2010年2月5日金曜日

逆玉の輿ブームの到来か?アメリカの女性がますます強くなるワケ。

「永久就職」という言葉が象徴するように、結婚と言えば、女性は専業主婦になって男性の収入に家計を頼るというのが、昔ながらの形だった。女性の社会進出が進んでいたアメリカでは、その「依存度」は日本に比べて低かったものの(2009年時点でも仕事をする女性の率は日本で67.5%、アメリカ72.3%、そして北欧は80%以上)、一家の稼ぎ頭はやっぱり男性、というのは万国共通。ただし最近、アメリカではその関係がついに揺らぎ始めているようだ。

Pew Research Centerが今年一月に、アメリカの最近の結婚事情の変化を裏付けるデータを発表した。その中で、1970年と2007年での女性の収入と学歴の変化、そしてその傾向が男性の経済状況に与える影響、特に結婚による影響について触れている。

1970年の男性と言えば、家族全員を一生養っていく責任が一人の肩にズッシリとのしかかっていた時代。その頃に比べると、女性の社会的な地位や役割が大きく変わり、男性にとって結婚による経済的負担が軽減したということは容易に想像できる。いまや一人の肩にかかっているというよりも、二人で一緒に担いでいる、といったところだろうか。その分家事も2人で分担することになるわけだがら、それを男性がラッキーと考えるか、アンラッキーと考えるかは人それぞれだろうけど。

では実際にどの程度、男性への経済的負担は減ったのか?女性が「一家の稼ぎ頭」になるまでに変化したのだろうか?

まず奥さんの収入がダンナの収入を上回っている家庭の比率を見てみると(30〜44歳のみ対象)、1970年では4%にすぎなかったのが、2007年には22%にまで上昇したという結果が紹介されている。ということは、いまや家庭を持つ男性のほぼ4人に1人は、女性が一家の稼ぎ頭を担うという、ラッキー(?)な状況にあるということだ。

以下のグラフは、既婚女性、独身女性、既婚男性、独身男性という4つのカテゴリごとに、アメリカにおける一家庭あたりの平均収入を1970年から2007年にかけてプロットしてものだ。条件を揃えるために多少の修正が入っているので、絶対値よりも各カテゴリの伸び率に注目してもらいたい。

1970年から2007年にかけた平均伸び率を比較してみると、既婚女性は60%、独身女性は59%、既婚男性は61%も上昇しているのに対して、独身男性群の伸びは16%に留まる。

つまり、男性が結婚することによって得る経済的メリットがどんどん上昇していることになる。昔は男性にとって経済的「負担」とされていた結婚が、いまでは「お得」な結果を生み出しているのだ。



では、カリフォルニアに焦点を移してみたい。

California budget projectによると、カリフォルニアでの一家あたりの平均収入は1979年から2005年にかけて9.6%あがった(数値は、インフレなど調整した結果)。ただ女性の収入をカウントしなければ、一家族あたりの平均収入は3.1%低下する計算になったとされている。

また、カリフォルニアでは女性の平均収入は74.3%あがったと言うから、前述の全国平均59〜60%に比べると平均以上に高い伸び率を示したと言っても過言ではないかもしれない。もちろん、データの提供元も計算方法も異なるし、全国平均は「一家庭の平均収入」であるのに対してカリフォルニアの数値は「女性の平均収入」なので、これまた一概には比較できないのだが。

さらにエリアを狭めてシリコンバレーに目を移してみると、どうだろう。アメリカの中でも一位二位を争って高い平均収入を記録するエリアで、かつ働く女性も多いので、男性が結婚によって受ける経済的負担は全国平均よりも低い(つまり経済メリットは大きい)ように想像できる。

ではシリコンバレーの夫婦は、結婚によって経済的な余裕を楽しんでいるのか?というと、現実はそうは甘くない。

仕事があるところに労働力が集まり、人口が増えて需要が高まるので物価があがる。特に家の値段の上昇はハンパなく、その結果、2人とも頑張って働かないと生活が成り立たないという、悲しい悪循環に陥っている。つまり男性女性に関わらず、いまや一人の収入源では余裕のある生活ができないという、異常な物価上昇に悩まされているのだ。。。でも少なくとも男性にとっては、自分の肩だけに生活がかかっているというプレッシャーが逃れられるだけでも朗報なのかも?

そして最後に触れておきたいのは、それでも男女間の給料のギャップは存在する、という現実。女性の平均収入が男性の52%だった1970年に対して、2007年には71%にあがっているものの、同条件への男女間の収入のギャップはいまだに存在する。カリフォルニアも例外ではないが、2006年には84〜92%とその差は全国平均よりは小さいようだ。そしての高給取りになればなるほど、男性優位の傾向は強まるというデータも出ている。

このギャップが解消すれば、奥さんの経済力がますます高まり、男性は大喜び?それとも、経済力に伴ってますます強くなっていくアメリカの女性に対して、複雑な心境だったりするのかも。。。

2010年1月25日月曜日

Twitter(ツイッター)、バレンタインにも一役買う?

