CNN、NBCやABCなどの大手テレビ局が、facebook, twitter, myspaceなど、今やソーシャルネットワークの王道となったサービスを駆使して、若い視聴者に向けて「ソーシャル性」をアピールするようになってしばらくたつ。今や大手テレビ局と大手ソーシャルネットワーク同士の連携は珍しくなくなってきたが、最近は、比較的マイナーなケーブルテレビ局とネットを中心に展開しているスタートアップ系のサイトがコラボレーションしているケースを、見かけるようになってきた。
例えばリアリティーショーを主に取り扱っている「Bravo」というケーブルネットワーク。2002年に始まったNBC Universalの系列ネットワークで、主な番組に'Top Chef', 'Project Runway', 'Shear Genius' などがある。駆け出しや無名のシェフ、デザイナーやヘアースタイリストがその技を競って優勝のタイトルを目指すという筋書きで、日本でも馴染み深いありがちなコンセプトだ。その番組ラインナップに最近、「Launch my line」 という番組が加わった。これはファッションデザイナーと業界人(スタイリストだったり、音楽関係者だったり、イベントプランナーだったり、様々な業界の達人だったりする)がチームを組んで、業界人の発想をデザイナーが洋服という形にする。勝負のポイントは、必ずしもハイファッションに求められる斬新さとか洗練性ではなく、どれだけ一般人に売れそうかというところにある。つまりファッションショーで話題になるよりも、デパートに置いたときにどれだけ一般のお客さんが買ってくれるか、という観点から審査される。毎回1組が脱落し、最終的に残った優勝者は自分のブランドを立ち上げて販売することが確約される。
この番組がパートナーとして選んだのは、高級ブランドのアパレル商品をアウトレット価格で販売するショッピングサイト「Rue La La」。各ブランドが抱えている売れ残った在庫を格安で販売するサイトだ。在庫数に限りがある上に購入できる期間を1〜2日に限定するので、ある種のゲーム感覚がそそる。日本にも進出しているギルトグループと並んで、この手の高級ブランド品割引サービスの代表プレーヤーだ。昨年末にGSI Commerceに3億5千万ドルで買収されたことでも話題になった。
さて、そのコラボの内容だが、番組内で各チームがデザインした洋服をこのサイトを通して実際に購入できるという単純なもの。デザイナーにとっては自分のデザインの商品性(ビジネス性)を試す絶好の場だし、RueLalaとしても人気急上昇のケーブルネットワークを通して名前を全国に宣伝する絶好の機会となった。
Bravoの目玉番組の一つ、「Project runway」も似たようなコラボを行っている。この番組はデザイナーとしてのビジョンとか技量を競う番組で、商品性とかビジネス性というよりもファッション性を競う番組だ。ホストに人気スーパーモデルのHeidi Clum、審査員には有名デザイナーのMichael Korsなど、ケーブルテレビとしては豪華な顔ぶれを揃える。この番組では、「launch my line」と似たコンセプトで、番組内でデザインされた服を「bluefly」というオンラインショッピングサイトで販売している。
Bravo はこれ以外にも「Foursquare」というロケーションベースのサービスと手を組んで、面白い取り組みを展開している。Foursquareは人気急上昇中のiphoneのアプリで、GPS付きの携帯を利用してユーザーのローケーションやその近辺のスポット(レストランやカフェ)を認識、ユーザーがその一つに入店したら「チェックイン」できるというサービス。自分の友達がどこに「チェックイン」したかがわかったり、あるレストランにある一定数以上「チェックイン」するとコーヒーが無料になったり、という特典が与えられる。
そんなサービスとリアリティーショーにどんな関連性があるのか?
リアリティーショーと言えば、ここ数年ますますその幅を広げていて、その結果「有名人」の定義をも変えつつあるほどだ。女優や歌手などの典型的セレブ人とは違って、要は単なる目立ちたがりな一般人だったり、何かの技能を持った職人だったりするのだが、人気番組の参加者の知名度は驚くほど高いのだ。シーズン性が高いために番組が終わると忘れられるのも早いが、番組放映中だと下手なB級俳優とかよりも全然知名度が高かったりする。一方で、芸能人のように特定のものを宣伝してコマーシャルのようになることもないし、お気に入りスポットの情報を発信するのも一般人の感覚で気軽にできる。
BravoとFrousquareはそんな点に注目した。発表によると、Foursquareのユーザが全国500以上にのぼるBravoのおすすめスポットに行くたびに、ポイントを稼ぐことができる。各おすすめスポットはリアリティーショーの登場人物によるものだったり、関連がある。スポット巡りをする過程で思わぬ商品がもらえたり、抽選に参加する権利を得たりできるので、まさにゲーム感覚そのもの。
テレビ会社と言えばメディアの王様、大組織で腰が重く、ビジネスパートナーとしても各業界大手しか相手にしない古いイメージが強かったが、そんな伝統的な業界もネットによってもたらされる危機感によって態度を変えざるを得ない。また一方で、大手テレビ局以外に数百ものケーブルテレビ局が名前を連ねる今、リスクを恐れずに実験的な番組を展開しようというケーブルテレビ局も多く、その一環として実験的にスタートアップと組んで何か面白いことをしてみようという意欲も高いようだ。テレビ界も他の伝統的な業界の例外でなく、敷居が低くなってきたということだろうか。
日本のテレビ局はまだまだお固いイメージが強いけど、NHKのアナウンサーが視聴者からのTweetを紹介する日も近いかもしれない(?)
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