2010年12月18日土曜日

一体「ソーシャル」って?

ネット業界に限らない話だが、ビジネスの世界では「first mover advantage」という、先にやったもの勝ちという概念がある(つまり後発者が真似をするのは困難)。

今や「ソーシャル」が魔法のキーワードのようになって各社が起業や買収合戦を繰り広げているが、ふと思えば、その「ソーシャル」を先駆けて広めようとしていたサービスや会社が、最近ぱっとしない。彼らはこの「first mover advantage」を掴めなかったのだろうか?

例えばDigg。以前はNews Corp, Google, Current Mediaなどによる買収対象として騒がれたものの、ここ数年は特に大きなプロダクトのリリースがあったわけでもない。4千万のユーザはいるというものの、”News Sharing”という意味では、フェースブックやツイッターがいまや主流となっている。

またヤフー傘下にあるdeliciousに関しても、今週行われたヤフーのリストラの一環として、サービスの縮小、閉鎖もしくは売りに出すことが噂されている。

一方でDiggと良く比較されながらもいまだにユーザ層を伸ばしている会社として、「StumbleUpon」がある。Diggと似ているのは、それぞれのサイトを「好き。嫌い」と判断、その結果多くのユーザに評価されたものを他のユーザにも推薦するというもの。Diggが新しいニュースネタを発見するサイトであるのに対して、StumbleUponはカテゴリーごとに新たなウェブサイトを発見するサイトとなっている。ちょっと余談だけど2001年に創設されたこの会社と創設者を有名にしたのは、2007年にebayに買収されたものの、2009年に創設者と投資家によって買い戻されて、その結果また独立したスタートアップ規模の会社に戻ったという歴史。(Skypeのこともあるし、ebayってその手の話が多いような。。。)

さて、ここでの前提(そして問題)は、ネット上の統計的な好き嫌いという好みはどのユーザにも通用するということ。たぶん誰もが経験したことがあるだろうけど、わたしだってサンフランシスコで日本食レストランを探しているときには、ランダムな推薦よりも日本人からの推薦を重視したい。いまやどの会社も、もっと関連性を高めるためにそのユーザとより好みが近いユーザ層からの推薦だったり、そのユーザの友達の輪からの推薦を重視するという方向に進んでいる。

ただここでもわかるように、「ソーシャル」と言ったときの一番のユーズケースは根本的に10年前から変わっていない。新たなコンテンツ、商品やレストランを発見するときに、友達からの推薦を利用するというもの。もちろん一緒にゲームをするとかFantasy Sportsでつながる楽しみという意味での「ソーシャル」も増えているけど、情報のシェアという方が実生活でより「使える」ので、より多くの注目、ニーズそしてお金が集まってくる。ネット上のあらゆるユーザによるランダムな推薦を受けても、そのユーザの趣味嗜好が同じかどうかわからないし、それを信用できるかどうかも疑問だ。一方で自分の良く知っている人からのお薦めだったら、より安心して試す気になるだろう。ゲームは一緒に同じ体験を共有して楽しいに過ぎないけど、実生活での問題点の解決にはならない。

この「ソーシャル」化、昔ながらの検索エンジンにも少なからず影響を与えている。

検索エンジンのそもそもの役目としては、ユーザが目的のウェブサイトにたどりつくのを助けるというものだった。つまり調べたいことがある人が目的を持って使い、目的を果たしたところでその役目は終わるものだった。ただ最近の傾向としては、必ずしも目的がなくても暇つぶしに雑誌をめくる感覚でウェブにアクセスする人たちが多くなってきている。特に携帯経由でのアクセスではその傾向がより強いものと思われる。となると、検索ボックスにキーワードを入力するのではなく、受け身的に情報を受けたくなるもの。もちろん携帯でのキーワード入力はしにくいこともその傾向を後押ししている。自分の行動を振り返ってみても、いまやグーグルを通してではなくフェースブックのフィードを通して新たな情報やサイトを発見することが多いことを考えると、グーグルはじめ検索エンジンも変わらずを得ないことが明らかだ。