アメリカで1860年以来、メッセージ入りのキャンディーを作り続けているNECCOが、今年のバレンタインに向けて、キャンディーにスタンプされる新たなメッセージを発表した。投票によって決められた今年の愛の人気メッセージの上位は、1位から10位まで順番に、'tweet me', 'text me', 'love bug', 'you rock', 'sweet love', 'me + you', 'sweet pea', 'love me', 'soul mate', 'puppy love'。

'call me'は20世紀のメッセージだとしても、10位くらいには入ってもよさそうな'email me'でさえ、一世代前の言葉になってしまったという個人的にはショッキングな結果。。

このNECCO、キャンディーを作っている伝統的な製菓会社にしては最近のテクノロジーへの対応に頑張っていて、iphoneのアプリまで開発している。このアプリ、何をするかと言うと、Twitter(ツイッター)のアカウントから5つまでメッセージつきのバーチャルキャンディーを、相手のTwitterのアカウントに送れるようになっている。

150年の歴史を持つキャンディー会社と、この数年で爆発的に人気の出たtwitter。一見共通点がないように見えるだが、実は大きな共通点がある。それは限られた文字数の中でいかにメッセージを伝えるか、ということ。Twitterの140文字という文字数制限はすでに短く感じるが、一方のキャンディーはせいぜい7文字くらいが限界という、twitterの究極版なのだ。

ちなみにこのコラボに関して、2つの会社間で金銭のやり取りはまったくないらしい。NECCOにとっては、キャンディーを使ってTwitterを宣伝するのが目的ではなく、あくまでも社会現象を反映した結果だから、とのこと。確かに日本語の「グーグる」の例にもあるように、会社名やサービス名の動詞化は、大成功の一つの証かもしれない。

2010年1月5日火曜日

オバマは大企業のCEOになれるか

ここ最近に始まった話ではないが、シリコンバレー系の企業で重役を勤めた有名人たちが政界に進出するケースが増えてきている。最近良く目にするのは、1998年から2008年までebayのCEOを勤め、共和党からカリフォルニア州知事に立候補宣言したMeg Whitman(メグ・ウィットマン)。そのMeg Whitmanが2008年の大統領選時に支持表明した、マサチューセッツ州知事のMitt Romney(ミット・ロムニー)も、もともとはコンサルティング会社Bain & CompanyのCEOだった。2003年から2007年まで州知事として勤めていて、2012年の大統領選にも再度出馬を表明するだろうと見られている。

元大企業のCEOと言えば、HPのCEOだったCarly Fiorina(カーリー・フィオリーナ)も2008年にオバマと大統領選を戦った共和党John McCain(ジョン・マッケイン)の経済アドバイザーを勤めていて、最近ではカリフォルニア上院議員選に出馬するのではと噂されている。

またそこまでの有名人でないとしても、シアトルでは元マイクロソフトの重役が数人こぞって政界に進出しているという話もある。

ここでふと疑問に思うのが、「成功したビジネスマン、もしくはビジネス経験の豊富な人材は政治家としても成功できるのか」ということ。そして逆に、2008年の選挙戦を騒がせたObama(オバマ), McCain(マッケイン), Biden(バイデン)やPalin(ペイリン)などは、ビジネス界でリーダーとしての素質を発揮できるのだろうか?(この4人全員が必ずしも政治家として成功しているとは言えないので、「ビジネス界で」ではない点を強調させてください)

前述のCarly Fiorinaが、最近公の場で「今の政界を仕切っている政治家たちは、HPのような大企業を動かしていくことは決してできない」と発言している。皮肉な見方をすれば、彼女自身のCEOとしての評判は散々だったので、CEOとして成功しなかった自分でも政治界では成功できる可能性があると密かにアピールしているのかもしれない。

では、企業のCEOに必要な素質とは何だろう。そしてそれは政治界でのリーダーのそれとどう異なるのか。

大きな企業でCEOの地位まで上りつめるためには、能力や経験はもちろんだが、自分を売り込むことに長けていることが必須だ。自己主張が強く自分のポジショニングや売り込みがうまくなければ、大企業のトップにまで上り詰めることは不可能と言っても過言ではない。わたしの個人的な経験からしても、アメリカ人の自己アピールはハンパじゃない。日本的な遠慮とか周りへの計らいとか言っていたら、言葉通り蹴落とされてしまう。ただ、一度トップの地位に着いてしまうと、アピールする対象と相手が一転する。今度は、自分が他の社員よりも優れていることを社内の上司にアピールするのではなく、社外に対して、会社全体そして自分が動かすチームがいかに有能かを売り込むことが要求される。

