2010年11月23日火曜日

ますます盛り上がるアプリ開発

アメリカでのiphoneのテレビコマーシャルのキャッチコピーである“There’s an app for that”が、まさに今のシリコンバレーを象徴している。この近辺で、起業家やこれから起業しようとアイディアを練っている人たちの99%は携帯、スマートフォーン、タブレット向けのアプリ開発を狙っていると言っても過言ではないだろう。

今までiphoneの唯一のキャリアだったAT&Tも、パロアルトに数億円かけてアプリ開発専門のテックセンターを開くことを発表。VCのKleiner Perkins Caufield and Byers(KPCB)は、「ifund」を通してiphone, ipod touch, ipadのアプリ開発者たちに200億円の投資を行っている。彼らの焦点はロケーションベース、ソーシャルネットワーキング、ヘルスケア、教育、エンターテインメントなど。投資先の主な会社にはBooyah, Zynga Mobile, Shazamなどがある。ビジネスになるところにお金が集まり、さらに開発者を刺激する。

スタンフォード大学が拠点を構えるパロアルト発の人気アプリと言えば、“Tap Tap” ゲームで知られるTapulous がある。これまでに3.5千万ユーザを獲得し、この7月にはディズニーに買収された。"
Guitar Hero for the iPhone"(もしくはDance Dance revolution)と例えられることでも証明されるように、何も目新しいアイディアではない。ただ、Lady Gaga, Cold Play, Justin Bieber, Katy Perryなど実際の有名アーティストと手を組んで彼らのヒット曲をフィーチャーしたり、アーティストとのチャットルームを設けたりして、ビジネスとしての新境地を必死に探す音楽業界とも密接に手を組んでいる。つまり、単なるリズムゲームではない立派な娯楽ゲームを確立したのだ。

娯楽性と言えば、最近のアプリの成功のカギの一つとされている。もう一つは実用性の高さ。両方を備えていればベストだけど、少なくともいずれかに徹していることが成功のカギと言えるだろう。競争は激しくなり、目新しいからというだけでユーザがお金を払って使ってくれる時代は終わった。また、スマートフォーンが技術に疎い一般人まで普及してきたことにより、使い勝手の良さやわかりやすいユーザインターフェースも一層重要となってきている。

もちろんOSという点では、アンドロイドも忘れてはならない。2010年の第3四半期には売り上げでiphoneを超えていて、開発者にとってはiphoneと同様に、もしくはこれからはそれ以上に大事なプラットフォームとなってくる。

開発者
Tim Su とビジネスパートナーJon Parisが始めたスケジュール管理アプリ、”Todoroo” はパロアルト近辺発の代表的なアンドロイド向けアプリだ。会社名の由来もストレートに、Astrid (Android’s Simple Task Recording Dashboard)。

タスクをオンラインで管理する方法なんていくらでもあるのに、今さら何で?と思いがちだが、ポイントは仕事を連想させずにユーモアを織り交ぜる点にある。今日中に終わらせられなかった仕事や用事のリストを、グーグルやアウトルックにリマインダーをされると、罪悪感だけが残る。このアプリ、癒し系キャラクターのイカがほにゃほにゃと現れて、「いったいやる気あるの?」とか「もうやる必要ないっか?」とかビジネスっぽくなく柔らかなリマインダーを出してくれる。つまり「実用性」が高いんだけど遊び要素(ゲーム性?)も兼ね備えていて、業務用に使う素っ気ない管理ソフトとは一味違うところが受けている。

この2人はスタンフォード大学で意気投合してビジネスを始めたのだが、そのスタンフォード大学と言えば、当然のごとくこのブームに乗ってiphone向けアプリの開発コースを設けている。また、コードを書くというだけでなく、アイディアをどのように起業に結びつけ、そしてビジネスにしていくかという集中講義のようなサポートも行っている。

アプリのもうひとつの大きなポテンシャルはビジネスとして成り立ちやすいことである。主な収入源は広告、バーチャルグッズ、またはプレミアムバージョンを有料で売るなどだが、仮にすぐに収入に結びつかないとしても、多くのエンドユーザとつながったらしめたもの。パブリッシャー、広告主、キャリア、みんながみんなエンドユーザーの情報が欲しくてたまらないからだ。ユーザーがどこに行って、どういうスケジュールで一日を過ごし、何を食べて、どこで買い物して、どこに旅行するのか。どんな趣味があってどんな友達ネットワークを持つのか。モバイルはその点完璧なデバイスで、そのエンドユーザにつながって結果的に情報を収集するためにはその情報に対して金目をいとわないという会社も多い。

2010年9月11日土曜日

日本人の謙虚さが仇になる?

