2010年12月18日土曜日

一体「ソーシャル」って?

ネット業界に限らない話だが、ビジネスの世界では「first mover advantage」という、先にやったもの勝ちという概念がある(つまり後発者が真似をするのは困難)。

今や「ソーシャル」が魔法のキーワードのようになって各社が起業や買収合戦を繰り広げているが、ふと思えば、その「ソーシャル」を先駆けて広めようとしていたサービスや会社が、最近ぱっとしない。彼らはこの「first mover advantage」を掴めなかったのだろうか?

例えばDigg。以前はNews Corp, Google, Current Mediaなどによる買収対象として騒がれたものの、ここ数年は特に大きなプロダクトのリリースがあったわけでもない。4千万のユーザはいるというものの、”News Sharing”という意味では、フェースブックやツイッターがいまや主流となっている。

またヤフー傘下にあるdeliciousに関しても、今週行われたヤフーのリストラの一環として、サービスの縮小、閉鎖もしくは売りに出すことが噂されている。

一方でDiggと良く比較されながらもいまだにユーザ層を伸ばしている会社として、「StumbleUpon」がある。Diggと似ているのは、それぞれのサイトを「好き。嫌い」と判断、その結果多くのユーザに評価されたものを他のユーザにも推薦するというもの。Diggが新しいニュースネタを発見するサイトであるのに対して、StumbleUponはカテゴリーごとに新たなウェブサイトを発見するサイトとなっている。ちょっと余談だけど2001年に創設されたこの会社と創設者を有名にしたのは、2007年にebayに買収されたものの、2009年に創設者と投資家によって買い戻されて、その結果また独立したスタートアップ規模の会社に戻ったという歴史。(Skypeのこともあるし、ebayってその手の話が多いような。。。)

さて、ここでの前提(そして問題)は、ネット上の統計的な好き嫌いという好みはどのユーザにも通用するということ。たぶん誰もが経験したことがあるだろうけど、わたしだってサンフランシスコで日本食レストランを探しているときには、ランダムな推薦よりも日本人からの推薦を重視したい。いまやどの会社も、もっと関連性を高めるためにそのユーザとより好みが近いユーザ層からの推薦だったり、そのユーザの友達の輪からの推薦を重視するという方向に進んでいる。

ただここでもわかるように、「ソーシャル」と言ったときの一番のユーズケースは根本的に10年前から変わっていない。新たなコンテンツ、商品やレストランを発見するときに、友達からの推薦を利用するというもの。もちろん一緒にゲームをするとかFantasy Sportsでつながる楽しみという意味での「ソーシャル」も増えているけど、情報のシェアという方が実生活でより「使える」ので、より多くの注目、ニーズそしてお金が集まってくる。ネット上のあらゆるユーザによるランダムな推薦を受けても、そのユーザの趣味嗜好が同じかどうかわからないし、それを信用できるかどうかも疑問だ。一方で自分の良く知っている人からのお薦めだったら、より安心して試す気になるだろう。ゲームは一緒に同じ体験を共有して楽しいに過ぎないけど、実生活での問題点の解決にはならない。

この「ソーシャル」化、昔ながらの検索エンジンにも少なからず影響を与えている。

検索エンジンのそもそもの役目としては、ユーザが目的のウェブサイトにたどりつくのを助けるというものだった。つまり調べたいことがある人が目的を持って使い、目的を果たしたところでその役目は終わるものだった。ただ最近の傾向としては、必ずしも目的がなくても暇つぶしに雑誌をめくる感覚でウェブにアクセスする人たちが多くなってきている。特に携帯経由でのアクセスではその傾向がより強いものと思われる。となると、検索ボックスにキーワードを入力するのではなく、受け身的に情報を受けたくなるもの。もちろん携帯でのキーワード入力はしにくいこともその傾向を後押ししている。自分の行動を振り返ってみても、いまやグーグルを通してではなくフェースブックのフィードを通して新たな情報やサイトを発見することが多いことを考えると、グーグルはじめ検索エンジンも変わらずを得ないことが明らかだ。

マイクロソフトの検索エンジンBingは、フェースブックとのパートナーシップにより、フェースブック上ですでにある機能「likes」を検索結果に反映する。つまり”xbox”と検索したときに、検索結果の一つがフェースブック上の友達によって「likes」と推薦されていたら、それがBingの検索結果ページに表示される。つまり味気ない単なる10のリンクだけでなく、友達からの推薦というパーソナル(かつソーシャル)な情報が追加される。

基本的なアイディアは先述のStumbleUponDiggとたいして変わらない。つまりこの数年間、「ソーシャル」についてのコアなアイディア自体はさして変わっていないことになる。問題はExecution - 誰がそのアイディアをうまく形にできるのか、に尽きるようだ。

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