2010年11月23日火曜日

ますます盛り上がるアプリ開発

アメリカでのiphoneのテレビコマーシャルのキャッチコピーである“There’s an app for that”が、まさに今のシリコンバレーを象徴している。この近辺で、起業家やこれから起業しようとアイディアを練っている人たちの99%は携帯、スマートフォーン、タブレット向けのアプリ開発を狙っていると言っても過言ではないだろう。

今までiphoneの唯一のキャリアだったAT&Tも、パロアルトに数億円かけてアプリ開発専門のテックセンターを開くことを発表。VCのKleiner Perkins Caufield and Byers(KPCB)は、「ifund」を通してiphone, ipod touch, ipadのアプリ開発者たちに200億円の投資を行っている。彼らの焦点はロケーションベース、ソーシャルネットワーキング、ヘルスケア、教育、エンターテインメントなど。投資先の主な会社にはBooyah, Zynga Mobile, Shazamなどがある。ビジネスになるところにお金が集まり、さらに開発者を刺激する。

スタンフォード大学が拠点を構えるパロアルト発の人気アプリと言えば、“Tap Tap” ゲームで知られるTapulous がある。これまでに3.5千万ユーザを獲得し、この7月にはディズニーに買収された。"
Guitar Hero for the iPhone"(もしくはDance Dance revolution)と例えられることでも証明されるように、何も目新しいアイディアではない。ただ、Lady Gaga, Cold Play, Justin Bieber, Katy Perryなど実際の有名アーティストと手を組んで彼らのヒット曲をフィーチャーしたり、アーティストとのチャットルームを設けたりして、ビジネスとしての新境地を必死に探す音楽業界とも密接に手を組んでいる。つまり、単なるリズムゲームではない立派な娯楽ゲームを確立したのだ。

娯楽性と言えば、最近のアプリの成功のカギの一つとされている。もう一つは実用性の高さ。両方を備えていればベストだけど、少なくともいずれかに徹していることが成功のカギと言えるだろう。競争は激しくなり、目新しいからというだけでユーザがお金を払って使ってくれる時代は終わった。また、スマートフォーンが技術に疎い一般人まで普及してきたことにより、使い勝手の良さやわかりやすいユーザインターフェースも一層重要となってきている。

もちろんOSという点では、アンドロイドも忘れてはならない。2010年の第3四半期には売り上げでiphoneを超えていて、開発者にとってはiphoneと同様に、もしくはこれからはそれ以上に大事なプラットフォームとなってくる。

開発者
Tim Su とビジネスパートナーJon Parisが始めたスケジュール管理アプリ、”Todoroo” はパロアルト近辺発の代表的なアンドロイド向けアプリだ。会社名の由来もストレートに、Astrid (Android’s Simple Task Recording Dashboard)。

タスクをオンラインで管理する方法なんていくらでもあるのに、今さら何で?と思いがちだが、ポイントは仕事を連想させずにユーモアを織り交ぜる点にある。今日中に終わらせられなかった仕事や用事のリストを、グーグルやアウトルックにリマインダーをされると、罪悪感だけが残る。このアプリ、癒し系キャラクターのイカがほにゃほにゃと現れて、「いったいやる気あるの?」とか「もうやる必要ないっか?」とかビジネスっぽくなく柔らかなリマインダーを出してくれる。つまり「実用性」が高いんだけど遊び要素(ゲーム性?)も兼ね備えていて、業務用に使う素っ気ない管理ソフトとは一味違うところが受けている。

この2人はスタンフォード大学で意気投合してビジネスを始めたのだが、そのスタンフォード大学と言えば、当然のごとくこのブームに乗ってiphone向けアプリの開発コースを設けている。また、コードを書くというだけでなく、アイディアをどのように起業に結びつけ、そしてビジネスにしていくかという集中講義のようなサポートも行っている。

アプリのもうひとつの大きなポテンシャルはビジネスとして成り立ちやすいことである。主な収入源は広告、バーチャルグッズ、またはプレミアムバージョンを有料で売るなどだが、仮にすぐに収入に結びつかないとしても、多くのエンドユーザとつながったらしめたもの。パブリッシャー、広告主、キャリア、みんながみんなエンドユーザーの情報が欲しくてたまらないからだ。ユーザーがどこに行って、どういうスケジュールで一日を過ごし、何を食べて、どこで買い物して、どこに旅行するのか。どんな趣味があってどんな友達ネットワークを持つのか。モバイルはその点完璧なデバイスで、そのエンドユーザにつながって結果的に情報を収集するためにはその情報に対して金目をいとわないという会社も多い。