日本では、今年3月期から年収1億円以上の役員の実名公表が義務づけられている。

リストのトップを飾るのは日産のCarlos Ghosn、ソニーのHoward Stringerといった外国人社長。これは驚きではないけど、日本人社長はどうだろうか。

この10年で日本人管理職の報酬は2倍以上になったというものの、2009年のデータによると、3,813の上場企業の中で実名公表の対象となったのは300人にも満たなかったという。PricewaeterhouseCoopers の調査によると、日本の株式市場で上場している企業の社長の平均年収は4,900万円で、一般社員のほぼ16倍だったという。対して、アメリカのトップ3000社の社長の平均年収(給料、オプション、ボーナス含む)は$3.5million (ほぼ3億円)と報告されているから、その差は歴然だ。

Carlos Ghosnが$10Mを稼ぐ一方で、ライバル社のトヨタの社長はリストにさえ入っていない。ソニーのHoward Stringerが$9.1Mを稼ぐ一方で、ライバル社のパナソニックの社長もリスト入りをしていない。

この原因の一つとしては、伝統的に日本の会社は社長が内部から採用されることが多いことがあげられる。アメリカでは外部からリクルートすることが多いため、社長候補になるハイプロファイルな人材の獲得競争が激しく、提示給与が大きなカギとなるのだ。

これは幹部レベルに限ったことではないが、終身雇用がいまだに根付いている日本ではどのポジションでも労働力の流動が海外に比べると極端に少ない。ただ労働人口が減少する一方の今後の日本では、いかに海外からの優れた人材をリクルートするかは大きな課題の一つになるだろう。そしてその際に、給料水準の低さが一つの障害になるのも明らかだ。

加えて、日本での物価の高さが足かせになる。個人的にはサンフランシスコの方が物価が高いのでは?と思ったりするけど、アメリカ人がアメリカでのライフスタイルをそのまま東京に持ち込もうとしたら(ステーキを食べ、買い物は商店街ではなくて紀伊国屋でないといけないとか。。。)、確かに東京では相当の出費になると思われる。実際Mercer Consultingによると、物価の高い都市ランキングでは大阪が6位、東京が2位にランクインしている。

もう一つの問題は、労働人口が減少する日本からさらに労働力が流出していく可能性があるということ。若者の世界観が広がって、海外でのキャリアかつ金銭的なチャンスの大きさを知ったら、日本を飛び出していく若者は少なくないだろう。それを引き止めるためにも、金銭的なインセンティブは一つのカギになると思う。

今まで日本経済の強さの一因とされてきた謙虚さとか忠誠心だが、これからの時代はかえって仇になるかもしれない。

さて最後に、面白いのは日本のメディアと海外のメディアの受け取り方の違いだ。「200人以上も1億円プレーヤーがいることが判明」と報道する日本メディアに対して、「1億円を超える社長の数があまりにも少ないことに驚き」というのがアメリカでのトーンだ。

もう少し視野を広げて、このあたりの認識を変えていくのが第一歩かもしれない。

2010年7月12日月曜日

LeBron Jamesと経済効果

今月の大きな話題と言えば、NBAのスーパースターLeBron Jamesが移籍先としてMiami Heatを選んだこと。Jamesは高校からNBAにスカウトされて以来、本人の地元でもあるクリーブランド(Cleveland Cavaliers)でスターの座を確保、ほぼ無名だったチームをチャンピオン候補にまで成長させた。Cavaliersはファイナルに進むことはできなかったもののプレイオフには残り、過去最高の成績で今シーズンを終えた。

Jamesのこの7年間の功績をたたえる一方で、それだけの年数かけてもクリーブランドをチャンピオンにできなかったJamesを「失格」と呼ぶ声もある。バスケットボールはあくまでもチーム競技で、スーパースター一人の力で優勝できるわけではない。クリーブランドのチームは脇役不足、このスーパースターをアシストする力がなく、Jamesはその状況に満足していないというのがもっぱらの噂だった。

そんな中、ついに今シーズンを終えた7月1日にフリーエージェント入り。年間20億円相当(日本のスポーツ選手年俸との規模が違いにも注目)を稼ぐこのスーパースターの移籍先が、プレイオフ中から注目を浴びていた。

必死で引き止めたいクリーブランドの狙いは、チームの成績だけではない。

というのも、このJames獲得した7年前以来変わったのはランキングだけではないのだ。クリーブランドという、人口数が全米で40位以下、確立した産業があるわけでもなく、経済的に落ち込んでいる都市に対して、Jamesは大きな経済効果をもたらした。

