2013年10月17日木曜日

シリコンバレーのエンジニアの給与がいかに高いか、をデータで証明する。


先日、シャットダウンの影響を受けかねないツイッターの話をしたが、上場の手続きの一貫として管理職の給与が公開されている。その中で、もっとも目を引いたのがエンジニアのSenior Vice PresidentであるChristopher Fryだ。

$10.3 millionと、CEOであるDick Costoloの$11.5 millionに次ぐ2位の金額となっている。組織的には”C”がつく"Chief Technology Officer" "Chief Financial Officer", "Chief Operating Officer"の方が上だが、エンジニアはやはり特別なようだ。

このMr. Fryの場合、報酬のうちの大部分($10.1 million)はストックで、基本給は$145,513 、ボーナスは$100,000だった。

エンジニアのVP/Sr. VPがこれだけの報酬をもらうという傾向が見られるのは、ツイッターだけではない。フェースブックが上場時に公開した情報によると、上場の前年にあたる2011年にエンジニアのVPであったMike Schroepferは、$24.4 millionをストックで受け取っている。

加えて、 $270,833 の基本給と$140,344のボーナスが与えられていたというから、合計で$24.8 millionを超えていたことになる。

ただ異なる点として、フェースブックはツイッターの10倍以上の売り上げがすでにたっていたことを考慮すると、Christopher Fryの報酬は相当高いことになる。

ヘッドハンターによると、この2年間、VP of engineering のオファーの4分の3は基本給が$250,000を超えるものらしい。もちろんそれに加えて、会社の1〜2%にあたるオーナーシップ(equity)を与えられるのが通常だ。

これだけエンジニアの価値が急騰しているのにはいくつかの理由がある。

まずは、それを必要とするスタートアップの数が増えているということ。今年の前半でシード・ラウンドのファンディングを受けたベイエリアのスタートアップの数は242にのぼる。これは、2010年を通した数をすでに超えているという。

もう一つの要因は「テクノロジー」の複雑化だ。ウェブ、モバイル、iOS、アンドロイド、html5... テクノロジーは進化し続ける。今後出てくるテクノロジーを含めてすべて制覇しているというのは不可能だが、新たな技術を習得して既存のテクノロジーに組み込んでいける柔軟さとオープンさを備えているエンジニアが必要となる。

それに関連して、ビジネス環境がめまぐるしく変わる点も無視できない。新たなプラットフォームが出てきたり、買収や提携によって複数のプロダクトやプラットフォームを統合する、などの話も稀ではない。

需要が増えている上に、高い能力が求められているのだ。これは特に管理職レベルの経験のあるエンジニアについて言えるだろう。

では、新卒に近いエンジニアについてはどうだろう。

上記のスタートアップの数からもわかるように、「需要が高い」という点だけでも、彼らの給与を十分高く引き上げている。

例えばグーグルではPhDを取ったばかりの学生に対して、$150,000の基本給と$250,000のrestricted stock optionsをオファーしたと言われている。

シリコンバレーでは、ソフトウェアエンジニアの基本給の平均は$100,049だった。

比較値として、サンフランシスコ・ベイエリア全体での基本給の平均は$66,070。高い給与で知られる医者や弁護士については$133,530と$174,440で、エンジニアの平均よりも高いが、通常この種の職業では、ストックオプションなどはついてこない。スタートアップならではのequityを含めると、総合した報酬額はエンジニアの方が高くなると想像される。

これだけ雇うのが大変なエンジニアだが、雇えればそれで安心、というわけではない。他社から引き抜かれる心配は常に絶えないし、自分で何かをはじめようという起業魂に燃えるエンジニアも少なくないからだ。

最悪なパターンは、トレーニングなど投資して育てあげたエンジニアが、そのスキルを活かしてステップアップ、他社に移ってしまうケースだ。

では、エンジニアをハッピーにするために企業は何をしているのか。給与だけではなく、毎日朝ご飯、ランチからディナーまで無料でオフィスで提供する。それも単なるサンドイッチでは駄目。オーガニックでローカルな食材をふんだんに使い、旬なシェブが腕をふるったグルメな食事でないと、最近の「スタンダード」にはついていけない。

オフィスにはゲームスペースとか、楽器室とか、ヨガルームがあったり、ときにはフィットネス系のクラスを提供する。これは何もグーグルやフェースブック級の会社のことではない。50人などの規模であっても、そのレベルを提供するプレッシャーがあるのだ。

しばらくは、エンジニア獲得の競争が加熱し続けそうなシリコンバレー。

管理職レベルのエンジニアは別としても、新卒のエンジニアにそんな待遇をしたら、不況になったときに一番苦労するのは本人たちなんじゃないかと思ったりする。おせっかいなのは重々承知だけど。

おせっかいついでに心配なのは、これが普通だと思って努力を辞めること。何事もすべて収束する日が来るので、今は十分な待遇を受けていてハッピーな新卒エンジニアでも、新しいものを学び、テクノロジーとともに自分も進化していくことが生き残りのカギになるんだと思う。もちろん、これはエンジニアだけに限った話ではない。

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