2009年4月8日水曜日

H1Bの狭き門

H1Bビザというのはアメリカで働く場合にもっとも一般的な就労ビザで、最長6年間の就労が認められる。毎年4月1日に募集が始まり、最近では毎年6万5000人ほどのビザが認められていた。この定員を超えた場合は抽選となる。NYテロ事件以来、発行されるビザの数が減ってビザの取得がだんだん難しくなっていたのだが、それに追い打ちをかけるように最近の急激な失業率の増加で、アメリカ人の働き口を奪いかねない外国人の雇用をもっと厳しく規制すべきという議論が持ち上がっている。

この就労ビザ、もとはアメリカ人の中からは見つけるのが難しいスキルを持った有能な外国人社員を採用する、というアメリカ企業・経済を支える名目のもとで始まっている。ところが現実的には明確がガイドラインがあるわけではない上に、最近はアウトソーシングを請け負う会社の利用が急激に増えている。つまり、有能な外国人を使ってアウトソーシング企業がアメリカで成長をとげれば、アメリカ企業のアウトソース化を促すことになり、結果的にアメリカ人の働き口を奪っていくことになる。失業率の増加という超短期的な影響に加えて、こういった中長期的な懸念も広がっている。

一般的にシリコンバレーの企業はハイテク系が多いこともあり、外国人労働者への依存度は極めて高い。わたしの会社を見ても、半分以上は外国出身者ではないだろうかという勢い。エンジニア系のチームでは特に、インド人と中国人が圧倒的に多い。また外国人社員が多いことで有名なマイクロソフトは、2007年にカナダに大きなオフィスを設けて、有能な外国人を雇っている。カナダだったらアメリカにも地理的に近い上に(特にマイクロソフトの本社のあるシアトルには近い)、アメリカと違って外国人が雇いやすい、というのが理由だ。

歴史的な不景気の中、不安が広がるのはもっともだと思う。でもこの手の政策、短期的な効果を期待して早まると長期的なダメージが大きいのでは。スキルを持った外国人を雇うことによってアメリカ企業が成長すれば、結果的にアメリカ景気にとってはプラスになる。アメリカが外国人労働者への門を閉じてしまえば、マイクロソフトの例のように、カナダや他国が有能な外国人をどんどん囲い込んでいくかもしれない。そして何よりも、移民の国であるアメリカのアイデンティティがだんだん崩れていってしまう。

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