James獲得以来、Cavaliersの観客動員数は59%上昇(ホームゲームの場合)、今シーズンはチーム結成以来はじめて41のホームゲームのチケットを完売した。

では、チームの成績が上がることでホームタウンにもたらす経済効果とはどの程度なのか?シカゴ大学ビジネススクールの調査によると、New York, LA, Chicago, Dallas, Philadelphia, Miami, Washington, Boston, Cleveland というNBA人気チームが拠点を構える都市では、人口の5%がプレイオフゲームにだったら100ドル余分に支払ってもいいと回答した。クリーブランド以外は人口が5百万人を超える都市なので、その5%が100ドル余分に払うとしたら、相当な収入増になる(もちろん収容できる客員数の範囲で、だけど)。もちろんそれに伴いグッズの売り上げも伸びるだろう。

先日CNNのLarry Kingショーでのインタビューを見ていたら、「クリーブランドの経済に対して責任は感じない?」と質問されていた。いかにスーパースターでも、一都市の経済状況を負わせるのは酷な話。

インタビューでも言っていたけれど、このレベルになるとお金の問題ではない。チャンピオンシップを勝ち取れるチームメートとコーチが揃ったチーム、ということがこの25歳にとっては本当に一番大事なのだ。

2010年6月21日月曜日

次のツイッターは誰か。カギはソーシャルゲーム、それとも地域情報?

シリコンバレーの動きは早い。去年世間を騒がせたTwitter (ツイッター)はメインストリームになりすぎて鮮度が落ち、昨年ほど騒がれることはなくなった。では次にツイッター並みに世間を騒がせるのは誰か、ということに注目が集まる。

最近急成長の会社は?と言われて、まず名前が思い浮かぶのが Zynga(ジンガ)と FourSquare(フォースクエアー)だ。

ジンガとはサンフランシスコに拠点を持つソーシャルゲームの会社で、わたしの周りでもここに転職する人がやたらと多いこともあり(それだけ急激に拡大している)、最近やたらと名前と聞くことが多い会社の一つだ。フェースブックにアカウントを持っている人だったら、一度は友達の使うジンガのゲームアプリからメッセージを受け取ったことがあるかもしれない。

ジンガのビジネスモデルは、ソーシャルネットワーク(主にフェースブック)にあってこそ初めて成り立つという、「ソーシャルネットワーク依存型」だ。いまやジンガ自体の世界中のアクティブユーザーが月間2億4千万人を超えていることを考えると、フェースブックにとって大きな存在に成長しつつあることは間違いないが、それでもフェースブックありきのジンガという構造は変わらない。

その証拠として、両者の2008年11月以来の月間ユーザー数の推移を見ると(以下のグラフ)、フェースブックの伸びに引きあげられるようにジンガのユーザー数も伸びているのがわかる。ジンガの成長の裏にはフェースブックの成長が大きく貢献しているのだ。



では「ソーシャルゲーム」とは一体何者なのか?

ジンガの代表的なゲームFarmVille(ファーム・ヴィル)を例にとってみよう。このゲームでは、ユーザーが農地を与えられて野菜を収穫しながら資産を増やし、その資産で新たな畑を買ったり、農耕機具を買ったりして、さらに資産を増やしていく。その拡大の過程でフェースブック上の友達を農民として近所に招いて、単体の農家から農村を築いていくのだ。つまり一人で自分の資産を増やしていくのではなく、ソーシャルネットワーク上の友達を利用することでさらに高得点を勝ち取れる仕組みになっている。最近ではフェースブック上でジンガ関連の招待メッセージがスパムのように溢れかえり、フェースブックが最近禁止するという措置を取るまでになった。大きな影響力と急増するユーザー数の証とも言える。

このジンガ、今日の上場価格は50億ドルにものぼると噂されている(ソース: SecondShares.com)

この新しい概念「ソーシャルゲーム」、中国ではすでにビジネスとして確立された分野で、4つの会社がすでに上場を果たしている。収入の合計は33億ドルにのぼり、マージンは50%を超えるというもっともおいしいビジネスの一つとされているのだ。この例からもわかるように、この分野が魅力的なのは異様に高いマージンが狙えるという点。コンピューターゲームや映画のように精密なグラフィックが売りなわけではなく、漫画のような単純な動きのキャラで十分とされるので、ゲームの開発費が莫大にかかるわけではない。また、一端起動に乗れば運営費が大してかかるわけでもない。

実際ジンガも、同じコンセプトをリサイクルして新しいゲームとしてリリース、ゲームのラインアップを増やしている。農村で成功したら、次は漁村(フィッシュビル)、そしてカフェ経営(カフェ・ワールド)やマフィア組織(マフィア・ウォーズ)、など要は同じ仕組みでバーチャルグッズを購入、ソーシャルネットワークを通して友達と連携することでビジネスを拡大していくという単純なモデルを、設定を少しだけ変えて繰り返しているのだ。

ではこのモデル、おいしいだけでリスクはないのだろうか?