また会社のトップともなれば、投資家や金融アナリストなど、社員とは違った観点で会社を評価する、厄介な部外者を相手にしなければならない。例えば短期的なリターンを求める投資家に対しては、社内での長期的戦略をサポートする数値は大して評価されない可能性がある。さらに厄介なことに、彼らは会社のトップであるCEOよりも力や発言力を持っているのだ。

違った目的を持ったさまざまな関係者たちの多様な期待に応えられるよういかにチームをまとめられるか、がカギになる。一人でやり遂げる規模のことではないので、社員からの信頼は必須で、その点はボランティアをまとめて市民や国民にアピールしていく政治家と似ているかもしれない。

ということは、成功したCEOは政治家としても成功する素質があるということか?

Steve Jobs(スティーブ・.ジョブス)を例にとってみたい。学歴的には大学の途中で退学、マネージメントのトレーニングなども受けていないなど、履歴書上では政治家としては失格になりかねない。ただジョブスがCEOとして失格だという人は、誰もいないだろう。

彼はエンジニアとかデザインとかファイナンスといった狭い分野のエキスパートではなく、大きな視野と方向性を持ち、エキスパートの集まりであるチームをその方向に導くことができる、いわゆる「ビジョナリー」だ。それに加えて、そのビジョンを達成するために良い人材を選ぶ目を持っていること、そして厳しいながらも必ず結果を出すという徹底したスタイルが特徴だ。カリスマ性がスキルと言えるかどうかは微妙だが、少なくとも影響力とか威圧する雰囲気や、良い人材を選ぶ目というのは、政治家としてももっとも必要なスキルの一つだろう。

ではそんなスティーブ・ジョブスは、政治家として成功できるのか。古い慣習が残るだろう政治の世界では、年功序列とか系列とかあるから、そこまで他人にシピアだと衝突は避けられないだろう。ビジョンを持ちながらも人にうまく合わせる(というか、合わせているという錯覚に陥らせながらも実は自分のペースに持ち込む)ことが必要で、ある程度の配慮や根回しは避けられない。

またジョブスの結果主義という点でも、数値で結果が出やすいビジネス界とは異なり、政治家の結果はなかなか定量化しにくい。ビジネス界のリーダーは定量的に評価されることに慣れていて、逆に言えば、自分の部下の評価も数値に基づくところが大きい。一方の政治界では、自分の右腕だったりサポーターの評価はなかなか定量化できない。一言で「良い人材の選択」と言っても、「良い」の定義が異なってくるため、選りすぐりの人材を選ぶ観点もスキルもまったく同様ではないことがわかるだろう。

つまりリーダーとしての素質とは基本的には同じだけど、ビジネス経験が政治家としての成功を保証しているわけでは決してない。また逆も然りで、協調性や同調することばかりを探っている政治家は会社の致命的な決断のタイミングとか舵取りをミスしてしまう可能性が高いと想像できる。

ただ一つ確かなのは、ビジネス界出身の政治家が増えていることが証明しているように、シリコンバレーを中心に、テクノロジー系のビジネス経験者の、政界への影響力は強まる一方だということだ。

2009年12月29日火曜日

不景気脱出のカギは中国、インド、そして女性?

この不景気の中を救うのは女性消費者だという話を良く耳にする。全般的に女性の経済力が強まっているのはもちろんのこと、女性は男性に比べて生活必需品の購入決定権を握っていることが多いなどというのが、大きな根拠のようだ。

世界レベルで比較すると、現時点で女性の収入合計額($10.5 trillion = 約932兆円)は男性の合計収入額($23.4 trillion = 約2078兆円)の半分にも及ばないが、それでも差は縮まりつつあるという。一人あたりの平均給料増加率を見ると、女性が8.1%であるのに対して、男性の収入の伸びは5.8%に留まる。一人あたりの給与の増加に加えて女性労働者数自体も増えていることを考えると、女性の合計収入額が伸びることは容易に想像できる。では、実際どれくらいの勢いで伸びているのか。全世界の女性の収入合計額の成長率は、インドと中国という2大国を合わせた消費成長率の、2倍以上にも及ぶと見込まれている。女性労働力とインドや中国と言った大国を比較するのも奇妙な感じがするが、キャリアウーマンを集めて一つの国を作ったら、インドや中国に匹敵する成長を見せる大国ができる、と言ったところだろうか。

裕福な国での女性の社会への進出が目覚ましいことは言うまでもないが、この数年で中国やベトナムなど途上国でも、女性の社会進出率は70%に及んでいる。他にも世界的な寿命の伸び(健康面の向上)や出産率の低下なども、 間接的ではあるが、強まる女性のキャリア志向を示唆している。

