2013年9月26日木曜日
グーグルのショッピングサービスがサービスエリアを拡大。当日配達だけでユーザーをアマゾンから奪えるか。
今日、Googleが「Google Shopping Express」の提供地域を拡大した。これはグーグルのショッピング・当日配達サービスで、今年のはじめから試験的に、サンフランシスコに地域を限定して提供していたものだ。今日のローンチにより、サンノゼまで提供エリアが拡大した。
GoogleはTarget、トイザラス、Office Depotなどの全国チェーンからBlue Bottle Coffeeなどのローカルなビジネスに渡るビジネスと提供、それらの商品をグーグルのサイト上で販売、配達する。値段は各店舗のものと同じで、配送料は一店舗あたり5ドルだ。つまり、Targetの商品を1つ購入しても10個購入しても、配送料は5ドル。ちなみに今は配送料が無料になるキャンペーンをやっているので、店舗に出向く手間と時間が省けるどころか、追加料金を一切払わずに商品が家まで届く。
何よりもこのサービスの売りなのは、「当日宅配」という点。わたしも試験サービス開始以来、何度も利用して重宝している。というのも、朝気づいてその日のうちにどうしても必要な場合って、実は結構あったりするのだ。それも洗剤とか子供のオムツとか、重くてかさばるものが多く’、近所のドラッグストアに駆け込むのも面倒だ。かと言って、大手のスーパーまでわざわざ出向く時間もない。スーパーのオンラインサービスを使うと、配送に最低数日はかかる。ドラッグストアでとりあえず小さいパッケージを買って、数日間しのぐという手もあるが、それだと割高になる。
そんなときの救世主となるこのグーグル・ショッピング・エクスプレス、3〜4時間の枠で時間指定ができ、正午くらいまでにオーダーすると、その夜までに商品が届く。しかも夜の6〜9時という枠があるのもうれしい。
数時間後に、グーグル・ロゴのポロシャツを来た配達員がグーグル・ロゴのついた車で家まで配達してくれると、何度も利用した今でも「うわっ、本当に来てくれた」とその迅速さに感激する。
このサービスローンチによって、当然影響を受けるのはアマゾン。
アマゾンもPrimeというプレミアムサービスを展開していて、79ドルの年間料を払うと無料で2日という特急配送が使える。ただこれが、緊急性が高いものに対してメリットがある特典だとすれば、2日よりも当日の方がいいに決まっている。また、配送時間枠の指定ができない(アマゾンジャパンはできたはずだが)というのも痛い。
アマゾンのもう一つの魅力は、Subscribe & Save Programだ。日本アマゾンでは、「定期お得便」と呼ばれているサービスで、定期的に購入することで(頻度は選べる)単体で購入する場合と比較して、5%から15%までのディスカウントが適用される。
格安になるという点に加え、シャンプーがあとどれくらい残っていて、いつ買い足す必要があるかを気にしなくても良い。大したメリットには聞こえないかもしれないが、忙しい日々の中で心配事が一つ減るというのはうれしい。
というわけで、今後は商品によって使い分けるケースが増えるだろう。緊急性、配送料やディスカウントを含めた値段、そして商品数などが決め手となる。もちろん商品数は圧倒的にアマゾンの方が多いので、グーグルで扱っていなければアマゾンに直行となるわけだが。
定期購入と言えば、先述のグーグルの提携先の一つである(ターゲット)も今週、オムツを筆頭とした赤ちゃん関連の日用品に限定して、Target Subscriptions というサービスをローンチした。いくつかの商品については割引されるようだが、アマゾンのような一律数パーセントといった一貫したディスカウントではない。
赤ちゃん関連の日用品をカテゴリーに選んだという背景については、アマゾンの力の入れようを見るだけでも、そのエリアがいかに大きいのかが推測できる。アマゾンはAmazon Momというプログラムを提供し、メンバー限定のディスカウントを提供したりしている。また、数年前にはベビー用品に特化していたマーケットプレイス「Diapers.com」を買収している。
赤ちゃんを抱えて何かと必要な日用品が多く、しかも消費速度がハンパない。それに加えて、子供を抱えた忙しいママとなれば、これほど最適なターゲットはないのだ。