最大のリスクは、ソーシャル・ゲームという他社のリソースの上に成り立つという危うさだ。フェースブックの乗り入れ停止処置のよ うに、SNSのポリシー次第で運命が左右されてしまう。それはギブ&テイクの提携モデルの危うさでもあるが、ソーシャル・ゲームが受ける痛手はさらに大き い。

また、真似しやすいということもリスクの一つとして上げられる。ゲーム自体とてもシンプルだし、高度な技術を駆使しているわけでもないので、誰でも簡単にコピーできる。

また最近ジンガを悩ませているのは、そのビジネスモデルに対する批判的な報道だ。小額だからいいかと少しずつバーチャル・グッズを購入していくうちに、気づいたら高額使っていたというユーザーからの不満の声が増えている。わかりにくい課金体系や不透明さに批判が集中するのは、家で時間を過ごすことの多い主婦ユーザーをターゲットの一つとしているからかもしれない。

「ソーシャルゲーム」に加えて、もう一つの今年のトレンドは「ローカル(地域情報)」。そしてその代表が、ニューヨークに拠点を構える 「foursquare」と呼ばれる位置情報をもとにした、iphoneのアプリから人気に火がついたサービスだ。

GPSつきのスマートフォーンを使って、自分のいる位置、特にレストランだったりカフェだったりバーだったり、もしくは花屋でもコンビニでもいいんだけど、何か目印になる場所にいるときに「自分がここにいる」という印を残すもの。これを「チェックイン」と呼ぶ。

この「チェックイン」をするたびにポイントが与えられ、新しい場所を発見したり、遠いところでチェックインしたら特別な「バッジ」が、また12時間以内に10回チェックインしたらこれまた特別な「バッジ」がもらえたりする。「バッジ」とは勲章のようなもので、ステータスとしてどれだけバッジを稼いだかを友達に見せびらかすことができる。まるで子供をあやすみたいにご褒美がどんどん与えられるので、うれしくなってさらにはまっていくという仕組みになっている。

わたしも最近サンフランシスコでブランチに立ち寄ったカフェで「チェックイン」したら、大して広くない店内(せいぜい30人くらい)で、すでに3人がチェックイン済みでびっくりした。

一番多く「チェックイン」した人には、「Mayer」(市長?)という照合が与えられ、そのレストランから特別なサービスが受けられたりする。また5回以上チェックインした人にはコーヒーが無料になったり、デザートがサービスになったりと、地元のビジネスにとっては今までオンラインで接触することの難しかったお客さんを直接呼び込む協力なツールとなっている。

このfoursquare、今年の3月初め時点で50万ユーザー以上を確保、140万のロケーションが登録、そして1550万の「チェックイン」がすでになされている。そしてその成長はいまや携帯のアプリ経由だけでなく、ウェブサイト経由に拡大している。このウェブサイトにもっともトラフィックを呼び込んでいるのは、またもやFacebookだ。33%のトラフィックがFacebook経由となっている。Google 22%, Twitter 8%を合わせても届かない影響力だ。これまたソーシャルネットワークがトラッフィックドライバーとしてますます影響力を強めている裏付けと言えるだろう。また、そのサービスや会社に関連する検索数がどれだけ伸びているのかというのも良く認知度の目安として使われるのだが、その検索数の伸びも目覚ましい。



以上のグラフで緑の線は、アメリカ市場での総検索数に対して foursquareに関する検索数の割合を示している。 今年2月に0.00032%まで急激に伸び、その後少なくとも数週間は、安定しているように見える。0.00032%というととてつもなく小さい数に思えるが、アメリカ全体での日々の検索数が数億に上ることを考慮すると、実際にはかなりの絶対数になる。

一方で赤い線は、foursquareへのトラフィクの伸びを示している。アメリカ市場全体でクリック数の中で、foursquareに流れるトラフィックの割合を示したものだが、こちらからもトラフィックが急激に伸びているのが顕著だ。

この’foursquare’、最近ではハーバード大学、ウェールストリートジャーナル、ペプシと連携したりして、着実に認知度を高めている。

このグラフのデータが集められた直後の3月後半には、10日で10万以上の新規ユーザーを獲得、結果的に60万ユーザーにまで達したというデータも出ている。

また最近のFoursquareの発表によると、チェックイン数は2,200万までに達したとのこと。まだまだTwitterの5,000万Tweet(1日あたり)には及ばないものの、1年足らずの会社にしては快挙と言えるだろう。また、 一日中同じ場所にいても何回でも投稿できるtwitterと違って、物理的にその場にいかないとチェックインできないことこのサービスでは、一日あたりに可能なチェックイン数も必然的に限られるので、Tweet数に劣るのは当然と言えば当然。

Foursquareも前述のジンガと同様、IphoneやFacebookといった他の会社のプラットフォームを基盤に成長しているプロダクトだということ点が特徴だ。これは賢い反面、リスクでもある。アップルがアプリの審査基準や課金体制を変えたり、フェースブックがポリシーを変えたら、打撃を受けるのは目に見えている。

