2013年6月27日木曜日

コミュニケーションはパブリックからプライベートに、そして記録として残るコンテンツから閲覧時間限定のコンテンツに。スナップチャットの成功が示唆する方向性。


最近写真共有とかビデオ共有という話をしたので、その延長でSnapchatについて。

つい最近シリーズBで60ミリオンドルを集めることに成功、860ミリオンドルのバリュエーション(評価額)に達したという。

Snapchatとは、2011年にスタンフォード大学出身のEvan Spiegel(エヴァン・スピーゲル)とBobby Murphy(ボビー・マーフィー)が立ち上げたアプリだ。2011年9月にリリースされて以来、2012年10月には投稿メッセージ(スナップ)が累計10億件を超え、今では会員によってアップロードされる写真が1日2億件を越えているらしい。

Snapchatを使うと、数秒間で削除されて後に残らないテキスト、写真、動画などを友人に送信することができる。手元に残ってしまわないのが好都合な写真やビデオが対象ということで、学生や若者層に人気がある。悪ふざけした写真や、泥酔した際に勢いで撮った写真も、笑いのネタとして送信して数秒後にはその証拠を完全に消すことができる。スナップショットを取れば保存できてしまうが、その場合は送信元に通知が行くので、少なくとも知らないうちにスクリーンショットが保存されていたということはなくなる。その性質上、物議を呼ぶことが多いアプリでもある。

写真とは思い出を半永久的に残すためのもの、というそもそもの前提を覆して、数秒で消える写真というアイディアをアプリにしたところが面白い。

そもそも写真アプリの業界全体で見ると、5億枚もの写真が毎日アップロード・共有されている。そして、その量は今後どんどん伸びていくことが予想される。

フェースブックも昨年末に対抗サービスをローンチ、今後他の大きなソーシャルネットワークLINEなどが真似する可能性も高い。

ある調査によると、3割が採用時にフェースブックなどのソーシャルメディアをチェックして、不採用にしたことがあるらしい。主な原因は不適切な写真やコメント、アルコールや違法薬物の利用を示唆するもの、前の会社についての文句やネガティブなコメントだ。

文章や写真で記録を残して、複数人と共有するという多くのソーシャルネットワークが売りとする典型的なバリュープロポジションが裏目に出て、自分の不利に働くことが出てくるということの証明だ。

LINEの成功に見られるように、プライベート性を高めることが今後のコミュニケーションのトレンドだとも言われるが、記録として残らない「閲覧時間限定」コンテンツがそれに続くトレンドとなるかもしれない。

2013年6月22日土曜日

Instagramのビデオ機能はひとまず大成功。計算かたまたまか、NBAファイナルとのスケジュール重複が勢いに拍車をかける。


今週木曜日のフェースブックのイベントでの発表内容が噂になっていることについて触れましたが、今日はそのフォローアップを。様々な憶測の中、イベントで発表されたのはやはりインスタグラムのビデオ機能追加だった。

ただ驚くのは、その機能追加の結果。ローンチ後の24時間で、何と500万(!)ものビデオがアップロードされたというから驚異的だ。

フェースブックによると、最大のスパイクはローンチ直後ではなく、その数時間後だったとのこと。現地時間の木曜の夜と言えば、NBA(プロバスケットボール)のチャンピオンを決める最終戦が行われたのだが、マイアミに拠点を持つHeatが、テキサスのサンアントニオに拠点を持つSpursを敗った瞬間、何と1分あたり40時間に相当する量のビデオをアップロードされた。

そもそも今年のNBAのチャンピオンシップ、始まった当初からハラハラするような僅差の試合が続いていた。

2日前に行われた第6試合は延長戦にもつれ込んだアツい試合で、今シーズン最高の試合だったとの評価を受けた。第7戦への期待にさらなる拍車をかけたのはソーシャルメディアだ。Twitterはじめとしたさまざまなソーシャルメディアは、第6戦の興奮が覚めやらぬ様子を反映したコメントで溢れた。その範囲はファンはもちろん、有名人、ファンじゃない人たちの間にまで及んだ。