マイクロソフトの検索エンジンBingは、フェースブックとのパートナーシップにより、フェースブック上ですでにある機能「likes」を検索結果に反映する。つまり”xbox”と検索したときに、検索結果の一つがフェースブック上の友達によって「likes」と推薦されていたら、それがBingの検索結果ページに表示される。つまり味気ない単なる10のリンクだけでなく、友達からの推薦というパーソナル(かつソーシャル)な情報が追加される。

基本的なアイディアは先述のStumbleUponDiggとたいして変わらない。つまりこの数年間、「ソーシャル」についてのコアなアイディア自体はさして変わっていないことになる。問題はExecution - 誰がそのアイディアをうまく形にできるのか、に尽きるようだ。

2010年12月11日土曜日

グーグルの参入でさらに活気づくebook業界

アマゾンのkindleが3分の2のマーケットシェアを占めているebook市場だが、クリスマス商戦を目前に控えた今週、アマゾンとグーグルがそろってウェブベースでのebookストアのリリースを発表した。

グーグルは「google books」と名でウェブベースでのebookストアを今年内に始める一方で、アマゾンもkindle以外の他のデバイスやウェブブラウザ上で読める、ebookコンテンツのリリースを発表。Androidやiphone 用には無料のアプリも提供される。

今までのebook利用では、デバイスの購入が大きな壁となっていた。アマゾンのkindleだったり、Barnes & Nobleの Nook、 Apple ipad、Android ベースのタブレットなど、指定されたデバイスを購入して始めてebookが読めたからだ。今回のウェブベースのサービス開始によって、iPad、iPod touch、iPhone、Mac、PC、BlackBerry、Androidベースのデバイス、 そしてウェブブラウザが立ち上がる環境ならどこでも本が読めるようになる。

ではアマゾンとグーグルの違いは?大きな違いの一つは、アマゾンでは第3者である出版社、作者、ブロガーなどがebookコンテンツを自分のサイトから直接売って、アフィリエート代を稼ぐことができるという点。一方のグーグルは第3者がコンテンツを売るというモデルがまだできていない。

購入可能な本の数だが、アマゾンでは75万冊の本がダウンロード可能、一方のグーグルは2004年以来、Google books projectのもとで今までに1千5百万冊の本をすでにデジタル化している。最終的には1億5千万冊まで増やすというから、現在の10倍を目指していることになる。1千5百万冊のうち300万冊については売る権利を持っていて、うち200万冊は無料(著作権がすでに無効になったりしているもの)、そして近いうちに数十万冊が購入可能になるという。

ウェブベースになることによるユーザへの利点としては、特定のデバイスを購入する必要がなくなるだけではない。コンテンツの値段自体も下げられる可能性がある。伝統的な本のビジネスだと紙代とか印刷代とか流通にかかるコストなど、削減しようのないコストがいくつも発生してくるが、ウェブベースであればそのほとんどのコストは無関係となる。もちろん作者への支払い分など削減できない部分もあるし、サーバーとかサイトのメンテナンスコストとか他の種のコストが発生してくるものの、直感的にコスト全体は押さえられると想像できる。

また、オンラインで本を購入することによって、そのユーザの購入履歴をトラックすることができる。その人がどんな本が好きだとか友達がどんな本を推薦しているかっていうのは、貴重なユーザのデータとなる。そのデータを利用してより各ユーザに関連性の高い広告を提供したり、本のコンテンツそのものの中に広告を埋め込むこともできるというのだ。つまり、より関連性の高い広告を提供することによって広告収入の増加、そして結果的にコンテンツ自体の値段を下げられる可能性がある。