これまたジンガのモデルと共通しているのが、真似しやすいということ。特に複雑な作りでもないし、インフラに大した投資が必要なわけでもないので、プロダクト的に真似するのは難しくはないはずだ。実際、ジンガが手がけるソーシャルゲームは国内国外ともに競争が高まっている分野の一つだし、Foursquareのような地域情報系についても、アメリカ国内だけでもYelp, Gowallaと言った強力プレーヤーがすでに存在している。

この2社のいずれかが次のツイッターとなるのか、もしくは関連分野の競合がその地位をさらうのか、今年後半の各社の動きが注目される。

2010年5月30日日曜日

ケーブルテレビとiphoneアプリのコラボ

CNN、NBCやABCなどの大手テレビ局が、facebook, twitter, myspaceなど、今やソーシャルネットワークの王道となったサービスを駆使して、若い視聴者に向けて「ソーシャル性」をアピールするようになってしばらくたつ。今や大手テレビ局と大手ソーシャルネットワーク同士の連携は珍しくなくなってきたが、最近は、比較的マイナーなケーブルテレビ局とネットを中心に展開しているスタートアップ系のサイトがコラボレーションしているケースを、見かけるようになってきた。

例えばリアリティーショーを主に取り扱っている「Bravo」というケーブルネットワーク。2002年に始まったNBC Universalの系列ネットワークで、主な番組に'Top Chef', 'Project Runway', 'Shear Genius' などがある。駆け出しや無名のシェフ、デザイナーやヘアースタイリストがその技を競って優勝のタイトルを目指すという筋書きで、日本でも馴染み深いありがちなコンセプトだ。その番組ラインナップに最近、「Launch my line」 という番組が加わった。これはファッションデザイナーと業界人(スタイリストだったり、音楽関係者だったり、イベントプランナーだったり、様々な業界の達人だったりする)がチームを組んで、業界人の発想をデザイナーが洋服という形にする。勝負のポイントは、必ずしもハイファッションに求められる斬新さとか洗練性ではなく、どれだけ一般人に売れそうかというところにある。つまりファッションショーで話題になるよりも、デパートに置いたときにどれだけ一般のお客さんが買ってくれるか、という観点から審査される。毎回1組が脱落し、最終的に残った優勝者は自分のブランドを立ち上げて販売することが確約される。

この番組がパートナーとして選んだのは、高級ブランドのアパレル商品をアウトレット価格で販売するショッピングサイト「Rue La La」。各ブランドが抱えている売れ残った在庫を格安で販売するサイトだ。在庫数に限りがある上に購入できる期間を1〜2日に限定するので、ある種のゲーム感覚がそそる。日本にも進出しているギルトグループと並んで、この手の高級ブランド品割引サービスの代表プレーヤーだ。昨年末にGSI Commerceに3億5千万ドルで買収されたことでも話題になった。

さて、そのコラボの内容だが、番組内で各チームがデザインした洋服をこのサイトを通して実際に購入できるという単純なもの。デザイナーにとっては自分のデザインの商品性(ビジネス性)を試す絶好の場だし、RueLalaとしても人気急上昇のケーブルネットワークを通して名前を全国に宣伝する絶好の機会となった。

Bravoの目玉番組の一つ、「Project runway」も似たようなコラボを行っている。この番組はデザイナーとしてのビジョンとか技量を競う番組で、商品性とかビジネス性というよりもファッション性を競う番組だ。ホストに人気スーパーモデルのHeidi Clum、審査員には有名デザイナーのMichael Korsなど、ケーブルテレビとしては豪華な顔ぶれを揃える。この番組では、「launch my line」と似たコンセプトで、番組内でデザインされた服を「bluefly」というオンラインショッピングサイトで販売している。

Bravo はこれ以外にも「Foursquare」というロケーションベースのサービスと手を組んで、面白い取り組みを展開している。Foursquareは人気急上昇中のiphoneのアプリで、GPS付きの携帯を利用してユーザーのローケーションやその近辺のスポット(レストランやカフェ)を認識、ユーザーがその一つに入店したら「チェックイン」できるというサービス。自分の友達がどこに「チェックイン」したかがわかったり、あるレストランにある一定数以上「チェックイン」するとコーヒーが無料になったり、という特典が与えられる。

そんなサービスとリアリティーショーにどんな関連性があるのか?