日用品のオンラインショッピングというスペースで、各社の競争がますます激しくなることが間違いない。サービスエリアや迅速な配達など、基本をしっかり押さえることは必須として、各社とも差別化をはかることが求められそうだ。ひとつのアイディアとしては、どの業界でも求められる「パーソナライズ」。
例えばオムツ。必要なオムツのサイズは大きくなっていくので、Subscribe & Save Programを通して乳幼児用の小さいサイズを1年間定期購入するケースはほぼゼロだ。であれば、勝手にサイズアップした上で「定期配達」してくれるようなサービスがあってもおかしくないと思う。ちなみに、日本のオムツはS/M/Lというサイズ分けのようだが、アメリカでは1〜6ともっと細かく分かれているので、その手のサービスはさらに受けるはず、と思うんだけど。
2013年9月18日水曜日
腕時計型端末やフィットネス系アプリを持つだけで健康になったり痩せた気になりがちだけど、実際、運動やダイエットとしなくていいわけではない、という耳の痛い話。
サムソンが、今月25日に腕時計型端末を販売すると発表した。アップルも腕時計型のウェアラブルコンピューター「iWatch」の詳細がいつ明かされるのかも、注目される。最近、アップルがナイキのリストバンド型計測機器の開発に貢献したJay Blahnik(ジェイ・ブラーニク)を採用したことで、「iWatch」にはフィットネス機能が備わるのではという憶測を呼んでいる。
フィットネス機能は、腕時計型端末によってさまざまな可能性が広がる分野だと言える。
腕時計型端末単体ではなく、デスクトップ、スマホからゲーム機まで、様々なハードウェアと連携することによって、今まで統一的に集めて分析することは難しかったデータの収集が可能になる。その結果、消費者の「ヘルスとフィットネス」の向上を促せる。
まだ若い分野ではあるものの、腕時計型端末、アプリ、ゲーム機で動くソフトウェアなど、ここ最近で急速に競争が激しくなってきたのも事実だ。
プロダクトごとに、目的は微妙に違うし(ダイエット、健康管理、トレーニングなど)、対象としているユーザーも異なる。例えばハードコアなアスリートと普段ジムになんてまったく行かないけどお腹が気になってきた人では、ゴールへの達成方法も変わってくるからだ。ただしほとんどのプロダクトが、レベルごとのメニューやサービスを提供していて、幅広いユーザーが使えるようにはなっている。
最近はやっているサービスをいくつか紹介したい。まずは最近はやりの、腕時計型端末から。
まずはFitbit(フィットビット)。これは腕にはめるバンドのような端末とそれに連携するスマートフォンのアプリで、使い道はシンプルだ。値段が比較的安いこともあってか、わたしの周りではこれを使っている人が一番多い。サイト経由でカロリー計算したりもできるようだが、万歩計のように使っている人が多いように見られる。日々の活動量をはめているだけで自動的に記録してくれて、友達と比較してランキングを公開する。あるレベルに達すると「バッジ」がもらえたりするので、ちょっとしたゲーム感覚で運動をトラッキングできる。
Jawboneが出しているのは、「Jawbone Up」。これもフィットビットと似ていて、バンドを腕にはめ、スマートフォンのアプリを通してデータを見る。トラッキングするのは、活動量、睡眠パターン、食事のカロリーと栄養素などだ。基本的な活動量と睡眠は自動的に計測してくれるけど、それ以外は、多少の入力が必要だ。
Basis(ベイシス)は心拍数とかどれだけ汗をかいたかとか、もう少しニッチなデータまで集める腕時計型端末だ。また時間のディスプレイがあるので、実際に時計として使える。この点はNike+ FuelBandも同様で、それが故には多少ごついデザインになってしまうのと、更なる機能がついているため、上の2つと比べると70〜100ドル高い。
腕時計型端末の課題は、データの正確性とかスマートフォンとの親和性(いかに迅速にデーターがアップデートされるかとか、複数の端末を通してデータを管理する使いやすさとか)だろう。すべて100ドル以上するので、その価格の妥当性を疑問視するユーザーも多いと思われる。
そこまでの値段を払うのは嫌だけど、健康管理には興味ある人には、様々な無料のスマートフォンアプリがある。もちろん収集できるデータが限られるので、基本的な「健康管理」系アプリが多い。こちらは腕時計型端末のように運動を促すというよりも、食生活のモニタリングが主な目的で、ダイエットのためや、食生活のバランスの向上という目的で使われることが多い。一日を通して食べたものをログして、連携したデーターベースからカロリーと栄養素の計算をする。データを友達と共有して、「ソーシャル」にダイエットに励むこともできる。