となると1冊10ドル(アマゾン、グーグルともに10ドル近辺が多い)という単価はまだそれでも高いのでは?という声も。出版社や作者側からすると物理的な本に比べてどんどん下がるebookの値段に対する抵抗は留まらないが、kindle経由で読む場合とウェブベース読む場合に値段が同じだというのはちょっと不思議な気がする。

kindle経由でしか読めなかったときには、ハードウェアコストの一部を肩代わりするためにソフトウェアでも余分に課金しないといけないとか、コンテンツを提供するための無料のワイヤレスのコストをどこかでカバーしなければいけなかった。ただウェブベースになった途端、それらのコストは一切発生しなくなるわけだから、それにも関わらず値段が変わらないというのはおかしいのでは?という声も。

今年デジタルブック市場の売り上げは966億円にのぼり、デバイスの数量としては1千5百万個が売れたという。激しくなる競争とともに、2011年にはますます伸びる市場の一つであることは間違いない。また、そのコスト構造も競争が激しくなると同時にどんどん進化していくだろう。

2010年12月5日日曜日

プロダクトやユーザ獲得においてすでにライバル心を燃やすグーグルとフェースブック。この2社間で繰り広げられるもう一つの競争と言えば?

以前にもブログで何度が書いたが、最近シリコンバレーの会社間でのデキル社員の獲得競争が一層激しくなってきている。一般的にその点では、サイズに関わらずどの会社も四苦八苦している。理由としては、限られたタレント数に対してスタートアップを含める会社数が増えている、つまり需要に対して十分な供給がないためだ。また各社のエリア境界が不明確になってきて、どの会社も同じようなスキルセットや経験をもった社員を欲しがることも背景にある。どの会社もiphoneやアンドロイドの開発者が欲しいというように。

知名度のないスタートアップにとって有能な社員の獲得はとてつもなく困難なのは言うまでもない。ただ、グーグルなど大手にとっても有能な社員の転職の流れを留めることが難しくなってきている。逆に言えば、社員にとっては給料アップを狙ったステップアップの転職がしやすい環境だということだ。

中でも一層と激しい競争を繰り広げているのはグーグル対フェースブック。

前回、サンクスギビング直前にグーグルが立て続けに新プロダクトをリリースした話に触れたが、同じ週にグーグルが世間を騒がせたもう一つのネタと言えば、今や恒例となった年末ボーナス(キャッシュで約10万円)と全社員に10%の給与アップを約束したこと。大物プレーヤー間での業界のマーケットシェア競争がますます激しくなると同時に、有能な社員の確保についての競争はさらに激しくなってきていることを示している。グーグル社員の主な転職先としては、LinkedIn, Facebook, Twitter, Zyngaに代表されるようなIPO前の大物スタートアップだが、その中でも一番脅威とされるのがフェースブックだ。

現在すでに、フェースブック社員の10-12%はもとグーグル社員と言われる。そしてその転職の流れはとどまることを知らない。アメリカではボスが自分の部下やチーム全体を新たな転職先に引き抜くということがよくあるので、キーパーソンを逃すと、その配下にいるチーム全体を失うリスクも高いのだ。

実際にグーグルは今年11月頭に、フェースブックに行きたい意思を示したStaff Engineerに対して、3.5億円の特例ボーナスを提示して引き止めたらしい。ちょっと補足すると、グーグルのStaff EngineerというのはEngineer, Sr. Engineerに続くタイトルで、上にはSr. Staff Engineer, Manager, Director, VP と続く(正確にはもっと階層があるかもしれないが)。そこまで上のタイトルではないにのも関わらず、そんな額を提示するというのはかなりの切迫感を感じる証拠だ。

噂によると、グーグルがこの手の引き止めのためのオファーを出すことは珍しくない。そしてその結果、80%の社員は考え直してグーグルに留まるのだという。一番のくどき文句は、転職先となるIPO直前のスタートアップのバリュエーションについての不透明性。会社の価値が100Billionドル(約10兆円)という予想が本当であれば、社員のオプションの価値はとてつもない高額になりかねないが、その一方でそんな値段がつかないリスクはそれ以上に高い。その一方、グーグルの市場価値というのはすでに確立して手堅いもの。とてつもないアップサイドもない代わり、すごい損することだってないのだ。