リアリティーショーと言えば、ここ数年ますますその幅を広げていて、その結果「有名人」の定義をも変えつつあるほどだ。女優や歌手などの典型的セレブ人とは違って、要は単なる目立ちたがりな一般人だったり、何かの技能を持った職人だったりするのだが、人気番組の参加者の知名度は驚くほど高いのだ。シーズン性が高いために番組が終わると忘れられるのも早いが、番組放映中だと下手なB級俳優とかよりも全然知名度が高かったりする。一方で、芸能人のように特定のものを宣伝してコマーシャルのようになることもないし、お気に入りスポットの情報を発信するのも一般人の感覚で気軽にできる。

BravoとFrousquareはそんな点に注目した。発表によると、Foursquareのユーザが全国500以上にのぼるBravoのおすすめスポットに行くたびに、ポイントを稼ぐことができる。各おすすめスポットはリアリティーショーの登場人物によるものだったり、関連がある。スポット巡りをする過程で思わぬ商品がもらえたり、抽選に参加する権利を得たりできるので、まさにゲーム感覚そのもの。

テレビ会社と言えばメディアの王様、大組織で腰が重く、ビジネスパートナーとしても各業界大手しか相手にしない古いイメージが強かったが、そんな伝統的な業界もネットによってもたらされる危機感によって態度を変えざるを得ない。また一方で、大手テレビ局以外に数百ものケーブルテレビ局が名前を連ねる今、リスクを恐れずに実験的な番組を展開しようというケーブルテレビ局も多く、その一環として実験的にスタートアップと組んで何か面白いことをしてみようという意欲も高いようだ。テレビ界も他の伝統的な業界の例外でなく、敷居が低くなってきたということだろうか。

日本のテレビ局はまだまだお固いイメージが強いけど、NHKのアナウンサーが視聴者からのTweetを紹介する日も近いかもしれない(?)

2010年4月11日日曜日

太っ腹グーグルとケチなアップルー買収合戦を勝ち抜くのはどっちか

世界で一番有名なベンチャーキャピタルと言っても過言ではない、天下のセコイア・キャピタルが投資先の企業のマネージメントに向けて送った56枚のパワーポイントが出回ってから早くも1年半近くたつ。そのテーマは「 Get Real or Go Home.」(目を覚ませ、もしくはさっさとあきらめろ)。

起業家に向けて「強気な成長や野望よりも、堅実で現実なビジネスプランを」と訴え、地に足を着けた経営、コスト削減、成長率・売り上げ予測など予測の見直し、品質向上、リスク回避、借金をなくすなどのアドバイスをした上で、今後当面は企業の買収合併数も買収金額も減り、上場も難しくなると予想していた。

確かに不景気で急減した企業の買収合併数だが、最近またちらほらと大型案件が動いている。

JPモルガンによる今後のトレンドとしては、バクチ的でリスクの高い買収や投資は減り、堅実な買収が増えると予測されている。つまり、確実に伸びるだろうとされている業界で、ビジネスモデルもすでに成り立っている(収入源がしっかりと確保・証明されている)ようなベンチャーが買収先として注目される。

そしてもう一つのトレンド予測としては、借金のほとんどない大手の超優良企業による買収が増えるだろうということ。他の企業がビジネスの立て直しに精一杯な中、マイクロソフトとかシスコに代表されるようなキャッシュがあり余っている企業が圧倒的に有利、ということになる。つまり先述のセコイアのアドバイス、「買収額が下がる」というのを逆手に取って、大企業は競争が少ないうちに手堅い買収案件をしっかり押さえておこうというのだ。

昨年末に買収合戦で世間を騒がせたのは、グーグルとアップルによるモバイル広告プラットフォームの買収だ。グーグルがモバイル広告プラットフォームを提供するAdMobの買収を発表した途端、アップルがそのライバルであるクアトロ・ワイヤレスの買収を発表。ライバル関係が強まる一方のグーグルとアップルという大物による買収で、しかもモバイル広告という、今後の成長が確実なビジネス(特に発展途上国を含めた世界的な成長)という組み合わせを考えれば、先述のJPモルガンのコメントがすんなりと当てはまる。

また、地域レストラン情報を提供して急成長を遂げるYelpは、FacebookやTwitterと並んで買収先として常に注目を浴びてきたが、ヤフーとグーグルの買収に興味を示した結果、どちらも手を引くという不可解な結果になっている。地域情報系のビジネスはこれまた確実に伸びるとされているし、ソーシャルネットワークとかと違って、収入が得られるビジネスモデルもそれなりに確立していることを考慮すると、キャッシュを持て余す大手が目をつけないわけがないだろう。

このようにいくつかの例を見てみても、大物がここぞと手堅い分野で手堅いベンチャーに対しての積極的な買収ゲームを繰り広げているのは、確実なトレンドのようだ。

上のモバイル広告の例にもあったように、「大物」の筆頭を走っているのは、グーグルとアップルだ。何かと比較されて love - hate relationship(好きだけど嫌いという複雑な心境?)な関係を築いてきたこの2社、買収合戦によってその複雑な関係にさらに拍車がかかっている。グーグルが携帯ビジネスへの本格参入を表明しはじめた頃から、その敵対関係はあからさまになってきた。結果として、昨年にはアップルがiphoneアプリの審査過程で、電話機能を置き換えるグーグルヴォイスのアプリを承認しなかったり、グーグルのEric Schmidtがアップルのボードメンバーから外されたりと、さまざまなドラマがあった。