その熱気を踏まえると、木曜夜のインスタグラムのスパイクも驚きではないかもしれない。いいタイミングでローンチしたとも言える。

一方で、あらためてスポーツ観戦という経験を一層盛り上げるソーシャルメディアの威力、そしてソーシャルメディアにとってスポーツというイベントがいかに理想的なユースケースかということがわかる。スポーツ観戦はソーシャルイベントの一つだけど、誰もがその空間に物理的に身を置けるわけではない。一方、とっても感情的な経験なので、その瞬間に気持ちを共有したり伝えることが大事だ。また、政治とか宗教の問題ではなく理屈のない「どっちのチームが好きか」という単純な好き嫌いの話なので、話題にしやすい。リアルタイム性、ソーシャル性、当たり障りのなさ、どれをとってもソーシャルメディアにもってこいだ。

第7戦も良い試合だった。一夜明けた今日は、みんなソーシャルメディアでのコメントやビデオを見て、余韻に浸っているのではないだろうか。



2013年6月20日木曜日

Instagram(インスタグラム)の噂が示唆する、画像/ビデオ共有ネットワークへの期待と可能性


今週後半に予定されているフェースブックのイベントで何が発表されるかについての憶測が行き交っているけど、有力な噂としてあがっているのが、Instagramがビデオ共有を始めるのでは、というネタだ。

Twitterのビデオ共有サービスVine が急激に伸びていることへの対抗という見方が強いようだ。

数年前にインスタグラムについて触れたが、その後勢いがなくなり、Facebookによる買収以来プロダクト的に大きな動きがなかったInstagramだけに、次の展開が注目されるのは間違いない。

また、一般的に、写真やビデオってコンテンツを利用したサービスがこれだけ展開されてきている傾向を踏まえると、Instagramのビデオ展開するっていうのは説得力がある。

その手のコンテンツは、文章よりもより直感的で受け取り側としても消費しやすいし、さらにはマネタイズのポテンシャルが大きい。アメリカではすでに、Instagramをうまく企業マーケティングに利用している例が多い。代表的なのはSharpie, Warby Parker,  Red Bullなどだ。

一方、画像SNSと言われるピントレストは、日本では楽天が投資した去年の夏以来、日本では勢いを失っている感がある。アメリカでも、投資を集め過ぎたのではと、バリュエーションを懸念する声があがっていたりして、昨年の勢いを維持しているとは言いがたい。

つまり混み合ってきたスペースだけに、戦略をいかに早く形にするか、「エグゼキューション力」が今後のカギになってくる。

また、メディアコンテンツの「共有」という点では、オープンなのかクローズドなのかの定義もカギになる。

例えば、日本ではフェースブック疲れという話や、LINEの急激な伸びはそのクローズド性だという話を良く聞くけど、アメリカでも徐々にプライベートなシェアを売りにするサービスが出てきている。これはネットワークに限らず、写真とかビデオとか特定したコンテンツに特化したサービスでも同じ傾向だ。

例えば、「Nextdoor」。限定された人の中だけでのフェースブックもどきのネットワークが作れる。

写真共有アプリ「Qwilt」は、携帯で撮った忘れられてしまいがちな写真を自動的に整理してアルバムにする。その上、限られた人の間での共有まで手がけてくれる。いちいち他のサイトにアップロードしたり、メッセンジャーやメールで一枚一枚写真を共有する手間が省ける。

明日のフェースブックのイベントでの発表内容はまったく別のものかもしれない。でも、これだけ噂が飛び交っているということは、インスタグラムの次の戦略への期待がそれだけ高まっているということの証拠でもある。

2013年6月14日金曜日

Googleのアルゴリズム改善で、より快適なモバイル検索に期待


グーグルの最近のアナウンスによると、近々検索のアルゴリズムを変えて、スマートフォンに最適化したウェブサイトの構築を促進するという。要は、スマートフォンに最適化したモバイルウェブを提供していないと、検索順位を落とすよということ。

