言えるかどうかは微妙だが、少なくとも影響力とか威圧する雰囲気や、良い人材を選ぶ目というのは、政治家としてももっとも必要なスキルの一つだろう。

ではそんなスティーブ・ジョブスは、政治家として成功できるのか。古い慣習が残るだろう政治の世界では、年功序列とか系列とかあるから、そこまで他人にシピアだと衝突は避けられないだろう。ビジョンを持ちながらも人にうまく合わせる(というか、合わせているという錯覚に陥らせながらも実は自分のペースに持ち込む)ことが必要で、ある程度の配慮や根回しは避けられない。

またジョブスの結果主義という点でも、数値で結果が出やすいビジネス界とは異なり、政治家の結果はなかなか定量化しにくい。ビジネス界のリーダーは定量的に評価されることに慣れていて、逆に言えば、自分の部下の評価も数値に基づくところが大きい。一方の政治界では、自分の右腕だったりサポーターの評価はなかなか定量化できない。一言で「良い人材の選択」と言っても、「良い」の定義が異なってくるため、選りすぐりの人材を選ぶ観点もスキルもまったく同様ではないことがわかるだろう。

つまりリーダーとしての素質とは基本的には同じだけど、ビジネス経験が政治家としての成功を保証しているわけでは決してない。また逆も然りで、協調性や同調することばかりを探っている政治家は会社の致命的な決断のタイミングとか舵取りをミスしてしまう可能性が高いと想像できる。

ただ一つ確かなのは、ビジネス界出身の政治家が増えていることが証明しているように、シリコンバレーを中心に、テクノロジー系のビジネス経験者の、政界への影響力は強まる一方だということだ。