数年前まではマイクロソフトを共通の敵として連盟を組んでいたように見えていたこの2社だが、その関係についに亀裂が入り、今ではかつてのマイクロソフトとアップルのような敵対関係になっている。それに加えて、メディアが敵対関係をあおるような記事を書く。芸能人のゴシップのように脚色され、ある意味、シリコンバレーのギークたちにとってのリアリティーショーと言ったところだろうか。

この2社の今までの歴史を比較すると、アップルは比較的「ケチ」で、あまり熟したベンチャーを高値で買おうとはしない。一方のグーグルは先行き不明で未熟なベンチャーを安く買うよりも、ある程度成功の目処がついた、熟したベンチャーを高額で買うという手堅い買収を好む傾向にある。

今までの2社の買収の歴史を見てみよう。また、アップルとは以前敵対関係にあったが、今となってはサーチビジネスでグーグルと敵対関係を築き始めたマイクロソフトもこの2社にとっては欠かせない役割を担っているので、三角関係への複雑化する要素として追加したい。ちなみに、データもとはグーグル、アップル、マイクロソフトともにWikipediaです。

折れ線グラフは年ごとの買収金額の推移を、棒グラフは年ごとの買収案件数をカテゴリごとに示している。(2010年3月14日時点でのデータ)

注意してもらいたいのは、すべての買収額が公表されているわけではない、ということ。年によっては5つも6つも買収が行われたにも関わらず1件も買収額が公表されていないためにゼロのように見える年がある。また、ゼロでない年についても、半分以上の買収は額が公表されていないことをご考慮いただきたい。例えばマイクロソフトは2006年に18もの買収案件があったが、金額が公表されているのはたったの1件のみ、というように、実際の合計金額を推測するのはほぼ不可能だったりする。点が欠けている年については、買収が行われたものの金額の公表されている案件が一つもないために、プロットする点がないというケース。

それでも大きな買収、例えばグーグルについてはトップ3に入る買収案件(Youtube, DoubleClick, Admob)は含まれているので、ある程度の指標にはなると思う。

折れ線グラフは買収額の推移を示したもの、そして棒グラフは買収案件数の推移をカテゴリ別に示したものになっている。カテゴリ分けについては、会社ごとに特徴があって、例えばグーグルの場合はどの部署に統合されたか、というグーグル内の部署/サービスごとに考えた方がわかりやすかったので、あえてカテゴリーを揃えていない。

欲張ってカテゴリを細かくしてしまったので見づらいかもしれないけど、大まかにでもトレンドが読み取ってもらえるのではないだろうか。



まず3社共通して言えるのは、買収先の業界分布が各社のプロダクト戦略を反映していて、その重なり部分がどんどん大きくなっているということ。

例えば最近のマイクロソフトは、モバイルやサーチ(検索)関連の案件が増えている。それらはグーグルの創設以来のコアなビジネスだったが、そのグーグルと言えば最近では、広告やモバイルに加えて、ドキュメント機能やメールなどのコミュニケーション、また写真やビデオのマルチメディア系にも力を入れている。それらは、数年前まではマイクロソフトやアップルの領域だったもの。

2001年には買収相手に関して共通点がなかった3社だが、ここ数年のリストを比べると、モバイル、ゲーム、サーチ(検索)、アド(広告)と言った分野で競争が加速していることがわかる。

また、全体的にアップルは買収額が低い(ずべての案件金額はカバーしていないものの)こともすぐにわかるだろう。アップル=ケチというイメージはこんなところにも現れているのかもしれない。

グラフ中には現れていないが、各案件の詳細を見ると、アップルの場合は買収先がアメリカ企業に集中している一方で、グーグルは早い段階から海外を視野に入れていることが顕著だ。一方のマイクロソフトは歴史が長い分、買収案件の数も多く、当初はアメリカ集中だったが2001年頃からは海外案件が着実に増えている。

創立されたタイミングからしてもネットという業界の性質からも、グーグルが早い段階から海外を視野に入れていることは驚きではない。

最後に、驚いたのは、この記事を書いている数週間の間にもグーグルが次々と買収案件が発表されていったこと。今年に入って毎月1件以上のペースで買収を決めているようだ。今後ますます競争が激しくなることが予想されるこの2社(マイクロソフトも入れると3社)、それぞれの異なる買収戦略が勝負の分け目となるのか。