社会に進出する女性の全体数が増えれば、大企業の経営者や上層部まで上りつめる女性も増えるだろうと予想するのは当然の流れだと思われる。

では実際、会社の経営者、経営陣層に進出する女性の数はどのような推移を示しているだろうか。その指標の一つとなる、大企業内での女性CEOの数を調べてみた。アメリカのフォーチューンマガジンによるランキングFortune 1000, Fortune 500(ともにアメリカ企業のみ対象)とFortune Global 500(全世界の企業対象)それぞれの中で、女性CEOを持つ企業数をプロットしたものが以下のグラフとなる。



ここに見られるように、アメリカに限って言えば、フォーチュン500企業内での女性CEOの数、フォーチュン1000企業での女性CEOの数ともここ近年増加していて、この傾向はさらに強まると予想されている。ますます増える大学卒、修士号持ちなどの高等教育を受けた女性が社会に進出して、ミドルマネージメントに成長する10年くらい内には、フォーチュン500企業内の女性CEO数は100人まで増加するとも言われている。

一方、世界的なランキングに基づいた女性トップの数を見ても、アメリカ限定の場合と比較してやや遅れを見せるものの、増加傾向にあることは明らかだ。

では伸びる女性労働力、このたびの不景気でどの程度打撃を受けているのだろうか。

ある調査によると、今回の不景気で失業した労働者の80%以上は男性だという。伝統的に男性優位な業界とされる、ファイナンスや製造が不況の影響を一番強く受けたことが原因の一つとされている。ただし、女性男性間での相対的な打撃の大きさを比率で見てみる(女性または男性の失業者数/女性または男性の労働者数)、しかも役職別に見ると、新たな傾向が浮き上がる。

CEOや 上級管理職(Senior-level executives)や重役につく女性に限って言えば、19%が職を失ったことに比較して、男性経営者内での失業率は6%に留まった。ただし、上級管理職 以下(Senior-level executives以下)に限ると、男女ともに11%に留まるというから興味深い。つまり上の職位に着く女性ほど、男性と比較して失業率が高くなっているのだ。いまいちしっくりくる説明は見つからないものの、一つの仮説としては、女性経営者は男性独特のスポーツのネタで盛り上がったり、付き合いで飲みに行ったり、休日にゴルフしたりと、男性経営陣同士が持つような仲間意識を築くのが難しいということがあげられる。そこまで上の職位でなければ、政治力や男性の仲良しクラブ的なノリにどこまでついていけるかに左右されず、実力や仕事に対する姿勢で評価されることが多いため、男女間での差がそこまで出なかったのだと思われる。

では冒頭の不景気の話に戻り、女性が何故不景気脱出のカギになるかということを改めて考えてみたい。

ご想像の通り、消費活動の大部分は女性によって行われる。ボストンコンサルティングの調査によると、全世界での年間総消費額(個人消費のみ)が$18.4 trillion(1634兆円)であるのに対して、女性による消費額は$12 trillion(1066兆円)となっている。食費の90%、電化製品の55%、そして新しい車も実は女性によって購買が決定されていることが多い。つまり女性が経済力を保つ、もしくは向上させることによって、消費活動も活発化する。それに加えて、女性はヘルスケアや教育など、直接的・間接的に社会に貢献することに対する投資をする傾向が強く、また、リスクの高い投資活動などは控えがちということもわかっている。そう言った性格的な面も、不景気を生き残るカギとなりそうだ。

また先述のように、この不景気で失業したのは男性が多いことを考慮すると、女性の収入に頼っている家計家庭の割合が増えていることになる。その結果、女性の家庭での購買決定力はさらに大きくなることだろう。

その他の女性消費者の傾向としては、商品や会社、ブランドに対して忠実だということ。ソーシャルネットワークサイトや口コミで商品の情報を周囲に発信するのが大好き、という女性も多い。

企業にとってこれは何を意味するのか?男性消費者をターゲットにした製品、アルコール、たばこなどは間違いなく打撃を受けるだろう。一方で女性消費者の心を しっかりとつかんでいる企業は(一般的に、Visa, Wal-Mart, Nestle, Johnson & Johnson などは女性に人気があるとされている)、女性の経済力が増加することによって恩恵を受けるだろう。

先日、フォーチューン500の女性CEOの一人であるAndrea Jungの講演を聞いてきた。彼女が強調していたメッセージは、肩書きや給与などに基づいて「頭」でキャリアを選ぶのではなく、情熱やどれくらいワクワクしているかという「心」の声に耳を傾けて決定をしろということだった。ファイナンスクライシス以降、表面的な価値観がガタガタと崩れていく中で、情熱を持って働いている人は強い。わたしの個人的な経験による限られたサンプル数から判断すると、仕事となると日米関わらず、女性は男性に比べて、好きなことを追求している人が多いような気がする。男女問わず、仕事の表面的な価値が崩れたときに情熱を失わない人は、景気の波に関わらず成長していく、ということは間違いないだろう。

2009年11月14日土曜日

Google中国の生みの親が辞任したワケとは?北京がシリコンバレーになる可能性


Googleは中国では通用しない?