例えばスマートフォン上で検索して検索結果のリンクをクリックしたものの、エラーページに送られたり、読みたかった記事のページではなくモバイルバージョンのトップページに送られたりっていう経験は、誰でもあると思う。

スマートフォン上だと、PC上でのウェブ検索と同レベルの経験はまだ得られにくいのが現状だ。

スマートフォンでウェブを開いてコンテンツを見ようとすると、アプリのダウンロードを強制するサイトまである。

ウェブ検索となるといまだに圧倒的な力を持つグーグル。ここまで強力になると、グーグルの定める掟「イコール」インターネットの掟、みたいな賛否両輪な現実があるけど、こういう方法でモバイルウェブサイトを促して、サイトオーナーにプレッシャーをかけるのは大歓迎。

別リサーチによると、日本のユーザがモバイル経由でオンラインショッピングする際、モバイルウェブの利用がアプリよりもまだまだ多いということがわかっている。特にアパレルやアクセサリーなど女性ユーザが多いカテゴリーで、モバイルウェブの利用が多いそうだ。今後引き続き成長するだろうとされるマーケットなだけに、企業側もモバイルに最適化したウェブの作り込みが一層と重要になってくる。結果的にサイトオーナーもユーザーも、みんなが得をするということだろう。

2013年6月11日火曜日

NBAプレーヤーと、ジムのカフェと、ナパのワイナリー


近所のジムに行って、その帰りに隣接のカフェで仕事をしていたところ、隣のテーブルでの会話が耳に入ってきた。

「最近何してるの」「上海やソウルに行くことが多くて忙しいの。最近はYao Ming(ヤオ・ミン)のPRを担当しているから」。そんな会話の節々が聞こえると、下を向いて仕事に集中しているふりをしながらも、耳は思いっきり隣のテーブルに集中せざるを得ない。

話を聞いていると、どうやらヤオ・ミンが始めたナパのワイナリー事業についてらしい。ヤオ・ミンと言えば数年前に怪我が原因で惜しまれながらNBAを引退、上海に戻ってプロのバスケットボールのチームのオーナーだけでなく、様々な事業に手を出していると報告されている。大学に戻って勉強しているという話も。そんな傍ら、ナパワインの事業にも手を出していたとは、知らなかった。

「ヤオ・ミンの英語は完璧じゃないけど、会話するには十分」「大学に戻って勉強に励んだりして、頑張っている」など言ってるのを聞くと、もっぱらでまかせでもないようだ。

中国のワイン消費はここ数年ですごい伸びを見せていて、2005年から2009年にかけては倍になっている。その中でも海外産ワインの消費量は2008年から2010年にかけて、240%伸びた。中国人の間ではワインと言えばフランスというイメージがいまだに強いようだが、それを逆手にとって、カリフォルニアワインの参入機会は大きいと見たのがヤオ・ミンだったようだ。

中国市場をターゲットにするには、これ以上の理想的なセレブはいない。アメリカの国民的スポーツの一つとされているバスケットボールで驚異的な成功をおさめて、グローバルなスターになった。アメリカのワインと中国市場を結ぶにはこんなにふさわしい象徴的な人はいないだろう。

ナパと言えば、最近話題になっているKenzo Estate Wineryも、名前から容易に察しできるように、日本人オーナーのワイナリーだ。予約制のみで子供連れはだめなど、一般的にカジュアルでゆるい雰囲気のナパの他のワイナリーに比べて、敷居が高い。こちらも日本にテースティングバーをもうけたり、高級レストランにワインを卸したり、日本人消費者に向けたビジネスを積極的に展開しているようだ。

とりとめのない話になったけど、要は、思いもがけないところで中国人セレブが起業していたり、そんな人と直接仕事している人が近所のカフェにいたりして、面白いなと思ったと同時に、話を聞いていたら久々にナパに行きたくなったということでした。