2010年12月3日金曜日

サンクスギビング直前のリリース合戦。カギはローカル、ショッピングそしてソーシャル。

一般的にこの業界では、サンクスギビングを境に新プロダクトのリリースがぱったり止まる。日本の年末年始と同じようなもので、年末に向けて社員が休みを取り始めるのがサンクスギビングなので、新たなコードリリースが新たなメンテナンスを要することを控えて、多くの会社がコードフリーズ期間に入る。つまり、サンクスギビング前には今年最後のチャンスとばかりに、新プロダクトや新機能のリリースが立て続けに行われるということだ。

今年のサンクスギビング直前の11月15日の週に、立て続けのプロダクトリリースを繰り広げてひと際目を引いたのはグーグルだった。

まずはローカル情報のレビューなどを集めるHotpot というサービスをリリース。

ソーシャルネットワークを使った「地域情報ベースのお薦めの情報サーチエンジン」と位置づけている。今までの地域情報検索エンジンはレビューのソースに重きを置いていたが、今回のHotpotはもっと「パーソナル」にデザインされているという。つまり今までだったらYelpに代表されるような大手サイトからのレビューが上位にランクされていたのに対し、この新サービスではユーザ各自の好き嫌いや友達からのおすすめが検索結果により色濃く反映されるようになるので、人それぞれで検索結果が異なってくるのだ。ということで「パーソナル」。

グーグルがその週にリリースした他の機能は、プロダクトサーチの強化。プロダクトサーチと言えばショッピング目的なのでローカル(地域情報)とは一見無関係と思えるが、この機能追加は地域情報に関連している。オンラインで買い物する場合は商品の在庫状況が当然購入プロセスの中で提示されるが、小売り店など実際の店舗で買い物をしようとした場合、在庫状況は実際に行ってみるか、電話しないと確認できない。今回グーグルは70ほどのリテール・ブランドと手を組んで(Best Buy Williams-Sonomaなど)、店舗での在庫状況を検索結果として表示する機能を追加した。

またショッピングつながりと言えば、同じ週にリリースしたBoutiques.comというサイトがある。カメラとかゲームといった電化製品はスペックや製品番号がはっきり定義されているので検索がしやすいが、洋服、靴やアクセサリーはそういうわけにはいかない。サイズや色だけではなく、デザインやスタイルなど必ずしも言葉では明確に示されない要素が必要となってくる。オンラインでのアパレル製品を購入するユーザは増える一方なので、この難関をいかに克服するかが検索エンジンやファッションサイトの常に大きな課題とされてきた。このBoutiques.comでは、シルエット、色、スタイルだったりと、電化商品や本とは違った角度で検索結果を絞り込む機能を備えている。また好きなスタイルをもとに、似たイメージのコーディネートをおすすめしたりという機能もある。またファッション雑誌的な要素も兼ねていて、名の知れたブロガーやスタイリストなどがバーチャル・プティックを開いて、ユーザはそのブティックから直接洋服やアクセサリーを購入できるようになっている。実際に使ってみると、まだまだ改善の余地ありというベータ版にすぎない印象はあるものの、新境地に積極的に取り組むグーグルの意気込みが感じられる。もう一つ目を引く点としては、このサイトにはグーグルというブランドやロゴがどこにもないこと。ファッションという新境地でグーグルというブランド力が必ずしも強みとなるわけではないという判断だと思われる。

以上の3つが、一週間内に立て続けに行われたグーグルのリリースだ。ホリデーシーズン直前ということもあるが、グーグルがローカルとショッピング(そしてこの2つのオーバーラップは大きい)に相当力を入れているのが顕著だ。この2分野はビジネス(マネタイズ)という点でも、もっともポテンシャルのあるエリアだということも忘れてはいけない。

そしてもう一つの共通点は「ソーシャル」。レストラン情報なりファッション情報なり、友達からのおすすめや友達と情報を積極的にシェアするような作りになっている。

最後にちょっと余談になるが、ローカルとショッピングと言えば、この数日で噂となっているグーグルのグルーポンの買収話もその重要性を象徴している。グルーポンとは、地域ごとの中小ビジネス(全国規模のチェーン店も参加したりするけど、基本的には地域ごとに提供されるクーポンの種類が違っている)が1〜2日限定でクーポンを提供し、ある一定の人数が購入したら始めてそのクーポンが成立するというのもの。例えば、サンフランシスコのエステサロンが50%オフのクーポンを50ドルで売るとする。100人が購入したら始めてそのクーポンが有効になるが、もし99人しか購入しなかったら非成立となる。グルーポンはこの手のサービスの中では圧倒的に独占状態に近く、グーグルがそのユーザ層とブランドを利用して彼らのプロダクトサーチやローカルサーチに利用するという限りない可能性を秘めている。噂では6千億円に近い買収額が提示されたというとことだが、果たして真相はどうなのだろうか。

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