今年9月の初め、Google Chinaの社長をつとめてきた Lee Kai-Fuがいきなりの辞任を発表した。一般的にどの外資企業も中国市場では苦戦しているが、検索業界も例外ではない。地元企業の百度(Baidu)がマーケットシェア61%という独占地位を確保、アメリカで一位のグーグルも日本で一位のヤフーも中国でのマーケットシェアはそれぞれ29%、10%以下と、付け入る隙がない。(調査会社の Analysis International による)

比較のために日本の検索業界のマーケットシェアを紹介すると、1位のヤフーが51%、2位のグーグルが38%で、アメリカでは、1位のグーグルが65%、2位のヤフーが20%弱となっている(ともにコムスコア社による)。つまり百度(Baidu)は中国において、日本でのヤフー、アメリカでのグーグルに匹敵する独占状態を確保していることがわかる。さらに調査会社によっては、百度(Baidu)のシェアが76%、グーグルは20%に留まるとしていると見積もっているところもある。そもそも「マーケットシェア」は定義や測定方法によってまちまちなのが現状だが、それにしても百度(Baidu)が独占地位を確保しているという点については、どの情報ソースを見ても一貫している。

Kai-fu LeeがGoogle Chinaのトップに就任した2005年にはグーグルのシェアはほぼゼロだったことを考えると、20〜30%にまでに伸ばした功績は評価される。ただ一方で、やっぱり百度(Baidu)の独占状態を揺るがすには至らなかった、というネガティブな評価もあるようだ。

Googleの期待に応えられなかったKai-fu Lee

このKai-Fu Lee、グーグルに移る前はマイクロソフトの研究所でVPを務めていて、2005年にGoogle Chinaトップに就任した際には、グーグルがライバル企業のマイクロソフトから中核を担う人材を引き抜いた違法行為を犯したとして、マイクロソフトが雇用契約違反で同氏とグーグルを訴えたという経緯がある。(余談だが、そんなマイクロソフトは半年ほど前にヤフーからコアな人材を引き抜いていたりするのだが)。その際にグーグルがKai-fu Leeに提示した給与は10億円相当だったということもあり、話題になったのも記憶に新しい。

そんな鳴り物入りでGoogle Chinaを背負ってたつことになっただけに、今回の辞任の理由にも注目が集まるのは当然だろう。アメリカ本社の経営陣との不仲説、中国内でのコアなメンバーとの不仲説、またグーグルのやり方では勝ち目がないと見て見切りをつけたという説などいろいろな噂は絶えないが、本人はインタビューで辞任の理由をこう語っている。「グーグルのマーケットシェアの拡大や中国独自のサービスもいくつか軌道に乗せたことで、自分の役目は十分に果たした。今の中国ではそれなりに成長したベンチャーに対するファンディングは集まりやすいが、早期のベンチャーに対するエンジェルファンディングが圧倒的に不足している。そのようなアーリーステージのベンチャーやアイディアを抱えた若者たちに、エンジェルファンディング、シードファンディング、さらにビジネスの立ち上げを支援できるようなプラットフォームを合わせて提供する場を作りたい。」中国を次のシリコンバレーにするというビジョンを見据えての、第一歩のようにも聞こえる。

北京はシリコンバレーになれるのか

新しく立ち上げる投資ファンドとスタートアップのインキュベーターの名前は’Innovation Works’。ハングリー精神に富んだ北京の学生や起業家の卵たちに起業するためのインフラ、リソース、金銭的かつ精神的サポートを与えて、育ったらスピンアウトしてさらに大きく育てていくというのがビジネスモデルらしい。

またこの’Innovation Works’、 中国のエリート大学の一つである清華大学(Tsinghua University) のキャンパス内にオフィスを構えるのだと言う。シリコンバレーのベンチャーや投資家たちがスタンフォード大学との間に築いたような関係を再現しようとしているように見える。

Kai-fu Leeの新たな挑戦は、裏を返すと、不景気にも関わらず、中国のベンチャー市場、そこに集まる投資額、ビジネスチャンスはまだまだ成長の余地があるというメッセージにも受け取れる。

では実際に中国において、ベンチャーキャピタルによるベンチャーに対する投資額や投資案件、またベンチャーの規模やステージ別での投資額の比較を数値で見てみたい。

以下のグラフは、中国における四半期ごとのベンチャーへの投資案件数と投資額を示している。(ソース:Zero2IPO Research Center)



