2013年9月18日水曜日

腕時計型端末やフィットネス系アプリを持つだけで健康になったり痩せた気になりがちだけど、実際、運動やダイエットとしなくていいわけではない、という耳の痛い話。


サムソンが、今月25日に腕時計型端末を販売すると発表した。アップルも腕時計型のウェアラブルコンピューター「iWatch」の詳細がいつ明かされるのかも、注目される。最近、アップルがナイキのリストバンド型計測機器の開発に貢献したJay Blahnik(ジェイ・ブラーニク)を採用したことで、「iWatch」にはフィットネス機能が備わるのではという憶測を呼んでいる。

フィットネス機能は、腕時計型端末によってさまざまな可能性が広がる分野だと言える。

腕時計型端末単体ではなく、デスクトップ、スマホからゲーム機まで、様々なハードウェアと連携することによって、今まで統一的に集めて分析することは難しかったデータの収集が可能になる。その結果、消費者の「ヘルスとフィットネス」の向上を促せる。

まだ若い分野ではあるものの、腕時計型端末、アプリ、ゲーム機で動くソフトウェアなど、ここ最近で急速に競争が激しくなってきたのも事実だ。

プロダクトごとに、目的は微妙に違うし(ダイエット、健康管理、トレーニングなど)、対象としているユーザーも異なる。例えばハードコアなアスリートと普段ジムになんてまったく行かないけどお腹が気になってきた人では、ゴールへの達成方法も変わってくるからだ。ただしほとんどのプロダクトが、レベルごとのメニューやサービスを提供していて、幅広いユーザーが使えるようにはなっている。

最近はやっているサービスをいくつか紹介したい。まずは最近はやりの、腕時計型端末から。

まずはFitbit(フィットビット)。これは腕にはめるバンドのような端末とそれに連携するスマートフォンのアプリで、使い道はシンプルだ。値段が比較的安いこともあってか、わたしの周りではこれを使っている人が一番多い。サイト経由でカロリー計算したりもできるようだが、万歩計のように使っている人が多いように見られる。日々の活動量をはめているだけで自動的に記録してくれて、友達と比較してランキングを公開する。あるレベルに達すると「バッジ」がもらえたりするので、ちょっとしたゲーム感覚で運動をトラッキングできる。

Jawboneが出しているのは、「Jawbone Up」。これもフィットビットと似ていて、バンドを腕にはめ、スマートフォンのアプリを通してデータを見る。トラッキングするのは、活動量、睡眠パターン、食事のカロリーと栄養素などだ。基本的な活動量と睡眠は自動的に計測してくれるけど、それ以外は、多少の入力が必要だ。

Basis(ベイシス)は心拍数とかどれだけ汗をかいたかとか、もう少しニッチなデータまで集める腕時計型端末だ。また時間のディスプレイがあるので、実際に時計として使える。この点はNike+ FuelBandも同様で、それが故には多少ごついデザインになってしまうのと、更なる機能がついているため、上の2つと比べると70〜100ドル高い。

腕時計型端末の課題は、データの正確性とかスマートフォンとの親和性(いかに迅速にデーターがアップデートされるかとか、複数の端末を通してデータを管理する使いやすさとか)だろう。すべて100ドル以上するので、その価格の妥当性を疑問視するユーザーも多いと思われる。

そこまでの値段を払うのは嫌だけど、健康管理には興味ある人には、様々な無料のスマートフォンアプリがある。もちろん収集できるデータが限られるので、基本的な「健康管理」系アプリが多い。こちらは腕時計型端末のように運動を促すというよりも、食生活のモニタリングが主な目的で、ダイエットのためや、食生活のバランスの向上という目的で使われることが多い。一日を通して食べたものをログして、連携したデーターベースからカロリーと栄養素の計算をする。データを友達と共有して、「ソーシャル」にダイエットに励むこともできる。

この手のアプリの課題は、何といってもデータベースの充実化。例えば日本人としては、三食丼とかカレーうどんとか食べたりするわけだけど、データベースを検索しても一番近いのは照り焼きビーフ丼と天ぷらうどんだったりする。また、自分で料理した場合とレストランで食べた場合のカロリーや量の違いなども、的確には反映しづらい。

最後に紹介したいのが、「運動」に特化したアプリ。FitStarというアプリで、これはパーソナル・トレーナーに取って代わることを目指している。アメフト選手 Tony Gonzalezをフィーチャーしていて、実際のフィットネスメニューのデザインも彼が関わっているという。ジムでパーソナル・トレーナーが自分の運動能力や目的に合ったメニューを組んでくれるように、自分のデータを入力することによって、最適な運動メニューを提示してくれる。すべて自分の部屋でできるもので、特別な器具は不要。ジムで高いお金を払いたくなかったり、出張が多かったり忙しくて継続的にジムに行く時間がなかったりする人がターゲットだ。ジムの代替ということもあってか、マネタイズはかなりアグレッシブに行っている。もっとも初歩的な4週間のメニューは無料だが、それ以降は有料になり、メニュー次第で5ドルから10ドル以上かかる。

とにかくあらゆるオプションが提供されてきているのだ。サムソンの端末が販売され、アップルの端末の詳細が明らかになるにつれ、この市場は一層伸びていくだろう。

この分野の大きな魅力は、マーケティングしやすいという点にもある。買ったりインストールしただけで、健康になったり痩せた気にさせてくれる。テクノロジーはモチベーションを与えてくれるし、時にはゴールへの近道を教えてくれるけど、それでも運動や食事管理など努力なしでは何も変わらないというのは耳の痛い話。それがわかっていても、プロダクトを見ているだけで健康な気分になるわけだから、マーケターとしてはやりがいがある(?)だろうなと思う。

ただし今後ますます競争が激しくなるだろうこの分野、単に売り切るだけではなく、ユーザーが継続的に使いたいプロダクト、そして、継続的に使うことが簡単なプロダクトが、最終的には勝ち残っていくんだろう。それによってサブスクリプション的なモデル(定期購入)が確立すれば、収入の安定化にもつながる。

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