この手のアプリの課題は、何といってもデータベースの充実化。例えば日本人としては、三食丼とかカレーうどんとか食べたりするわけだけど、データベースを検索しても一番近いのは照り焼きビーフ丼と天ぷらうどんだったりする。また、自分で料理した場合とレストランで食べた場合のカロリーや量の違いなども、的確には反映しづらい。
最後に紹介したいのが、「運動」に特化したアプリ。FitStarというアプリで、これはパーソナル・トレーナーに取って代わることを目指している。アメフト選手 Tony Gonzalezをフィーチャーしていて、実際のフィットネスメニューのデザインも彼が関わっているという。ジムでパーソナル・トレーナーが自分の運動能力や目的に合ったメニューを組んでくれるように、自分のデータを入力することによって、最適な運動メニューを提示してくれる。すべて自分の部屋でできるもので、特別な器具は不要。ジムで高いお金を払いたくなかったり、出張が多かったり忙しくて継続的にジムに行く時間がなかったりする人がターゲットだ。ジムの代替ということもあってか、マネタイズはかなりアグレッシブに行っている。もっとも初歩的な4週間のメニューは無料だが、それ以降は有料になり、メニュー次第で5ドルから10ドル以上かかる。
とにかくあらゆるオプションが提供されてきているのだ。サムソンの端末が販売され、アップルの端末の詳細が明らかになるにつれ、この市場は一層伸びていくだろう。
この分野の大きな魅力は、マーケティングしやすいという点にもある。買ったりインストールしただけで、健康になったり痩せた気にさせてくれる。テクノロジーはモチベーションを与えてくれるし、時にはゴールへの近道を教えてくれるけど、それでも運動や食事管理など努力なしでは何も変わらないというのは耳の痛い話。それがわかっていても、プロダクトを見ているだけで健康な気分になるわけだから、マーケターとしてはやりがいがある(?)だろうなと思う。
ただし今後ますます競争が激しくなるだろうこの分野、単に売り切るだけではなく、ユーザーが継続的に使いたいプロダクト、そして、継続的に使うことが簡単なプロダクトが、最終的には勝ち残っていくんだろう。それによってサブスクリプション的なモデル(定期購入)が確立すれば、収入の安定化にもつながる。
2013年9月11日水曜日
Yahoo!の新ロゴは、会社の一層のリフレッシュ化をはかれるか。
Marissa Mayerとヤフーがまた話題に。今回は、ヤフーのロゴ改訂の話だ。
まずはその内容以前に、これだけ話題にのぼることが多くなっただけで、ヤフーにとっては相当ポジティブな効果が現れている(特に社員の士気)、ということは注目すべき点で、Marissa Mayerの大きな(もしかしたら最大の)貢献だ。
そしてロゴの話。この1ヶ月間、ヤフーは様々なロゴを実験的にホームページ、ヤフーメール、そして他のヤフーのページで試してきた。感覚的ではなく、実験をもとに集めたデータをもとに数値的に決断をするという、Marissa Mayerのグーグル時代からのやり方で新ロゴが決まったとのこと。つまり、経営陣が好きなロゴを選んだとか、ブランドマネージメント会社が提示したものを適用した結果ではない(そもそも今回は外部の会社を使わず、ヤフー内部のデザイナーによってすべてのロゴが作られた)。実トラフィックを使った実験の結果、何人がそのロゴをクリックしたかとか、リピート率や滞在時間に影響があったかとか、また、「印象」という定量化しにくい点についても、ユーザへの調査をもとにその効果をできるだけ数値化したものと思われる。
個人的には前のロゴがすごい好きだったので、できればそのロゴを更新する形で「リフレッシュ」をはかってもらいたかったなと思ったりする。先週発表された新しいロゴについて多くのブログで指摘されたのは、「クリニーク」のような化粧品会社のイメージを彷彿させるということ。意見を聞いてみると確かに説得力がある。今回ヤフーが選んだような、平たい直線的なフォントに立体性を持たせるデザインは、高級感を醸し出してニッチな消費者にアピールしたい場合に人気のあるものらしい。実際多くの化粧品は広い消費者を抱えるが、「ニッチで選ばれた消費者」という印象を買い手に与えることがポイントだ。つまり、自分は他と違い、選ばれた「違いがわかる」消費者なんだ、という優越感を受け付ける。