これによると、2008年第2四半期以来下降する一方だった投資案件数と投資額ともに、2009年第2四半期には初めての上昇傾向を示している。前期の2009年第1四半期と比較すると案件数は87%、投資額は77%の伸びとなり、2008年の数値にはまだまだ及ばないものの、わずかながら復活の兆しを見せている。(ただしすべてのファンドが投資額と詳細を公表しているわけではないので、この数値は公表されたものに基づいたデータ、となります)

それではこれらの投資額、ベンチャーのステージごとに均等に分散されているのだろうか。Kai-fu Leeの話によれば、アーリーステージのベンチャーに対しての投資額は少ないということだったが、実際のところはどうか。

以下のグラフでの’early stage’は早期、‘expansion stage’は中期/拡大期、‘late stage’は後期(それなりに成長した)ベンチャーということになる。これからわかるように、拡大期にあるベンチャーが案件数の60%以上、そして投資額の50%以上を占めている。



でも考えてみれば、一番資金が必要そうなのは拡大期にあるベンチャーだし、投資する側としてもリスクはアーリーステージほど高くなく、かつレイトステージよりも高いリターンが見込めるという点で、一番おいしい投資分野のような気もする。となると、この傾向はどの国でも同じなのでは?

そんな疑問に答えるために、アメリカのデータと比較してみたい。



データのソースもステージの定義も異なるので一概には比較できないのだが、Seed, Series Aがアーリーステージ, Series B, Series C, Series Dが拡大期(Expansion Stage)、Series E, Series Fがレイトステージ(Late stage)に相当すると仮定すると、アーリーステージのベンチャーが44%、拡大期が53%、レイトステージ4%という結果になる (‘undisclosed’を除外して計算)。 確かに27%がアーリーステージ、60%が拡大期だった前述の中国のデータと比較すると、アーリーステージ(early Stage)と拡大期(Expansion Stage)の差はさほど大きくない。

また、アメリカと中国の比較という観点で、分野ごとの投資額/案件の分散にも目を向けてみたい。

まずは中国の分散から。投資額で見ると、ITを押さえて’Traditional’に対する投資が際立っている。クリーンテクノロジーやバイオ分野とITを合計しても35%ほどにしか過ぎず、まだまだ伝統的な分野が強いことがわかる。急速に発展する経済のスピードに追いつこうとするインフラ整備を考えると、不思議な数値ではない。



一方のアメリカでは「予想通り」、テクノロジー系が大部分を占めている。中国の投資案件数で大部分を占めていた’traditional’に匹敵するのは、’energy’ ‘industrial’ ‘transportation’ (もしくはその一部)あたりだろうか。となると、その合計はわずか15%にしかすぎない。



またこの分散の違いがある意味、アーリーステージへの投資案件数を左右する一つの原因になっているのかもしれない。例えばインターネット系のベンチャーとインフラ系のベンチャーを比較すると、初期投資額はかなり異なるだろうと予想される。インターネット系であれば、極端な話、パソコンとブロードバンドさえあればビジネスをはじめられるケースも少なくない。一方インフラ系となれば、相当の初期投資がないとアイディアを形にするすべもない。

中国内はもちろんのこと世界にまたがる広い人脈、多彩なビジネス経験、ビジネス界に大きな影響力を持つKai-fu Lee、北京を次のシリコンバレーに成長させることはできるのか。中国市場を理解してシリコンバレーを理解しているからこそ、シリコンバレーのモデルをそのままコピーするのではなく、中国版シリコンバレーを作りあげていくのに最適な人材だと言える。 その実現に向けて、大きな機動力になることは間違いない。

2009年11月10日火曜日

オンラインテレビHuluは、テレビの敵か味方か

少し前の話になるが、9月20日に第61回エミー賞(Emmy Award)が開催された。エミー賞は、アメリカのテレビドラマ、コメディー、コマーシャルなどのテレビで放映されるコンテンツに関連する業績に与えられるもので、「24」、「sex and the city」など日本でもお馴染みの番組も全盛期には様々な部門で賞を総嘗めしている。

今年のエミー賞中継は視聴率が6%上昇した結果、この3年間での最高視聴率を記録した。約 1,332万人が中継を見た計算になる。それ以外にも、例年と違うという点で今までにない面白い顔ぶれを揃えたのは、コマーシャル部門だ。ノ ミネート作品とそのスポンサーを見ると、Amex, Nike, Budweiser, Coca-Cola, Bud Light, Career Builder, Sprint Nextel と毎年お馴染みの大企業が並ぶ中、オンラインTV「Hulu」がリスト入りしたのだ。