グーグルとフェースブックに代表されるタレント確保競争は、まだまだ始まったばかり。これから来年に向けて他のプレーヤーも巻き込んでさらに加速していくだろう。

2010年12月3日金曜日

サンクスギビング直前のリリース合戦。カギはローカル、ショッピングそしてソーシャル。

一般的にこの業界では、サンクスギビングを境に新プロダクトのリリースがぱったり止まる。日本の年末年始と同じようなもので、年末に向けて社員が休みを取り始めるのがサンクスギビングなので、新たなコードリリースが新たなメンテナンスを要することを控えて、多くの会社がコードフリーズ期間に入る。つまり、サンクスギビング前には今年最後のチャンスとばかりに、新プロダクトや新機能のリリースが立て続けに行われるということだ。

今年のサンクスギビング直前の11月15日の週に、立て続けのプロダクトリリースを繰り広げてひと際目を引いたのはグーグルだった。

まずはローカル情報のレビューなどを集めるHotpot というサービスをリリース。

ソーシャルネットワークを使った「地域情報ベースのお薦めの情報サーチエンジン」と位置づけている。今までの地域情報検索エンジンはレビューのソースに重きを置いていたが、今回のHotpotはもっと「パーソナル」にデザインされているという。つまり今までだったらYelpに代表されるような大手サイトからのレビューが上位にランクされていたのに対し、この新サービスではユーザ各自の好き嫌いや友達からのおすすめが検索結果により色濃く反映されるようになるので、人それぞれで検索結果が異なってくるのだ。ということで「パーソナル」。

グーグルがその週にリリースした他の機能は、プロダクトサーチの強化。プロダクトサーチと言えばショッピング目的なのでローカル(地域情報)とは一見無関係と思えるが、この機能追加は地域情報に関連している。オンラインで買い物する場合は商品の在庫状況が当然購入プロセスの中で提示されるが、小売り店など実際の店舗で買い物をしようとした場合、在庫状況は実際に行ってみるか、電話しないと確認できない。今回グーグルは70ほどのリテール・ブランドと手を組んで(Best Buy Williams-Sonomaなど)、店舗での在庫状況を検索結果として表示する機能を追加した。

またショッピングつながりと言えば、同じ週にリリースしたBoutiques.comというサイトがある。カメラとかゲームといった電化製品はスペックや製品番号がはっきり定義されているので検索がしやすいが、洋服、靴やアクセサリーはそういうわけにはいかない。サイズや色だけではなく、デザインやスタイルなど必ずしも言葉では明確に示されない要素が必要となってくる。オンラインでのアパレル製品を購入するユーザは増える一方なので、この難関をいかに克服するかが検索エンジンやファッションサイトの常に大きな課題とされてきた。このBoutiques.comでは、シルエット、色、スタイルだったりと、電化商品や本とは違った角度で検索結果を絞り込む機能を備えている。また好きなスタイルをもとに、似たイメージのコーディネートをおすすめしたりという機能もある。またファッション雑誌的な要素も兼ねていて、名の知れたブロガーやスタイリストなどがバーチャル・プティックを開いて、ユーザはそのブティックから直接洋服やアクセサリーを購入できるようになっている。実際に使ってみると、まだまだ改善の余地ありというベータ版にすぎない印象はあるものの、新境地に積極的に取り組むグーグルの意気込みが感じられる。もう一つ目を引く点としては、このサイトにはグーグルというブランドやロゴがどこにもないこと。ファッションという新境地でグーグルというブランド力が必ずしも強みとなるわけではないという判断だと思われる。

以上の3つが、一週間内に立て続けに行われたグーグルのリリースだ。ホリデーシーズン直前ということもあるが、グーグルがローカルとショッピング(そしてこの2つのオーバーラップは大きい)に相当力を入れているのが顕著だ。この2分野はビジネス(マネタイズ)という点でも、もっともポテンシャルのあるエリアだということも忘れてはいけない。

