2009年3月13日金曜日

コメディアン対ビジネス・ジャーナリスト

米国のコメディ専門チャンネルコメディ・セントラルで放映されているザ・デイリー・ショーの司会者ジョン・スチュワートとCNBCの投資情報番組「Mad Money」を担当するジム・クレーマーがテレビ局を超えた激しいやり取りを繰り返していて、話題になっている。

コメディ・セントラルはコメディ専門チャネルで、見ているだけでIQの下がりそうな番組から時事ネタを扱う報道番組まで多彩に提供している。看板番組ザ・デイリー・ショーのジョン・スチュワートは、政治ネタを中心にむしろ報道メディアを批判することで有名だ。ネタにされた政治家たちはさぞかし怒っているんだろうと思いきや、ここはさすがアメリカとでも言おうか、翌週には本人がうれしそうに番組のインタビューに登場したりする。去年の選挙戦の直前にはオバマも登場して、ジョン・スチュワートの突っ込みや皮肉に大笑いしていた。

一方CNBCは日本の日経CNBCとしてもお馴染みのように、「ビジネスニュースならCNBC」の売り文句で株式情報、ビジネスニュースを一日中放映している。ただ日経CNBCと違うのは、お固いビジネス情報番組でありながらも登場するアナウンサーや評論家のキャラクターはとても濃いということ。数週間前には、シカゴ市場からの中継を担当していたCNBCのリック・サンテリが生中継中にキレて、「家のローン救済策は馬鹿げている!何で俺たちが隣人のローンの支払いをしなきゃいけないんだ?大統領聞いてるか!?」と大声で叫びだした。周りにいるサクラなのか本当に市場で働いている人なのかわからない10人くらいのトレーダーらしき人たちもそれに大声で同意。スタジオにいるキャスターもタジタジになる始末だった。その反響はあまりにも大きく、サンテリ氏にホワイトハウスのロバート・ギブス報道官がプレスコンファレンス中に反論するまでに至った。そんな中、熱いキャスターやコメンテーターの筆頭としてあげられるのがCNBCで「Mad Money」を担当しているジム・クレーマーだ。もとヘッジファンドのマネージャーのジャーナリストは常にテンションが高く、いきなり椅子を床に叩きつけたり、とんでもない奇声を上げるので、発作を起こして倒れないかといつも見ていてヒヤヒヤする。この「Mad Money」という番組、基本的にはどの株が今の一押し株かを宣伝するのだが、この度の株大暴落という始末では売りも買いもあったものではない。ジョン・スチュアートがクレーマーの最近の無責任な「株買い」発言を取り上げながらNCBCに対する批判を繰り返していたら、クレーマーが「コメディアンに何がわかる」と自分の番組や他局の番組上で反論。テレビ局を超えたちょっとした口喧嘩が始まった。

その結果、クレーマーがザ・デイリー・ショーのゲストに登場するという直接対決が決まったのだ。ちょうど先週放送されたのだが、スチュワート曰く「現実には2つの世界が存在している。まじめにコツコツと働くサラリーマンには401Kなど年金制度が長期的に一番特で安心と促しておきながら、それを元金に株市場で大儲けする短期利益のみを狙う投資銀行や投資家が存在する世界。CNBCは後者のための番組で、株投資のリスクなど含めて中立的な視点から情報を届けていない。株式投資を過度に促すような情報の流し方をしていて、情報番組としての責任を果たしていない」。確かにCNBCの番組、その中でも特に「Mad Money」はエンターテイメント化していて、プロの投資家ではなく一般人に対して投資をゲーム感覚で促す傾向がある。もちろん実際にそれを真に受けてやるかどうかは個人の責任だが、テレビの影響はあまりにも大きい。特に自らを「正統派ビジネス情報提供番組」として位置づけているCNBCであれば、影響はさらに大きいと思われる。対談の結果だが、クレーマーからの反論は驚くほどほとんどなかった。彼も番組でキャラを演じているにすぎず、人気が出てしまったが故にエンターテイメント性に歯止めが効かなくなったような印象も受ける。この大不況がCNBCの報道姿勢をどう変えるのか。

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