「Hulu」とは2007年に始まったオンラインテレビで、NBC, Fox, ABCを初めとした数々の大手テレビ局や映画会社と提携して、ドラマ、ショーや映画をネット上で提供している。ノ ミネート作品となったのは、このHuluがスーパーボールのために作ったコマーシャル。「30 Rock」という最近一番人気のコメディーで主役をつとめるアレック・ボールドウィン(Alec Baldwin)を起用し、人間の姿をしたエイリアンに見立てた。CM自体特に面白いというわけではないものの、スタートアップが大物を起用したというこ ともあり話題を呼んだことは確かだ。
ちなみにこの「30 Rock」、今年のエミー賞でベストコメディー賞を受賞してノリに乗っているコメディーなので、そんな事実からもHuluが「単なる有名人」ではなく、旬な大物を使ったことがわかるだろう。

Huluの企業形態はジョイントベンチャーで、NBC Universal, Fox Entertainment Group (親会社はNews Corp), ABC Inc (親会社はThe Walt Disney Company)が主な出資者だ。つまりNBC, Fox, ABCのドラマやショーは必然的にカバーしているので、大手テレビ局の中で欠けているのはCBSのみ、ということになる。そのCBS、Huluと提携して いない最後の大手一社となった今、ますますHuluに敵対心をむき出しにしている。
最近の記事によると、CBS以外大手テレビ局の視聴率が軒並み下降気味なのはHuluを代表としたオンラインテレビの影響(責任?)だという見解を示している。噂によるとCBSでは、オンラインでのコンテンツ流出を規制するため、ケーブルテレビの契約者などすでにお金を払っている視聴者のみにオンラインでのドラマ視聴の権利を限定すべきだ、などという後ろ向きな意見も出ている。
それに対して他の大手テレビ局は、独自のサイトで自社のドラマやショーを流しつつ、並行してHuluというチャネルも利用して、リーチを増やそうとしているので、CBSとのスタンスの違いは顕著だ。

大手のテレビ局まで脅かす存在になったHuluだが、そのプロダクトの魅力は何なのか。

実はわたしも毎日のようにHuluで「テレビ」を見ているヘビーユーザの一人だが、放映時間とかに縛られず見られる気軽さ、パソコンさえあればどこでも見られる気軽さはテレビに代え難い。また、たったの1日遅れでサイトにアップロードされるので、1シーズン待たないとドラマが見られないといったこともなく、快適だ。しかもテレビに比べてコマーシャルは短い。

もちろん無料だという点も大きな魅力ではあるが、そもそも高速インターネットサービスに加入していないと見られないのである意味「無料」ではないというこ と、また、アメリカではケーブルテレビ会社から電話・テレビ・インターネットサービスを1つのパッケージとして購入しているユーザが多いということなどを 考えると、無料であるということだけでなく、利便性もその人気に一役買っているだろうと思われる。

そんなわけで、着々とユーザと知名度を伸ばしているように見えるHuluだが、他のテレビ局サイトと比較してどのような伸びを示しているのか。テレビ局の公式サイトと言えばブランド力はダントツだし、多くのトラフィックを集まることは簡単に予想される。また、各テレビ局サイトでも当然各社のショーやドラマは見られるようになっているので、内容的にはHuluと大差ない。つまりABCのサイトに行けば、Huluに行くのと同様に人気の’Lost’が見られるので、見たいドラマさえ決まっていれば、どっちのサイトで見ても大して変わりはないのだ。では、ユーザはどっちを選ぶのか、そしてその理由は?



(※データへのアクセスが制限されていたため、グラフ内の数値は概算値になっています)

以上のグラフでは、Huluと他の大手テレビ局サイトへのトラフィックを比較している。全体的に上昇傾向であるものの、5〜6月の夏休みシーズン始まりに 伴って3つのテレビ局とも下降傾向を示している。アメリカのテレビ局は夏休みシーズンになると、古いエピソードを再放送して9月の新シーズンに備えるの で、この時期に軒並みトラフィックが落ちているのは納得がいく。だが面白いことにhulu.comだけはその影響を受けず、2009年7月には大手テレビ局のサイトを抜かして一位に躍り出た。

検索用語別のトラフィック分布を見てみると、さらに面白いことがわかる。



これは、各サイトがどのような検索用語に基づいた検索結果からトラフィックを誘導しているか、を示したものだ(2009年6月時点でのデータ)。「Network Name」を見ると、検索サイトからhulu.comに流れるトラフィックの約56%が、「hulu video」 のようなテレビ局名/会社名を含む、つまり「hulu」という言葉を含む検索用語による検索結果からの誘導だということがわかる。Nbcを例に取ると、「nbc tv」などの検索用語からのトラフィックが一番左のカテゴリー「Network Name」内の「nbc.com」という軸にカウントされている。