2010年3月3日水曜日

シリコンバレー版オノボリさん

アメリカは人種のつぼ、って良く言うけど、ここシリコンバレーには特殊な人種マップがある。まずはアメリカ生まれアメリカ育ちのアメリカ人。この中にはヨーロッパ系、ヒスパニック系、アフリカンアメリカン系、アジア系など人種的にはさまざまな「アメリカ人」が含まれる。ここに属する人たちは単に「アメリカ人」と呼ばれるか、「○○系アメリカ人」と呼ばれる。

一方で、仕事や教育を求めて世界各国から集まってきた人たち、つまり移民や一時的にシリコンバレーに滞在する留学生とかビジネスマン、エンジニアなどがいる。出身はヨーロッパ、南米、オセアニア、アフリカ、そして今や数的には主流となったアジアなどさまざまで、ここに属する人たちは出身国に基づいて単に「○○人」と呼ばれる。シリコンバレーの土地柄上、移民と言っても悲観的な響きはなく、経験を積んだら母国に帰る、というノリの人も結構多い。

ちなみに「アジア人」と言ったときに大抵インド人はここに含まれず、「インド人」として分けて呼ばれることが多い。そういう意味だと「中国人」も別途扱いになることが多い。理由としては、人数が圧倒的に多いことがあるが、それ以上にステレオタイプ化しやすいからだと思う。ステレオタイプ化しやすいのは人数が多いから、とも言えるが。

話を戻すと、ただ2つに単純に分かれるかというとそうでもないわけで、中間に陥る人たちもいる。アメリカで生まれたわけではないけれど、小さい頃にアメリカに移ってきて身なりも行動も話し方も英語もすっかりアメリカ人のような場合は、国籍がどこであろうが、社会的には「○○系アメリカ人」みたいに扱われる。高校からアメリカなどという場合も、若いときからアメリカ社会にとけ込んでアメリカ人の友達が多いことから、社会的には「○○系アメリカ人」のように扱われることが多い。それを超えると「系アメリカ人」の部分が落ちて、○○人ということになる。例えば日本人、フランス人、と言ったように。

逆に言うと、アメリカ生まれの2世でも、環境によっては○○人というアイデンティティーの方が「アメリカ人」という意識よりも強くなることもあり得る。アメリカ全国が西海岸みたいにオープンで人種の豊富なわけではないので、環境がアイデンティティーという意識形成に大きく影響することは容易に想像できるだろう。

つまり、自分が何人かという微妙な境界線は、国籍とか書類上のステータス以上に、どういうコミュニティーとつながっていて、どういう友達がいるのか、と言った社会的なステータスによるところが大きいような気がする。

となると、社会的ステータスを示す俗語が発達するのも自然な流れなんだけど、最近知った関連性のある俗語を紹介したい。

「FOB(フォブ)」っていう言葉、聞いたことあります?「Fresh off the boat」を省略したもので、直訳すると、ボートからおりたばっかりの移民、という意味。多少差別的な印象を与えかねないので、アメリカ人が使うときは注意した方がいいけど、外国人のわたしが使う分には特に問題ない、はず。

要はオノボリさん、と言った感覚?ただ前述のように、書類上のステータスによって定義される「移民」に対して使うというよりも、最近の移民のステレオタイプ化された言動に対して使う場合が多いようだ。たとえば運転が下手だとか、ファッション感覚が主流アメリカ人とちょっと違うとか、クセのある、もしくは良くわからない英語を話すとか。

逆に言えば、アメリカ生まれでアメリカ育ちの人に対しても、「あの子FOBかと思った」とか、「あの子FOBっぽい」というように使ったりする。

先日友達と話してたら(彼女はアジア系アメリカ人)、「あの子はFOBが好みだから、FOBとばっかり付き合っている」と。なるほど、そういう使い方をするのかと興味深く聞いてしまったけど、わたしもFOBの一人でバカにされていると怒った方がいいのかとあとから思ったり。ただ彼女的には、「彼は細い子が好きだから」とか「髪の長い子が好き」という程度で、体の特徴とか見た目とか国籍と同じくらい軽い感覚で使っているのだ。日本社会で言ったら、「東京育ち」か「上京したて」か、程度の感覚だろう。

アメリカ滞在の○○人のカテゴリーの中でも、新入り(少なくともそう見られる)に属するFOBだが、シリコンバレーの大きな原動力の一つになっていることも確かだ。新たなアイディアを吹き込み、シリコンバレーを世界とつなぐ役割も果たしている。今回のような失業率向上に陥るたび、短期的・一時的な解決策を求めてFOBを追い出す意見と、長期的な価値を見てさらに受け入れを促進すべきという意見に分かれるが、新たな風を受け入れないシリコンバレーは、そもそもシリコンバレーではなくなってしまう、ということを忘れてはならないと思う。