そしてもう一つの共通点は「ソーシャル」。レストラン情報なりファッション情報なり、友達からのおすすめや友達と情報を積極的にシェアするような作りになっている。

最後にちょっと余談になるが、ローカルとショッピングと言えば、この数日で噂となっているグーグルのグルーポンの買収話もその重要性を象徴している。グルーポンとは、地域ごとの中小ビジネス(全国規模のチェーン店も参加したりするけど、基本的には地域ごとに提供されるクーポンの種類が違っている)が1〜2日限定でクーポンを提供し、ある一定の人数が購入したら始めてそのクーポンが成立するというのもの。例えば、サンフランシスコのエステサロンが50%オフのクーポンを50ドルで売るとする。100人が購入したら始めてそのクーポンが有効になるが、もし99人しか購入しなかったら非成立となる。グルーポンはこの手のサービスの中では圧倒的に独占状態に近く、グーグルがそのユーザ層とブランドを利用して彼らのプロダクトサーチやローカルサーチに利用するという限りない可能性を秘めている。噂では6千億円に近い買収額が提示されたというとことだが、果たして真相はどうなのだろうか。

2010年11月23日火曜日

ますます盛り上がるアプリ開発

アメリカでのiphoneのテレビコマーシャルのキャッチコピーである“There’s an app for that”が、まさに今のシリコンバレーを象徴している。この近辺で、起業家やこれから起業しようとアイディアを練っている人たちの99%は携帯、スマートフォーン、タブレット向けのアプリ開発を狙っていると言っても過言ではないだろう。

今までiphoneの唯一のキャリアだったAT&Tも、パロアルトに数億円かけてアプリ開発専門のテックセンターを開くことを発表。VCのKleiner Perkins Caufield and Byers(KPCB)は、「ifund」を通してiphone, ipod touch, ipadのアプリ開発者たちに200億円の投資を行っている。彼らの焦点はロケーションベース、ソーシャルネットワーキング、ヘルスケア、教育、エンターテインメントなど。投資先の主な会社にはBooyah, Zynga Mobile, Shazamなどがある。ビジネスになるところにお金が集まり、さらに開発者を刺激する。

スタンフォード大学が拠点を構えるパロアルト発の人気アプリと言えば、“Tap Tap” ゲームで知られるTapulous がある。これまでに3.5千万ユーザを獲得し、この7月にはディズニーに買収された。"
Guitar Hero for the iPhone"(もしくはDance Dance revolution)と例えられることでも証明されるように、何も目新しいアイディアではない。ただ、Lady Gaga, Cold Play, Justin Bieber, Katy Perryなど実際の有名アーティストと手を組んで彼らのヒット曲をフィーチャーしたり、アーティストとのチャットルームを設けたりして、ビジネスとしての新境地を必死に探す音楽業界とも密接に手を組んでいる。つまり、単なるリズムゲームではない立派な娯楽ゲームを確立したのだ。

娯楽性と言えば、最近のアプリの成功のカギの一つとされている。もう一つは実用性の高さ。両方を備えていればベストだけど、少なくともいずれかに徹していることが成功のカギと言えるだろう。競争は激しくなり、目新しいからというだけでユーザがお金を払って使ってくれる時代は終わった。また、スマートフォーンが技術に疎い一般人まで普及してきたことにより、使い勝手の良さやわかりやすいユーザインターフェースも一層重要となってきている。

もちろんOSという点では、アンドロイドも忘れてはならない。2010年の第3四半期には売り上げでiphoneを超えていて、開発者にとってはiphoneと同様に、もしくはこれからはそれ以上に大事なプラットフォームとなってくる。

開発者
Tim Su とビジネスパートナーJon Parisが始めたスケジュール管理アプリ、”Todoroo” はパロアルト近辺発の代表的なアンドロイド向けアプリだ。会社名の由来もストレートに、Astrid (Android’s Simple Task Recording Dashboard)。