2つ目のカテゴリーはショーやドラマの名前が含まれる検索用語で、「24 episodes」などが例として挙げられる。

最後のカテゴリーは「無料のコンテンツ」を強調した用語で、例えば「watch free TV」など。

これを見ると、Huluのトラフィック上昇の原因と成功のカギが見えてくる。

まず目につくのは、Huluに関しては「Hulu」という名前を検索用語に使う人が断然多いということ。Foxや nbcはそれぞれ17%、14%であるのに対して、Huluは56%にも上り、他のカテゴリーと比較しても56%というのは一番高い数値だ。つまり、「特 定のテレビショーを見たい」というよりも、「見たいドラマが決まっているわけではないので、まずはHuluに行ってみたいものを探す」、もしくは「huluに行けば探しているショーが見つかる」、という意識がユーザに強く植え付けられていることがわかる。

夏休み再放送サイクルに突入して、すでに見たエピソードを見るよりも、他にまだ見ていない面白いドラマを見つけたいというニーズが高まり、この傾向に拍車をかけたとも言える。

また3つ目のカテゴリーからは、他の大手テレビ局サイトも無料コンテンツを提供しているのに関わらず、「無料コンテンツ」というキーワードからトラフィックをうまく誘導しているのはHuluだけだということもわかる。サイトの作り方を含めて、「無料コンテンツならHulu」というイメージをうまく確立した。

ではそのビジネスモデルはどうなっているのか。

今現在は、各ショーの初めや間に、テレビよりも多少短いコマーシャルが挟まり、それによって収入を得ているという単純なビジネスモデルだ。1年ほど前から は、はじめに長いコマーシャルを見てあとはコマーシャル無しか、途中に複数の短いコマーシャルを見るかなどの選択肢をユーザに与えたりしている。ただ近年 の伸びを経て、これに加えて、subscription ベースとペイパービューのサービスを検討中だとも漏らしている

それに加え、つい最近、他のユーザのコメントなどが見られるようなフェースブック・アプリをリリースした。これを使うと、右手には番組の画面、左側は同じ番組を見ているほかのユーザからのコメント(自分の友達だけを選ぶことも可能)を見ることができるので、リビングルームで友達とテレビを見ている感覚が味わえる

オンラインでの無料コンテンツの配信サービスの課題は常にビジネスモデルにあるとされていたが、Huluのコマーシャルが他の大手企業コマーシャルと同様にエミー賞で評価されたという事実は、伝統的なテレビ界とオンラインテレビ界との垣根がだんだん低くなっていることを間接的に示唆しているのかもしれない

2009年10月16日金曜日

アメリカの起業家も高齢化?

テクノロジー系のスタートアップの成功例と言えば、グーグル、フェースブック、Twitter、Youtubeに代表されるような、20代30代の学生や若者がノリで始めた会社がビジネスとして花開いたという手の話が主流と思われがちだ。この仮定が正しければ、人口の高齢化はアメリカの起業ブームにマイナスに働くと思われるところだが、今年の6月にKauffman Foundationが面白い調査結果を発表している。

この調査によるとアメリカの現状は、「高齢化にも関わらず起業ブームが終わらないアメリカ」ではなくて、「高齢化に支えられる起業ブーム」だというのだ。

Duke大学の調査によると、テクノロジー系分野で起業する人の平均年齢は何と39歳らしい。意外にも高齢?と驚く人が多いのではないだろうか。またここ数十年間のデータによると、起業する確立が一番高いのは55〜64歳の年齢層となっている。一般的に20〜34歳はリスクを顧みず起業を恐れないイメージがあるが、この年齢層の起業率が実は一番低いとされているのだ。これも意外な結果。しかもこの傾向は、ドットコムブーム前後の11年間に強い傾向として現れ始めている。ドットコムブームと言えば、若い起業家がもてはやされてセレブかした印象が強いにも関わらず。。。

その傾向を後押ししたのは何なのか?背景としては、一生一つの会社に長く勤める終身雇用率が減少していることに加え、最近の不景気が挙げられるという。もともと30歳以下は仕事を変わる頻度が高いというのは昔からの傾向だが、35〜64歳の年齢層に限っては、終身雇用率はこの50年間で急激にさがった。平均寿命の向上、健康な高齢者が増えていることを加味すると、この傾向はさらに強まっていくと思われる。つまり自発的な退職にせよ、不景気で退社を余儀なくされる場合にせよ、高齢層の起業を後押しする要因が増えているのだ。

大企業は存続し続けるという仮説が否定された今、高齢者の起業ブームはさらに続くと予想されている。

また、起業率最高の年齢層55〜64歳はベビーブーム層とちょうど重なり、人口ピラミッドの中でも最大の年齢層だったりもする。経済の復活のカギは起業家が握るとも言われる中、かすかな希望を与えてくれるデータではないだろうか。


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