一方のヤフーは、多くの人に使われたいインターネットボータル。クールでありながら親しみやすいイメージを伝えたいという意図の中、化粧品のようなロゴが選ばれてしまった。
ただ、いつでも批判はつきもの。今までのMarissa Mayerの決断:Tumblrの買収(とその金額)、在宅勤務の廃止、サービスの停止、レイアフなど、常に批判と疑問の声があがったが、振り返ると、全体的にはポジティブな効果をもたらした、もしくは大した批判にはならずに忘れられていった感がある。
ロゴはCEOで彼女自身と並んで、会社の顔だ。自分がそこまでプロジェクトに深く関わって改訂を決定したということは(各デザインやデータのレビューから決定プロセスまで深く関わったらしい)、この決定をそれだけ重く捉えているということで、その責任もしっかり自分で背負っていくという現れ。そういう姿勢は当たり前のように見えても、残念ながらどのCEOにも見られるものではない。その点は、高く評価されるべきだと思う。
ちなみに、ヤフージャパンはロゴ更新の予定はないという。ヤフージャパンはヤフーファミリーの一員というよりも、「ヤフージャパン」としての一ブランドを築きあげ、ある意味、親会社以上の成功を納めてきた。今回のロゴ改訂についても例外ではなく、親会社に依存する必要がないし、逆に独自路線を行った方がメリットが高いかもというのがヤフージャパンの立場だろう。
下の画像にあるのは、左が新しいロゴ、真ん中が今までの古いロゴ、そして右がこれからも変わらないヤフージャパンのロゴ。
2013年9月6日金曜日
ニュースで活躍するレポーターには日系人が多い?
前からローカルニュースを見ていて気になっていたことがある。日本人の名字を持つ、日系アメリカ人のレポーターが多いということだ。天気予報から道路情報、現場からの中継レポートに渡り、日系人を良く見かける。わたしが見た限り、少なくともローカルニュース局では、メインキャスターではなくサブとして活躍している人が多いようだ。
ニュースで活躍する日系人は本当に多いのか?
Wikipediaによると、ニュース・メディアで活躍する日系人として16人の名前があがっている。果たしてこの数値を多いと判断するか、少ないと判断するか。一つのベンチマークとして、中国系アメリカ人と比較してみた。
同様のWikipediaによると、中国系アメリカ人については「ニュース・メディア」というカテゴリーはなく、もっと広い「ジャーナリズム」というカテゴリーのもとに、28人の名前があがっている。トップ何人かのみをリストアップしただけという可能性もあるので一概には比べられないけど、”仮に”両リストとも共通のしきい値を適用して作成されているとする。(雑な仮定であるのは承知の上で。。。)
アメリカ全人口の統計によると、中国系アメリカ人は日系人の4倍以上いるらしい(2010年時点)。となると、ニュース業界にいる日系アメリカ人は比較的多い?という仮説は正しいことになる。
ちなみに余談だが、この統計値によると、日系アメリカ人は減少傾向、一方の中国系アメリカ人は増加傾向を示している。
また地域別のアジア系アメリカ人の比率だが、サンフランシスコはハワイに続いて第2位の比率を占め、全体の18.4%がアジア系だという。
他の情報源として、NBC Bay Areaのキャスター陣を見てみた。34人の社員がテレビに顔を出す報道チームとして名前を並べる中、3人は日本人の名字を持っている。これだけ見ると大した比率ではないが、個人的には現場レポーターも含めると実はもっといるのでは?という印象がある。アメリカ全人口に占める日系人の割合が0.4%なので、それに比較すると高いとは言えるが、サンフランシスコ/ベイエリアならではの傾向なのかもしれない。
気になるのは、その中で女性が一人もいないこと。他のアジア系アメリカ人(ベトナムや中国系)については女性が目立つことに比べると、日系アメリカ人で女性の名前があがっていないのは単なる偶然?かもしれないものの、やはり気になる。