タスクをオンラインで管理する方法なんていくらでもあるのに、今さら何で?と思いがちだが、ポイントは仕事を連想させずにユーモアを織り交ぜる点にある。今日中に終わらせられなかった仕事や用事のリストを、グーグルやアウトルックにリマインダーをされると、罪悪感だけが残る。このアプリ、癒し系キャラクターのイカがほにゃほにゃと現れて、「いったいやる気あるの?」とか「もうやる必要ないっか?」とかビジネスっぽくなく柔らかなリマインダーを出してくれる。つまり「実用性」が高いんだけど遊び要素(ゲーム性?)も兼ね備えていて、業務用に使う素っ気ない管理ソフトとは一味違うところが受けている。

この2人はスタンフォード大学で意気投合してビジネスを始めたのだが、そのスタンフォード大学と言えば、当然のごとくこのブームに乗ってiphone向けアプリの開発コースを設けている。また、コードを書くというだけでなく、アイディアをどのように起業に結びつけ、そしてビジネスにしていくかという集中講義のようなサポートも行っている。

アプリのもうひとつの大きなポテンシャルはビジネスとして成り立ちやすいことである。主な収入源は広告、バーチャルグッズ、またはプレミアムバージョンを有料で売るなどだが、仮にすぐに収入に結びつかないとしても、多くのエンドユーザとつながったらしめたもの。パブリッシャー、広告主、キャリア、みんながみんなエンドユーザーの情報が欲しくてたまらないからだ。ユーザーがどこに行って、どういうスケジュールで一日を過ごし、何を食べて、どこで買い物して、どこに旅行するのか。どんな趣味があってどんな友達ネットワークを持つのか。モバイルはその点完璧なデバイスで、そのエンドユーザにつながって結果的に情報を収集するためにはその情報に対して金目をいとわないという会社も多い。

2010年9月11日土曜日

日本人の謙虚さが仇になる?

日本では、今年3月期から年収1億円以上の役員の実名公表が義務づけられている。

リストのトップを飾るのは日産のCarlos Ghosn、ソニーのHoward Stringerといった外国人社長。これは驚きではないけど、日本人社長はどうだろうか。

この10年で日本人管理職の報酬は2倍以上になったというものの、2009年のデータによると、3,813の上場企業の中で実名公表の対象となったのは300人にも満たなかったという。PricewaeterhouseCoopers の調査によると、日本の株式市場で上場している企業の社長の平均年収は4,900万円で、一般社員のほぼ16倍だったという。対して、アメリカのトップ3000社の社長の平均年収(給料、オプション、ボーナス含む)は$3.5million (ほぼ3億円)と報告されているから、その差は歴然だ。

Carlos Ghosnが$10Mを稼ぐ一方で、ライバル社のトヨタの社長はリストにさえ入っていない。ソニーのHoward Stringerが$9.1Mを稼ぐ一方で、ライバル社のパナソニックの社長もリスト入りをしていない。

この原因の一つとしては、伝統的に日本の会社は社長が内部から採用されることが多いことがあげられる。アメリカでは外部からリクルートすることが多いため、社長候補になるハイプロファイルな人材の獲得競争が激しく、提示給与が大きなカギとなるのだ。

これは幹部レベルに限ったことではないが、終身雇用がいまだに根付いている日本ではどのポジションでも労働力の流動が海外に比べると極端に少ない。ただ労働人口が減少する一方の今後の日本では、いかに海外からの優れた人材をリクルートするかは大きな課題の一つになるだろう。そしてその際に、給料水準の低さが一つの障害になるのも明らかだ。

