2013年11月10日日曜日
オバマケアのウェブサイトのローンチは散々だった。その失敗に関して、唖然とするような話が次々と明らかになっている。
オバマケアのウェブサイトの問題について先日触れたが、その後もショッキングなことが判明している。内部資料によると、ウェブサイトをデザインする段階からその見積もりの甘さとずれが桁外れだったことがわかった。
まずはローンチ直前のテストの結果、サイトがハンドルできると報告されていたトラフィック量。ローンチの前日の時点で、1,100ユーザーまでは裁けると確認されていた。これは、同時にアクセスしてもレスポンスタイムに影響を与えないのは1100人が限界だということだ。全国民に対して公開し、大統領が鳴り物入りで宣伝するウェブサイトとしては、これはあまりに低すぎるだろうという直感に、異議を唱える人は多くないだろう。
実際に設計した本人たちも、それが十分だとは思っていなかった。それを裏付けるように、想定ユーザー数は55,000人となっている。つまり自分たちで想定していた予想トラフィック値を大幅に下回るキャパシティしかないのがわかった状態で、ローンチせざるを得なかったのだ。
そして実際にローンチしたところ、アクセスしたのは250,000ユーザー。読みが大幅に外れていたのだ。
つまりあらゆるフェーズで、お粗末な分析、プランニングと実践力が証明された。
ビジネスの世界の常識で考えれば、首をかしげたくなることばかりだ。実際のトラフィックとはほど遠いとわかっていても、予算不足だったり戦力不足だったりして、どうにもこうにも現場の力だけでは解決できないレベルだったという憶測もある。
まだまだ苦しい状況が続くこのウェブサイト。ウェブサイトの失敗にばかり注目が集まって、医療保険改革の本質やそれに対する議論が軽視されているのが、一番残念な話だ。
2013年11月7日木曜日
スタートアップがサンフランシスコに移る流れが止まらない一方で、大企業はサウスベイで次々とキャンパスを拡大。
先月末、アップル社が本社を構えるクパチーノ市が、アップルが提案する新しいキャンパスの設立を承認した。最終的な承認は今月の会議をもって「公式」となる予定だが、実質的なゴーサインは出たも同然だ。
このキャンパスは24,000人の社員を収容し、グリーンなキャンパスとなることを目指している。環境へのインパクトがイーブンアウトする(プラスマイナスの影響がゼロとなる)ようにデザインされていて、一企業のレベルでは世界で最大の一つとなるソーラーシステムを持つことになる。ナチュラル・ヒーティングとクーリングによって、一年の70パーセントは冷房が不要となるというのも売りらしい。
一方、ライバルであるサムソンは、クバチーノに隣接するサンノゼ市に巨大キャンパスを設立する計画を着々と進めている。300ミリオンドルをかけ、こちらも負けずとオープンでグリーンなキャンパスを目指している。
ちなみに新設とか移転とか言うと、サンフランシスコに拠点を持つアメリカン・フットボールチームのサンフランシスコ・フォーティーナイナーズもホームスタジアムをサンフランシスコから、南のサンタクララに移転することが決まっている。来年2014年のシーズンに間に合うように、新しいスタジアムの建設が着々と進んでいる。
主に会社が拠点として選ぶ場所として、サンフランシスコがアツいという話をずっとしてきたけど、これらの例からもわかるように、サウスベイの活性化を示唆する計画も次々と発表されている。スタートアップがサンフランシスコに戻ってきている一方で、大手企業のサウスベイでの拡大は留まることを知らない。
前回のブログの、IPOが不動産に与える影響と多少関連した話になるが、これだけの規模のキャンパス建築や拡大も、その社員や家族を超えて、周辺経済にさまざまな影響をもたらす。
49ersの移転先となるサンタクララでも、すでに周辺経済への影響の計算が始まっている。周辺の小売業、レストラン、スタジアムでの雇用を含めて、大きな経済効果が見込まれるのは容易に想像できるだろう。
期待される経済効果とは逆に、周辺住民の不安の種となっているのがトラフィックだ。残念ながらシリコンバレーでは公共機関が発達する兆しがまったく見られないので、電車を増やすとか公共機関を見直すと言っても、結局は車への高い依存度は当分変わらないだろう。通勤社員が増える上に試合がある日なんかには、周辺道路の渋滞がますますひどくなることが予想される。不況時にはハイウェイの混雑が解消され、景気が良くなると悩まされるから、トラフィックは皮肉なものだ。
一方、現在の49ersのスタジアムがあるサウス・サンフランシスコは複雑な心境だ。スタジアム移転を悲しむ地元ファンと周辺ビジネスがある一方で、トラフィック問題が解消するとして喜ぶ周辺住民もいる。
2013年11月1日金曜日
サンフランシスコで、ツイッターのIPOを歓迎する不動産オーナーとますます住みづらくなるとうんざりする一般人。
ツイッターのIPOに向けたさまざまな憶測が飛び交っているが、その一つは不動産に対する影響だ。
企業のIPOと不動産?というとピンとくるようなピンとこないような話だが、これにはいくつかのインプリケーションがある。
まずは過去の例を見てみる。
例えばグーグル。グーグルが拠点に選んだマウンテンビューはもちろんのことだが、以下のグラフに見られるように、グーグルがIPOをした2004年を境にサンフランシスコの特定のエリアの価値が平均以上にあがったことが報告されている。その地域とは、マウンテンビューを含むサウスベイへのアクセスが比較的良い、Noe valley, Potrero Hill, Soma, South beach などに代表されるエリアだ。
フェースブックが上場した2012年には、フェースブックのキャンパス周辺のメンロパークの不動産価格が上昇した。がグーグルと同様、その影響は30マイル以上北に位置するサンフランシスコにも及んだ。市内でも特に、若者に人気がありメンロパークを含むサウスベイへのアクセスが良い、Noe Valley, the Mission, and Liberty Hillといったのエリアの不動産価格があがったと言われている。
IPOによってリッチになった社員が、マイホームの購入や投資のための不動産購入に踏み切った結果だ。
となると、ツイッターのIPOの影響に対する憶測が飛び交うのも自然だろう。
グーグルやフェースブックと異なるのは、ツイッターがサンフランシスコに拠点を構えているとこと。つまり、その影響はサンフランシスコ市内の不動産に「さらに」集中するだろう。
売り手となる不動産オーナーにとってはうれしい話だが、他の買い手にとっては迷惑な話だ。サンフランシスコの不動産は圧倒的に中古物件が多いので、購買プロセスは交渉の連続だ。複数のオファーが入ればオークション状態になり、いわゆる「bidding war」に突入する。
グーグルやフェースブックのときには、一夜にして億万長者となった株主が、全額キャッシュでリスティング(売り手の希望価格)を上回る価格をオファーし、「bidding war」に終止符を打つというケースも少なくなかったようだ。
関連したようなしていないような話ではあるが、フェースブックがキャンパスの近くに社宅を建てることを発表した。社員のために120ミリオンドルをかけて、394戸のコンプレックスを設立するという。
自社の成功が故に、釣り上がった周辺の不動産価格。そしてその解決策として社宅を建てる。フェースブックがメンロパーク市を乗っ取る日も遠くないだろう(ていうか、すでに乗っ取り済みという話もあるけど)。
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