ちなみに日系人の女性キャスターと言って、唯一思いつくのは、ナショナルテレビNBCで全国放映されたいた「Today」ショーの朝の顔を努めていたAnn Curryだ。数年前に突然鋼板させられて話題になった。彼女は日本人のハーフだが、特番として山形(だったと思う)にいる日本の親戚を訪ね、日本の文化を全米に紹介したりもしていた。あまりにも突然の降板に、「男性メインキャスターのMatt Lauerと仲が悪い」、「メインストリームのアメリカ人とはあまりにも違うバックグランドに、視聴者が親近感を覚えられなかった」などさまざまな憶測が出回った。視聴率低下の責任を取らされたのだろうけど、何故彼女だったのかはいまだに明確に説明されていない。
いずれにしても男性女性に関わらず、もっとメインキャスターとして活躍する日系人がいてもいいのにと思わずにはいられない。確率的に言えば、次に日系人メインキャスターが誕生するのは、アジア人率が高いこのベイエリアかもしれない。
(追加 − 9月25日)
今日、Fox系列のKTVUでニュースを見ていたら、6人ほどのリポーターのうち、3人は日系人!ウェブサイトを見てみたら4人の日本人の名字を持つリポーターが確認できた。
2013年9月5日木曜日
人気ショップになるとサイトから追い出される?という皮肉な矛盾をどう解決するか。Etsyの新たな挑戦。
アメリカ国外でもじょじょに名前が浸透しつつある、手作りクラフト品やヴィンテージ品を売買するEtsy(エッツィーと読む)というサイトがある。
アート、手芸品、工芸品などを世界中の幅広いユーザーに売りたいアマチュア・アーティストのためのマーケットプレースとして、2005年のサービスローンチ。今や3000万人の登録メンバーと、100万店舗を抱える巨大サイトにまで成長した。
キーワードは「ハンドメイド(手作り)」で、趣味として主婦が手作りするアクセサリーから、駆け出しのアーティストの作品まで、個人の手に寄って作られた手作り品を売買する場を提供している。一見ニッチかと思われがちだが、ユニークなギフトやアクセサリー、また、自分でコーディネートする結婚式の小物(結婚式場の装飾、引き出物からブーケやドレスまで)などを買う場として、今やメインストリームなユーザーの中でも認知度は高い。
成功したサイトやビジネスモデルにつきものなコピー版。Etsyも例外ではない。Etsyの場合は強いコミュニティーの上に成り立っているため、サイト自体のコピーは簡単ではないものの、そこで売られている商品のコピーは問題になってきている。さらに、先日の記事によると、「手作り」の定義が会社のそもそものミッション・ビジョンを揺らがしている。
人気商品を他社業者がコピーして販売するというのは、容易に予想できる課題だったが、Etsyが直面する課題はもっと奥が深い。会社の基盤であり、強いコミュニティーを支えてきた、「手作り」の概念とその定義だ。つまり、どこまで手作りだったら許容されるのか、すべてをオーナー一人の手で作らないといけないのか。
というのも、今まできちんとポリシーに乗っ取って運営してものの、注文が殺到したために生産が追いつかなくなり、外注せざるを得なくなる個人アーティストも増えているという。人気が出たが故に一人で生産できなくなって、その結果サイトから追い出されるなんて、皮肉なことだ。2011年にEtsyはポリシーの緩和をはかり、今ではデザインがオリジナルであれば、生産において多少の外注を許可している。
ただ、そんな曖昧な「手作り」という定義をつけ込んで、中国などからアクセサリーなどの商品を大量に格安で仕入れ、Etsy上で「手作り」として売っているショップも増えてきているようだ。仕入れ価格とサイト上での売値を比較すると、3000%近い利益を確保している例も少なくないという。
同じようなデザインが、中国のアリババのようなサイトで売られているケースも多く見つかっている。強いコミュニティーのメンバーによって常時モニタリングされているものの、すべてのコピーを世界中のサイトから摘出するのはほぼ不可能だ。
人気が出たがためのチャレンジに直面するEtsyだが、この問題は今後の成長とともにさらに大きくなる一方だろう。
成長に伴ってポリシーを柔軟に緩和する必要があると同時に、成長した個人ショップが「卒業」する先の別ブランド/サイトを立ち上げるのも手かもしれない。
一方で、コピー商品を世界中からなくすのは、ほぼ不可能。救いなのが、アリババのようなサイトが株式上場に備えてコピー商品の取り締まりを厳しくしてきている、という点くらい。その効力もどこまで続くのかは疑問だったりする。コピーされる側でなくてコピーする側の意識がきちんと更正されるまでは、残念ながらこの追いかけっこは当分終わらないだろう。
登録:
投稿 (Atom)