加えて、日本での物価の高さが足かせになる。個人的にはサンフランシスコの方が物価が高いのでは?と思ったりするけど、アメリカ人がアメリカでのライフスタイルをそのまま東京に持ち込もうとしたら(ステーキを食べ、買い物は商店街ではなくて紀伊国屋でないといけないとか。。。)、確かに東京では相当の出費になると思われる。実際Mercer Consultingによると、物価の高い都市ランキングでは大阪が6位、東京が2位にランクインしている。

もう一つの問題は、労働人口が減少する日本からさらに労働力が流出していく可能性があるということ。若者の世界観が広がって、海外でのキャリアかつ金銭的なチャンスの大きさを知ったら、日本を飛び出していく若者は少なくないだろう。それを引き止めるためにも、金銭的なインセンティブは一つのカギになると思う。

今まで日本経済の強さの一因とされてきた謙虚さとか忠誠心だが、これからの時代はかえって仇になるかもしれない。

さて最後に、面白いのは日本のメディアと海外のメディアの受け取り方の違いだ。「200人以上も1億円プレーヤーがいることが判明」と報道する日本メディアに対して、「1億円を超える社長の数があまりにも少ないことに驚き」というのがアメリカでのトーンだ。

もう少し視野を広げて、このあたりの認識を変えていくのが第一歩かもしれない。

2010年7月12日月曜日

LeBron Jamesと経済効果

今月の大きな話題と言えば、NBAのスーパースターLeBron Jamesが移籍先としてMiami Heatを選んだこと。Jamesは高校からNBAにスカウトされて以来、本人の地元でもあるクリーブランド(Cleveland Cavaliers)でスターの座を確保、ほぼ無名だったチームをチャンピオン候補にまで成長させた。Cavaliersはファイナルに進むことはできなかったもののプレイオフには残り、過去最高の成績で今シーズンを終えた。

Jamesのこの7年間の功績をたたえる一方で、それだけの年数かけてもクリーブランドをチャンピオンにできなかったJamesを「失格」と呼ぶ声もある。バスケットボールはあくまでもチーム競技で、スーパースター一人の力で優勝できるわけではない。クリーブランドのチームは脇役不足、このスーパースターをアシストする力がなく、Jamesはその状況に満足していないというのがもっぱらの噂だった。

そんな中、ついに今シーズンを終えた7月1日にフリーエージェント入り。年間20億円相当(日本のスポーツ選手年俸との規模が違いにも注目)を稼ぐこのスーパースターの移籍先が、プレイオフ中から注目を浴びていた。

必死で引き止めたいクリーブランドの狙いは、チームの成績だけではない。

というのも、このJames獲得した7年前以来変わったのはランキングだけではないのだ。クリーブランドという、人口数が全米で40位以下、確立した産業があるわけでもなく、経済的に落ち込んでいる都市に対して、Jamesは大きな経済効果をもたらした。

James獲得以来、Cavaliersの観客動員数は59%上昇(ホームゲームの場合)、今シーズンはチーム結成以来はじめて41のホームゲームのチケットを完売した。

では、チームの成績が上がることでホームタウンにもたらす経済効果とはどの程度なのか?シカゴ大学ビジネススクールの調査によると、New York, LA, Chicago, Dallas, Philadelphia, Miami, Washington, Boston, Cleveland というNBA人気チームが拠点を構える都市では、人口の5%がプレイオフゲームにだったら100ドル余分に支払ってもいいと回答した。クリーブランド以外は人口が5百万人を超える都市なので、その5%が100ドル余分に払うとしたら、相当な収入増になる(もちろん収容できる客員数の範囲で、だけど)。もちろんそれに伴いグッズの売り上げも伸びるだろう。

先日CNNのLarry Kingショーでのインタビューを見ていたら、「クリーブランドの経済に対して責任は感じない?」と質問されていた。いかにスーパースターでも、一都市の経済状況を負わせるのは酷な話。

インタビューでも言っていたけれど、このレベルになるとお金の問題ではない。チャンピオンシップを勝ち取れるチームメートとコーチが揃ったチーム、ということがこの25歳にとっては本当に一番大事なのだ。